社会ってメンド
「社会の仕組みが違うのは痛いよなー、多分これは世界統合による大きな問題点の一つだな。価値観も違うし常識もルールも違う。コレの統合って難しくね?」
「それをどうにかする組織作りたいから、オールさんを呼んだんですよ」
「むー、そうっぽいけど難題だなぁ。設立目途は?」
「1年」
「無茶!!!」
オールとダンがショックから回復した後、紅とオールはダンが出してくれたちゃぶ台を挟んで煎餅と緑茶を片手に話し合っていた。
「そうですか?だって冒険者ギルドってものが有んでしょ?話聞く限り人間と亜人用の何でも屋みたいなの。ならもっと範囲を広げたギルドを作るんですよ。活動内容は異種間トラブルの解決をメインにしつつの何でも屋、互いの苦手や得意を補いつつ種族間の隔たりや誤認を減らし、種族間交流と相互理解をおこなってお金を稼ぐ。具体的な組織運用とかの詳しい話は分かんないですけどシンプルなルールを二、三作ればいけるんじゃないですか?」
「例えば?」
「1、信頼し信頼される事
2、裏切らない事
3、差別をしない事
が最低ですかね?因みに俺らの中では世界ルールに縛られる知的生命体をヒトって呼ぶことにしてます。種族名なら兎も角人外とか亜人とかなんか差別用語っぽいので」
「あー」
思う所があるのか紅の言葉に納得したような声を出しつつオールの頭の中は勢い良く回る。ギルドの長をやって居るだけあって頭の回転は速く、荒くれ者が多い冒険者のトップであるオールは現実的かつ合理的な考えと、世界は何でも起こる的な今までの経験でまとめ上げて出した結論は、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・いけるかもしんない」
である。
「じゃおねがいします」
いけると言うのだからいけるのだろう。出来ない事は出来ないと言う性格っぽいので特にこれと言って口を挟むことなくさっそくお願いしてしまう。
「おう。忙しいから同士の説得は頼むわー。俺に賛同してくれそうでちと問題があって身動きできないのが居んよ。地位も実力もあるから味方に出来ればだいぶ話が速い」
「子供の俺で大丈夫すか?」
そこが一番の懸念何だよなぁ。オールさんの知り合いなら多分強いヒト達だしそうなると幻術とか効かないor見破られるだろ?なんかそこから激怒とかされたら嫌だからそのまま行く、すると見下される。ってなったら目も当てらんないんだが?
「見た目と実力が一致しないのを良く知ってる奴らだし覚悟が決まってる奴は大好きなだからだいじょーぶ。覚悟さえ有ればヒヨコだろうとよぼよぼの爺だろうがミジンコだろうが取り合ってくれるって、逆に覚悟が無ければ王様だろうが門前払いだけどな!まあ紅は覚悟決まり切ってるから話聞いてくれるだろー、そのあとは知んないけど」
「と言うと?」
「戦闘狂が多いからお前の実力なら勝ったら聞いてやるってなりそうだってことだ!俺の昔馴染みだから当然ちゃ当然だな!いやー昔は俺もブイブイ言わせてた口だからさぁ、気性荒いのばっかなんだよなぁ。情に厚くて面倒見が良くて裏切らなくて差別しない良い奴らだけどな!」
「おぉ、ピッタリっすね」
ちょっと不穏な言葉は聞こえたが裏切らなくて差別が無いってところが非常にポイント高いぞ!?
「しかも全員異種族恋愛で追放ギリギリなのばっかな!!」
「完全に同士じゃん!!どんなヒト達ですか?」
「えーと、エルフのお姫様と次期族長のオークの健全ラブ、闇龍と聖龍つう天敵種同士の禁断の恋しかもどっちも神様級、教会の神人っつうトップと悪魔の女王の純愛、敵国同士の王子と王女による秘めたる恋!」
同士だけどなんかやべぇ立場の人ばっかじゃね?最初ぐらいじゃん意外性だけど何とかなりそうなカップル。
「どれも難易度高い恋愛してるな。過去形すか?」
「現在進行形だな!どうにかこうにか時間を稼ぎつつ周囲の意識改革とかして成就させようとしてる最中だ。因みに知ってるなかで片が付いてるのは勇者と魔王の電撃結婚だな!今新婚なんだようらやましいわ!」
勇者と魔王も字面が酷いな、物語上天敵じゃん。良く結婚まで行けたな?勇者とか人間の国で選出される国にとって都合のいい役職のイメージなんだが?それが倒されるべき敵と示された魔王と結婚てどんな過程を踏んだんだ?
「それ、国とか荒れませんでした?」
「荒れてるよ?裏切り者の勇者!!って指名手配されてるし。それを理由に魔王国に攻めようとする国があるからそれを押しとどめるのにとある二大国家が秘密裏に手を取り合って冷戦状態にしてるんだし、世界有数の二大国家で仲が悪いって事に成ってる国が互いに同盟を獲得しつつ相手国を滅ぼす算段を捏ね繰り回してるってことにしてんの。人間同士で開戦一歩手前にしとけば魔王国に攻める余裕ないしな、んでその時の密会で恋に落ちたと」
「お、おう」
なんか、色々こんがらがって来たんだが?ちょっと整理しよう。
えーとまずはエルフのお姫様と次期族長のオークの健全ラブ、なんかファンタジーでは完全に天敵と言うか、R-18案件になるやつじゃないか?それの健全ラブって成り立つのかすごいな。異種間恋愛の広告塔になりそうだから是非そのまま成就して欲しい。手が必要なら幾らでも貸せる。
次、闇龍と聖龍は種族名?黒竜の主と白竜の主の事なのか、竜の中でも上位種の黒と白の竜は天敵で争いが絶えなかったのが今の代になってから睨み合いと小競り合いに収まっていると、まあ主同士が争いを避けるならそうなるな。どっちも神様級って事は信者とかいんの?・・・いるんだ。もしかしてそれって?まじかー。
聖龍を祭ってる白教会のトップが神人なのね。女王様は?闇龍が住む山の寺院にいる巫女って扱いなのね。つまり聖龍は人間に神として信仰されて闇龍は魔族の自然崇拝の象徴扱いか、祈る方向性が違い過ぎるわー。んでもってそこのご神体たちはお互いが好きで?トップもお互いが好きと、それ微妙なバランスで立ってるんじゃね?・・・立ってるのかー。うっかりすると足元掬われかねないんだな?権力争いとかもあって複雑ぅって事か、でも影響力強そうだしぜひオープンに出来る仲になってほしい。
で?二大国家の?王子と王女?え?どっちも王位継承権持ちなの?しかも第一?どっちも次期国王ってことか。魔王国に人間が攻め込めない様に二大国家が互い睨み合ってる構図を作るために対立国同士で同盟を造って力を均等にして冷戦している。ギリギリだなぁいつか決壊するやつだ。んでその時の秘密裏同盟で出会った時期王様と女王様が互いに引かれちゃったかぁ。
・・・・・・・・・今世界ルール的に強制的に冷戦状態だよな?この混乱に乗じていろいろ片した方が良いやつ?
「そうとも言うな!」
「うわぁ忙しそう。体が何個も欲しい。てかどれも下手に手を出し辛い。寧ろ中心人物たちを互いに連絡取り合えるようにした方がうまく回るんじゃね?人間の拠り所の白教会のトップが味方に付けば人間同士の冷戦とか片付くものがありそうだし、ソレに便乗する教会のゴミ掃除もしやすそうだし、人間の方が片付けば人神と女王様が間に入って魔王国と交渉できそうだし、最悪聖龍と闇龍にお告げでもして貰えば良いんじゃない?」
「その通りなんだがその間を飛び回れる人員が居ないんだよ」
「んで俺がそうなれと」
「おう」
「・・・・・・くっこれも未来の俺の為!」
「交渉成立だな!」
晴れ晴れとした笑顔のオールと心底面倒臭そうな紅による二度目の握手により二人の交渉は成立した。
「一応魔法契約書とか作っておくか?」
「ごめん魔法契約書って何?俺らの常識に魔法は介入しないから分かんないんだけど」
「あ、そっか。んーと契約書に違反した場合にそこに書かれた罰が強制的に発動する契約書だな。罰は金銭を払うものから腕や首が飛ぶもの、寿命が縮むもの、呪いを受けるものまぁ様々だ。互いが納得して同意すれば何でも乗せられるな」
合意ののち、魔法的な拘束力を発揮する文字通りの契約って奴だな。
「うわ、怖い。隅々まで読んでおかないといけないヤツ。聞いてなかった読んでなかったは通じないって事だ」
「当然だな。でも普通は互いにじっくり話し合って理解してから契約するから間違いはないはずだ。ある意味一番信頼の置ける契約って以外に意味はない。んだけど最近これを悪用するのがたまに居るから怖い」
「詐欺とか?」
「詐欺とか」
「「・・・・」」
どの世界でも犯罪は逞しいらしい。そういうのも対策必要だな、どっかで政治家とか弁護士とか捕まえらんないかな?
いやぁ社会って面倒臭い。
「まあ今はいいや。オールさんとならそんな心配ないだろうから魔法契約しても良いけど、する?」
「うーん。俺も紅は信じられるししなくていいや、なんせ目指す場所が同じだからな」
「ああ、その通りだ」
互いに目を合わせグッと力強く本日三度目の熱い握手を交わし、
「「目指せ完全自由恋愛結婚!!!」」
息ピッタリに言い切った二人の背後はメラメラと燃え盛るようであった。




