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似たもの親子

 その後、ケロには元の大きさに戻ってもらい再び朱と藍を背に乗せて移動し続ける事数分、特に大きな問題もなく四人と一匹は無事にダンジョンの出口まで辿り着いた。

 子供が堂々とダンジョンから出て行くのは外に居る見張りに見咎められるし、ケロに関しては無用な争いの種になるのでカレンによって四人と一匹の姿を隠し、気配を覆い隠す結界を周囲に張り巡らせてではあるが無事にダンジョンを脱出したのだった。


 後日、ダンジョンの管理者であり、運営者であるダンジョンマスターに会う機会があり、その時に今日の事を聞いたらどうにか俺らを追い出そうと徐々に出現モンスターを強くしていって諦めさせようと思ったのに瞬殺されるから実は見た目を裏切る年齢で、ダンジョンの天敵勇者じゃないかって思ってたらしい。


 実際には見た目通りの人間のお子様だったと知って泣きたくなった。寧ろ泣いたって言われたな、すまんなダンジョンマスター。


 閑話休題


 見張りの目が届かない所まで来たところでカレンは子供たちと別れるつもりだったのだが紅が子供とは否、寧ろ人間とは思えない握力でカレンのベールを髪ごと握りしめているせいで離れられず結局そのまま三人が両親と避難してきた避難所まで付いて行くことになった。


「ただいま!」

「ま!」

「ただいま」

「こ、こんばんは?」

「あん!」


 抜け出したのを忘れたかのように元気よく、しかしうるさくない様に小声で帰宅の挨拶をした三人を出迎えたのは二人の男女だ。


「おかえりなさい。こんばんは」

「おかえり、いらっしゃい」

「犬?拾うなら猫拾ってくればいいのに」

「世話は自分たちでしろよ」

「そんなこと言って、構い過ぎて嫌われるのはお父さんでしょ」

「そんなこと・・・ある」

((((あるんだ))))


 両親はどこに行ってきたんだとも何を拾ってきたんだとも言わずに藍の腕の中で鳴いた子犬(ケロべロス)をチラリと一瞥するだけに留め、父さんは我関せずの態度を取ろうとして失敗し、母さんは寧ろ猫でないことを残念がられた。そんなに猫好きなのかな?

 あ、そだケロがケロべロスだって言ってない。


「父さん母さん」

「「ん?」」

「この犬、ケロべロスで本当は大人が乗れるほど大きい。今はちっさく成ってもらってる」

「へー」

「乗れるの?私も乗りたいわぁ」

「大人しいから大丈夫だぞ!俺と藍を乗せてもビクともしないんだ」

「ケロちゃん力持ち」

「ケロちゃんって言うの?」

「あん!」

「いい子ね。私も乗せてくれる?」

「あん!」


 羨ましそうに呟いた母さんに兄ちゃんが大丈夫だと伝え姉ちゃんも後押しした。その言葉を受けて母さんはケロに確認を取るとケロ本人も小さく元気に鳴いて了承したので母さんは落ち着いたらケロに乗る事が確定した。

 ケロの鳴き声に嬉しそうに答えて撫でる母さんは結構ご満悦だ。


「あとケロはめっちゃモフモフだ」

「ふもふも?」

「うん、モフモフでふかふか」

「・・・」

「大丈夫だぞ父さん!ケロ公モフらせてくれる。俺らもモフらせてもらったからな!な、ケロ公!」

「あん!」

「期待してる」

「!あんあん!」


 モフモフっという言葉に反応した父さんにも三人で畳みかける様にそのふわモフ具合を力説すると期待しているとの一言、ケロのダメ押しも効いていると見た。


「・・・それだけで説得がすむってどんなご両親なの?」

「ん?」

「何でもない」


 なにかボソリと呟かれた気がしてカレンを見るが少し疲れた様な様子で何でもないと手を振られた。なんだろ、子供三人の相手は疲れたかな?


「お前たち、風呂入れないからタオルで適当に体拭いて来い」

「「「はーい」」」


 一通りケロと両親の交流が済んだあたりで父さんから声がかかる。そう言えば結構歩いたから汗かいたしこのままは寝れないな。

 タオルを持って水道に行こうと誘う兄ちゃんと姉ちゃんにまだ話す事があるっと俺が目を向けると、察した二人は非常にいい笑顔でサムズアップして先に行ってるっと返して先に行ってくれた。うむ、たいへん頼もしい兄妹である。


「えっとじゃあ私はこれで」

「なんで?」

「え?」

「カレンは俺のお嫁さん(予定)なんだからここに居ればいいじゃん」

「え、いや」


 そんな俺たちのやり取りを知らずにカレンはそそくさとその場を後にしようとする。が、逃してなるものか!ぐわし!!!っとカレンの裾を掴んで引き留め声を掛ける。この時ちゃんと両親に聞こえるようにお嫁さん(確定)と言えばカレンは慌てたように口を開くが、


「あら、そうなの。よかったわ娘が増えて、もう一人欲しかったのよね女の子」

「ふむ・・・振袖が必要か?」

「え」

「あら?必要なのは白無垢じゃない?」

「成人しているように見えないし、それに振袖が見たいじゃないか。藍は多分着ないし」

「それもそうね」

「え゛」


 そのまま話が振袖やら白無垢に飛んで行って口を挟めなくなっている。諦めるがいいカレンよ。俺達の両親は俺達の両親だからな!!


 姉ちゃんが着物に興味なさそうで振袖は無理かなあって残念がってたの知ってるからな俺!カレンは和装だから振袖着てくれそうだし白無垢もイケる気がする!!そしてその思考回路は両親も同じようなのでとんとん拍子に話が進む。

 この間カレンが口を挟む暇はなく、裾を力いっぱい握りしめる俺の手を離すことも出来ずにオロオロとしっぱなしだったのだ。可愛かった。


「では、カレンちゃんはうちの子という事で」

「異論なし」

「いろんなし!」

「なし!」

「異議なし」

「あれ?私の意見がない?」


 いつの間にか戻ってきた兄妹までも加わっての全会一致でカレンは如月家の一員となる事が確定した。

 本人の意志はあまり問題ではない。なんか押せば落ちそうだから押して押して押して押しまくって落とすので何も問題ない。最初に家族の承認が得られたし全面的に協力体制が取れたのであとは家族一丸となって押すだけである。何も問題はない。


「カレンは俺が嫌い?」

「嫌いではないけど、そもそも私人間じゃないよ?」

「「「「「知ってるよ?」」」」」

「・・・・・・・うん、うんそうだね。君たちはそういう家族だ」

「「「「「?」」」」」

「えーと、私は人間じゃないから今の法律じゃ結婚も養子縁組も無理だよ?」

「「「「「!?」」」」」

「だって異種間同士の法律無いもん。それに異種族同士の摩擦も差別も数多いし更には同族でも世界線が違うだけあって価値観が違う。多分時代も世界摂理も歴史も文化も様々なモノが違うでしょう?そんな多様な価値観をすり合わせるのには10年や20年では効かないよ?」

「「「「「!!!???」」」」」


 た、確かに!今までの世界でも肌の色が違うとか言うくだらない理由で差別が有るんだから色んな世界が混ざった今はさらにひどい事になってるかもだ!

 唯一のルールによって誰かを傷つける事が出来なくなった今現在、世界中が停戦状態だ。故に血で血を洗う事にはなっていないが実は世界中が緊張状態なのだ。


「うん、だから難しいんじゃないかな?」


 そう言ってカレンはにっこりと口元に笑みを刻んだ。

 ふむ、確かにこのままではカレンと結婚できない。別に内縁関係でも良いと言えば良いのかもしれないが、名実ともに物にしたいし俺の嫁さんめっちゃ可愛い!っと嫁自慢したいのでやっぱり法律、と言うか意識ごと変えないとダメだな。その為には


「よし、同士集めからしよう」

「動詞?」

「同士、同じ志の人の事。法律は後回しにして異種間恋愛及び異種間交流に賛成してくれる人を探す」

「探して?」

「色んな立場の人とパイプを作ってゆくゆくは法律改正、でも今は難しいから意識改革から始める」

「意識改革?」

「そう」


 つまりケロは怖くないし、カレンはいい人って認識が普通になる様にしたい。要はカレン達人間じゃない人達を隣人として受け入れてもらい。来るべき法律改正の時の下準備だ。

 そうだカレン達の様な人達も含めて全部まとめてヒトと呼ぶようにしようか、人間とか人外とかなんか差別用語みたいだし、人間も含めて意思疎通可能な者達をヒトと呼ぶ様にして、他種族という意味なら隣人とかそんな言葉にしよう。

 隣人お隣さん持ちつ持たれつの仲、時には愛し合っても良いんじゃない?

 そうと決まれば人脈作りと他種族同士の交流を深めたり或いは間に入って橋渡をするような組織が欲しいな。色んな種族が当たり前みたいに協力して和気藹々と出来て何処にも属さないような組織、まあそんなのないから。


「作るかぁ」

「え、組織作るの?ていうか意識改革とか法律改正とかするの?高々ひとりの為に?」

「勿論、俺の望みの為だしね!手伝ってね?」

「ひぇぇぇぇ」


 カレンと一緒になるためなら世界の一つや二つ変えなきゃな!逃がさないから覚悟しろよ?何が何でも名実ともに手に入れる。目標10、いや5年で法律改正までこぎつけてくれるわ!


 メラメラと闘志を燃やす紅にドン引きながらもカレンは逃げられない。なんせ裾を握りしめている力は強く、なにか無意識に力を使っているのかまっっっったく動かない。空中に縫い付けられたか如くピクリともしない。もしかしたら空間に作用するタイプの術かもしれない。

 多分今で言う空間魔法の類であったと思われる。如月紅当時5歳、恐るべき才能であった。


「誰から話しかけるの?」

「ダンジョン」

「ダンジョン?何でだ?」

「あんな面白い仕組みのモノが自然発生な訳あるか!絶対に誰か管理してるはず!」


 そこから何処か関係のある人物とか組織とかの知識を仕入れよう。その為にも明日はダンジョン制覇だ!!

 そうと決まれば今夜は早めに寝て明日から対策練って再トライ!!


「カレンも手伝ってね?」

「うー、放っておいても子供だけで突っ込みそうだから付いて行くけど帰りしか協力しないよ?」

「十分!!」


 行きがけのトラップも謎解きもどうとでもするしちょっと色々試したい事もあるからな、帰りの保証があるだけで有り難い。


 で、今現在の危機は会話内容から父さんに俺たちがダンジョンであった白い塔に行った事がバレたことだな。どうしよう。


 何で黙ってたって、だっていくら俺らの父親だから気付いたら止められると思ったから、え?『言ってくれれば、言ってくれれば一緒に行ったのに!!ズルい!!!』って言われたてもなぁ。母さんはニコニコだから知ってたみたいだな。

 落ち着いたら一緒に行こうな、取り敢えず置いて行ってごめん。


 ん?なんでカロンさんもドスさんもそんな呆れ顔なんだ?俺の親が図太い?だって俺の親だぞ?そしてカレンを強引に引き留めて娘扱いする人らだぞ?図太くて当然だろ。

 なんかその納得顔は癇に障るな焼いて良い?ダメ、あっそ。

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