そうび
そんなこんなでカレンと行動を共にしているエーデルワイドは件の学園、ソウビ学園まで来ているのである。
ソウビ学園は⏌の形をした白と金を基調とした校舎と⎾の形をした黒と銀を基調とした校舎が向かい合うように建ち、その中心に黒と金を基調とした〇型の建物が其々外廊下で繋がっている建物、要するに「―〇―」みたいな形なのである。そして今現在二人が居るのは中心の丸い建物だ。
「随分と広いのう」
「まあそうね。ここは吸血鬼のバラ派閥が作った学園で吸血鬼は勿論、夜間活動型のヒトが通いやすい仕様よ。勿論昼間も快適な学園生活が送れるわ」
「ほう、ここもバラの派閥が作ったのか」
確かにいわれてみればレリーフや窓枠など所々にバラの意匠がある。それらはさりげなくそこにあるので意識しなければ分からないが、意識するとあからさまに多い。相当気合を入れて作られたのだろう。
「アリスを含めバラ派閥の吸血鬼は大体ここ出身ね。夜の部と昼の部では先生が異なったりするけど夜間でも昼間と同じ水準の授業を同じ時間受けられるのがこの学園の最大の特徴ね」
「む?夜と昼で違う事があるのか?」
「ええ、夜と昼とでは夜の方が軽視されがちなの。夜型の先生が不足しがちだというのもあるけど一番の問題は時間配分よ」
「時間配分?」
「そうよ。大体の学校は朝の9時から休憩時間も入れて夕方16時半頃までの7時間以上8時間未満といったところなのよ」
勿論学校や個人によって前後するし、部活動やクラブといった活動も行われるので必ずしもそうではないのだが大体はこんなところだ。
さて、ここで夜の部の話をしよう。夜型の教師はけして居ない訳ではないが多くはない。また夜間学校は日が沈んでから昼間と同じ場所で開かれるので朝の部が始まるまでに現状復帰をしなければならない。授業をして、教室の清掃をする。
言うのは簡単だが昼間と同じ授業量を行ってからでは現状復帰が間に合わないことが多々ある。
なんせ夜に生きるヒトが通うのだ。そこに通うのは吸血鬼、人狼、夢魔、悪魔、死者等々当然それは人間ではないものばかりだ。ごく稀に昼夜逆転した人間もいたりするが、夜に平然と授業を受けるのは変人ばかりなのでは普通の人間じゃない。
そんな変人と学校に通うような思春期のヒトが集まれば当たり前の様に問題が山積みになる。その問題を解決するには人手も時間も足りないのは目に見えている。つまり、時間内の現状復帰も困難となるのだ。ようするに人手と時間不足なのだ。
そこでとある人物は考えた。同じ場所を使うのが不便なら違う場所を使えばいいじゃない!!っと。それに賛同した金持ちの夜組たちが出資して昼夜平等のこの薔薇学園が出来たのだ。
・・・知ってるか?薔薇という漢字は『ソウビ』と読めるだ。おかげで耳で聞けばソウビだが目で見ればバラとよばれる学園の出来上がりである。
教員免許を取ったはいいが夜型の為ほとんど使えない!!っといったヒト達と一部の昼夜逆転の免許持ちのヒトが教員となり、黒と銀の夜校舎では白と金の昼校舎と同じカリキュラムが行われている。
無論、個人の理解度により学年と年齢が一致しないことはあるが基本的に同じ日に同じ内容の授業が行われているので、昼の部のヒトが夜の部に、夜の部のヒトが昼の部に出ても構わないのだ。
小学生時代から互いの間に嫌悪感を持つ事が無いように教育されているので、昼夜の違いは完全に生活時間の違いという認知なため昼夜での明確な線引きはない。
なので寮も白い昼用と黒い夜用で別れているがそれは、互いに気兼ねなく使える様に配慮されているだけなので互いの寮を普通に行き来できる。
昼と夜とで交流を取れるように年に数度、舞踏会や武道会などの交流イベントが行われることもあって互いの間に変な緊張感もない。
むしろ偶にラブロマンスとか生まれるので結構楽しい事になっていたりする。
「ふーむ、なかなか面白い学園じゃのう」
「でしょ?制服は術的にもデザイン的にも魔改造OKだから好きにしていいわよ。ただし校章だけはつけておくこと」
「お?校章が見えればよいのか?」
「ええ、ワッペンでも刺繍でもペイントでも校章が入っている事と元が制服である事、要するに元が制服ならバラそうが布を足そうが減らそうが良いそうよ」
極端な話、制服を校章が入ったビキニに改造してもいいのだ。実際サキュバスなんかはどれだけ布を少なく出来るかの限界に挑戦し、キョンシーなんかはどれだけ布を多く重ねられるかに挑戦し、ヒトによってはドレスっぽく出来るかに挑戦したりする。
勿論そのまま着ても普通にかわいいデザインなので術的魔改造を施しただけの物を着ている者も居る。
「ふむふむ、それは改造のしがいが有るのう」
「改造する前に構想を教師に一度見せて許可を貰ってからの方がスムーズかもね」
「うむ、心得た」
和気あいあいと話しながら、時にエーデルワイドは悪寒に見舞われながら黒と金の建物内を歩く、歩く、歩く、あるk
「って長いわ!!!」
「どこかでループしてるのかしら?」
「むー。確かにあまりに景色が変わらぬ。建物内外に限らず風景が変わらぬのう」
外の見事なバラの生け垣がいつまでも続くその単調な景色故に気付くのが遅れた。否、単調に作る事により気付き難くするために特徴のない景色にしているのだろう。実際効果はてきめんであった。
「多分侵入者除けのトラップかな?」
「なぬ?我らは侵入者ではないぞ?しかと推薦状もある正式な客の筈じゃ」
「うん、副リーダー直筆の推薦状だし連絡も入ってる。さらに言えば万屋として来たことあるの私もいるから“誤作動は”あり得ない」
やけにはっきりとそして一部を強い口調で言い切るカレンにエーデルワイドはいや~な予感をバリバリ感じながら聞き返す。
「誤作動は?」
「うん、誤作動は」
「・・・つまりは誤作動ではないと?」
「うん、要するにね」
「要するに?」
「副リーダー推薦のアンさんを試したいんじゃないかな?」
「・・・」
校舎内に入って直ぐにフードを外していたためエーデルワイドがその美麗な顔を嫌そうにしかめるのが良く分かる。
あまり大々的に力を使うのは好きではないのかもしれない。
「多分腕試しで相手の予想を大いに上回れれば学園生活で融通が利きやすくなると思うよ?」
「そうなのか?」
「うん、教師の予想以上って事はそれだけの実力だし、副リーダーの推薦なら尚更。今後の学園生活を彩りたかったら突破するのもありなんじゃない?」
「むー。根拠は?」
「紅の通ってる学園では特待生決めるときにどれだけ早くトラップだらけの校舎を抜けて職員室に来れるかって項目があったなあ。因みに特待生は学費免除だからだいぶ学費が浮いたよ」
「ほう。学費か、挑戦するのもありよな!」
「がんば!」
「うむ!頑張るぞい!」
学費の免除と聞いてエーデルワイドの目は輝く、力の行使を好ましく思っていないエーデルワイドでも背に腹は代えられない。実際に免除されるかは別として能力の一端を見せればある程度の交渉材料にはなるだろう。
エーデルワイドは学費免除(未定)を目指すべく、その小さな幼女のごとき身に秘められた膨大な力を開放するために目を閉じ、精神統一に入るのだった。




