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普通に生まれて当たり前に育ち、極々平凡に日常を生きる。  作者: 梓川 由紀
面倒な予感・・・
54/92

吸血鬼?

「一般人とは?」

「どうしました?アンドロダスさん」

「いや、今唐突にそう言いたくなっただけゆえ気にするな」

「そう?」


 うむ、本当にそう言いたくなったのだ。というか言わねばならん気がしたのだ。何故じゃろうなお前のどこが一般じゃ!っと突っ込みたくなってしもうて、突っ込み疲れじゃろうか?

 思えばバラ箱を開けられてから色々あって疲れたんじゃろうのう。出て来た時はまだ日暮れ前じゃったのに今は日もとっぷり暮れもうて、


「真夜中ではないか!!」

「「そうだよ?」」

「夜更かしなど美容の大敵ぞ!早々に眠らねばならん」

「「・・・」」

「しかし寝床の確保が出来ておらぬ」

「「・・・」」

「すまんが何処か日中日の当たらぬ寝床を紹介してもらえんだろうか、日が当たらねばどれほど狭くとも構わぬゆえ」


 何と言うか、なんか吸血鬼にあるまじき言葉が聞こえるんだが?

 いやうん。今日日吸血鬼たちは普通に日の下を闊歩する。それは世界の統一者がそれが可能なように世界の理を作り変えたからだ。しかし古代者はそんな事知らないので普通に夜行性の筈なんだが?


「・・・あの」

「ぬ?なんじゃ」

「アンさん夜は寝るんですか?」

「あ、アンさん?!それ我ぞ?!不敬じゃ不敬!しかし恩人ゆえ許す!」

「サンキュー、そんでドスさん夜に寝るのか?」

「ドスさん!?なぜそんな変な所から名前を取るんじゃ?!」

「「良いから質問の答え!!」」


 まったく、突っ込み魂は見事なものではあるが質問にも答えずに突っ込み続けるのはいかがなものか。言葉のキャッチボールはちゃんとするべきだ。


「なぜかお前が言うなっと言いたくなるのは何故じゃ?まあいい。我は夜に寝ておる。それというのも昔、人の子を育てたことが有ってのう。その子の為に活動時間をずらしたのじゃ。我は始祖の吸血鬼故に日の光ぐらいでは死なんしのう。死ぬほど眩しいし怠いんじゃが」

「「へー」」

「自分たちから聞いておいて興味なさげじゃな!?」


 いや、だって他にどう言えと?

 あれか?親バカめ!!っとでも言えば良いのか?てかエーデルワイドは始祖のなのかそうか、確かにそんなヒトが作って所属してい派閥に喧嘩は売れないな、うっかり滅びる。


 あ、エーデルワイドが封印されるきっかけは他派閥と他種族と人間に攻め込まれてプッツンしたて暴れたのが原因だっけ?

 多分封印の切欠になった喧嘩を売ってきたのは始祖の恐ろしさ等を知らない馬鹿だったんじゃないか?以前ルピナス所属の吸血鬼に会った時にバラの創設者に当時の若いバカが喧嘩売って古参諸共滅びかけたって記録が残ってるらしいしとは聞いたけど、まさかそれが事実だとはねえ。

 その話を聞いた時はそんな馬鹿要るとか思えない。って切り捨てたけど世の中救いようもないバカって言うのは存在してる。そういった類だったんだろ。バカめ!!やつかね?


「まあいいや、今夜の寝床だな、てかしばらく寝泊まりできるところが欲しいんじゃないか?学校に通ってもらう訳だし」

「そうね。長期滞在できるホテル乃至民宿的な場所って何処かあったかしら?」

「のう」

「ん?なあに?」

「そのなんだ。そういうのはアレじゃろ?結構するんじゃろ?先立つ者の無い我にはちときついんじゃが、住み込み的なのないじゃろうか?我それなりに器用じゃから大概の事は出来るぞい」

「ふむ」


 器用、器用ねえ。どの程度を言っているのかわ知らないが自己申告があるのだから不器用ではないって感じか?吸血鬼の古代者だし貴族的な所がある筈だから音楽とか刺繍とかは出来るのでは?

 あと子供育てたことが有るのなら子育ても可?派閥を作り国を治めていたのなら組織運営も出来そう。

 あれ?これ結構優良株?


「因みにアンさんは何が出来るの?」

「む?うむ、掃除、洗濯、料理、子守、染色、服制作、刺繍、レース編み、毛糸編み、ダンス、ピアノ、ヴァイオリン、二胡、琵琶、テーブルマナー、礼儀作法、帝王学、経済学、薬学、医学、武術、馬術etc.」

「「多!?」」

「始祖じゃからな!」


 多分それ関係ない。いや、有るか?始祖って吸血鬼にとって要するに王族とか神様みたいなものだしそれ相応振るまいとかは必要なんだろうなあ。うわ大変そう。

 前半部分においては拾った子供の為に覚えたんだろうな、服手作りしたのか?親バカだ。てか二胡とか琵琶とかアジア系の楽器が有るのはなんでだ?


「あの時代は色々と混ざっておったからのう。多分他所の世界や時代から来た転生者やら異邦人が持ち込んだ技術により出来たのであろう」

「別の世界から?」

「持ち込まれた?」

「うむ。あり得ぬ話ではなかろう。現に今この世界もあらゆる可能性を統合されたて出来たのであろう」

「「へー」」

「随分興味が無さげじゃのう」


 気のない返事を返す紅とカレンにエーデルワイドは呆れた目を向ける。

 失敬な、興味が無いとわ言わないさ。謎に迫れるかもって場所や事件になら首突っ込むし、余力は惜しまないよ?だけどエーデルワイドの話はそうじゃなくて、机の前で頭悩ませて考える、いわゆる机上の空論でしょ?色々な可能性を示唆してあらゆる事柄を想定する。

 そういうタイプじゃないし、答えの無い事をいつまでも考えてるのは、


「メンドイから」

「良いかなって」

「おんしら・・・脳筋タイプか」

「「えへへ」」

「はぁー」


 思いっきり呆れた様な疲れた様なため息を頂いてしまった。だってしょうがないじゃんそう言うの面倒臭いし、考えても仕方なかったりするし、真実が知りたかったら統一者を探し出して直接聞けってヤツだよ。


「それが出来たら誰も苦労せんだろう。考古学者たちが泣くぞ?」

「「すでに泣いてる」」

「あー・・・ところでおんしら良い寝床を知らぬか?」


 ちょっと前の雑談の時の話を思い出したのかエーデルワイドは話を折り曲げて元の位置に戻した。そう言えば寝たいから良い場所はないかっという話だった。

 ついでに働き口の紹介もか、ベストなのは住み込みで働ける場所だな、吸血鬼だから夜間学校になるだろうしそうなると昼間に働く?あれ、エーデルワイドは昼型吸血鬼だから昼に学校、夜に働くのか?


「なあドスさん。夜間学校と昼間学校どっち希望?」

「む、日光を浴びないなら昼間なのだがそうもいくまい。そうなると夜間学校かのう」

「そうなるとアンさんは昼間にお仕事はすることになるわね。睡眠時間足りる?」

「我は始祖ゆえ数日間眠らずとも構わんが、学業の習得には年単位であろう?身が持たなくなるな」

「んー、寮のある学校に入って刺繍とか服とか作って売る?売り物になるぐらいの腕ならだけど」


 親バカ気味のエーデルワイドなら子供の為に売り物になるぐらいの代物を作れてもおかしくないし、勤めでないのなら自分で仕事の時間も量も調整できるから悪くない案だと思うんだけどなあ。売り物になるならだけど。


「制作の腕前?今着とる物は自作じゃが?」

「「!?」」


 エーデルワイドの言葉を受けた二人は目を見開いて彼女が身に着けている服をまじまじと見る。

 今現在、エーデルワイドが着ているのは一言で言えば深紅のドレスだ。

 しかし一言では言い表すことが難しい程にそれは素晴らしいドレスでもある。

 光を反射して輝く上質な絹は落ち着きのある深紅に染めあがっており、同色のしかし微妙に色合いの違うレースと一緒に幾重にも重ね合わせ、ひだを作って複雑な魅力を醸し出している。所々に施された金糸のバラの刺繍は品が良く、胸元の大ぶりなバラのコサージュと揃いで作られたバラの髪飾りとの相性も相まって大人っぽい、しかし子供特有の愛らしさも兼ね備えたたいへん素晴らしい逸品だ。まさにエーデルワイドの為に誂えた特注品と言っても過言ではないだろう。

 幾人もの職人が手間暇かけて作り上げたドレスに見えるそれがエーデルワイドの手作りとな?


「アンさん器用なのね」

「じゃろ?じゃろ?我は器用なんじゃ」

「普通に店持てそうだな」

「当ったり前じゃ、娘を着飾るのに生半可な服は作らんのじゃ!」

「あ、刺繍が所々呪いになってる。加護?」

「うむ、経年劣化を抑え汚れにくくし皺を防ぐ、服には入れるべきじゃろ」

「おお、これはうまくすれば売れるぞ、製作日数はどんぐらいだ?」

「ここまでの一品を作るのには数か月かかる。なんせ布を選び納得のいく色に染めあがるまで研究し、デザインも一から考えたからのう。既存の布を使えば二月たらずじゃ、もう少し簡略かしたものなら一月、もっと単純にすれば一週間未満じゃな」

「作った事ないから分からんがオーダーメイド品にしては早いぐらいか?」


 確かフルオーダーメイドのウエディングドレスが半年かかる筈だからそれを考えると早い気がする。

 これだけの物を制作出来てしかも制作期間は遅くない。うん、結構いい商売になるな。あとは作ったものをどこで売るかだがこれに関しは万屋(うち)で売ればいいだろ。一階食堂、二階ブティックだからな、ここ。ほんと何屋か分からなくなる。まさに万屋(なんでもや)だよな。

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