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普通に生まれて当たり前に育ち、極々平凡に日常を生きる。  作者: 梓川 由紀
面倒な予感・・・
52/92

雑談

「話が進まない」

「脱線ばかりね」

「誰のせいじゃ誰の!」

「「え?王様の突込みのせいじゃない?」」

「おんしらの非常識ゆえだ!!」


 うがー!!っと吠える様に突っ込んでくるのは吸血鬼の王様だ。リーダー副リーダーの話からあまり進まないため自己紹介すら行えていない。


「ああ、そうだ自己紹介すらしてないじゃん」

「あら確かに、リーダーの出没のせいで自己紹介する前に雑談に入ってたわね」

「雑談だったか?まあいい。確かに名前も知らなんだに話し続けるのも格好がつかん。おんしら名乗れ」


 腕を組んで顎で指すように促してくる。ふむ。


「人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗るもんじゃないか?」

「え」


 偉そうだからちょっと揶揄おう。


「普通はそうね。というかそもそも名乗りもしないのに名前を聞き出すのって失礼にならない?名乗れない特殊な立場なら兎も角」

「我、結構特殊な立場なんじゃが?」


 知ってる。けど今はスルー。


「名前を名乗れなくても呼び名ぐらいは教えるな、魔女がそんな感じだろ」

「緑の魔女のみどりさんとか薬師の魔女の薬師さんとかね」

「そもそも名乗ったら不味いのか?」

「呪いの名前とか?」

「それは無い」


 それは良かった。そんな名前がメンバーに居るんでちょっと心配したけど杞憂ならおk、安全に揶揄えるな。


「呪い・・・呼ばれると爆発するとか?」

「爆発されると困るな、もうちょい結界増やすか」

「いや、あの」

「そうね。爆発規模は・・・王様の体内魔力値的に国一つ分?」

「日本がオワタだな」

「だから」

「大丈夫大丈夫、結界内を圧縮して爆発規模を抑えて爆発した瞬間に亜空間ボックスに放り込めば空間の破裂で済むわよ」

「亜空間ボックスが一つ駄目になるな」

「亜空間てなんだ!?」


 名前のまんま亜空間に作った箱だな、異空間魔法の一種でアイテムボックス的なアレ。


「そしたらまた作ればいいのよ。ちょっと空間に歪みを作って世界から隔離して中に魔力を注ぎこんで拡張しつつ安定させれば良いんだし」

「すんげえ禁術級のことしてる!?てか爆発なんぞせんわ!!!」

「「なんだしないの?」」

「してたまるか!!!!」


 うむ、鋭い突込みだ。突っ込みのヒトとか呼んだら怒るかな?


「ところで突込みのヒト」

「なんだその呼び名は!!我の名はエーデルワンド・スリンプ・アンドロダス、吸血鬼が四大派閥、共存を主とした愛を謳うバラの長ぞ!!」

「「あー」」

「なんだそのやる気のない反応は!名を名乗らんか!!」


 流石に揶揄い過ぎたか、勢いに乗ってではあるが名乗られたので真面目に名乗り返そう。

 ついでだからアリスの事も話しておくか、名前とかは兎も角派閥の事は教えておいても問題ないだろう。


「渡し屋ギルドのパーティー万屋に所属しているCランクの如月紅だ」

「同じく万屋のBランクカレンよ」

「因みにさっきこの場所に同行させて先に帰った吸血鬼も同じパーティーに所属する渡し屋だ」

「派閥はバラらしいわ」

「ふむ。随分とマイナーな派閥に属しておるのぅ。肩身が狭くないといいんじゃが」

「は?何言ってんだ。今やバラは最大勢力だぞ?」

「はぃいいいいい!!??」


 すんごい声で叫んだな、音響機か?てかアリスの派閥聞いただけでそんな驚く事か?って思いそうだがそうでもないか、なんせつい10年前までバラは四大派閥のなかでは最小だったからな。

 吸血鬼は大体どこかしらの派閥に属すのが一般的だ。無所属もいないこともないが所属していれば後ろ盾を得られる。

 その恩恵は食事や住みよい土地、仕事の斡旋等からもし万が一なにかあった時に守ってもらえるなど様々で、今の世界でも十分機能する恩恵が大半だ。


 アリスが所属し王様、エーデルワイド氏が作った共存を主とした愛を謳うバラの派閥も同様で現代社会でも活用されている。

 というか今日日共存以外の選択肢がないから他の派閥、悪意を主とした悪を謳うロベリア、征服を主とした恐を謳うヤドリギ、貪欲を主とした欲を謳うルピナスの三派閥は肩身が狭くなりあまり大きな顔は出来ていない。

 それでも危険思想自体は消えないので今現在もなくなってはいない。しかし今の世界になって約10年、その10年で三派閥は急速に弱体化したので100年後には無くなるか名前だけは同じ別の派閥になっていても可笑しくない。


 現代社会に適合しつつ柔軟に改善に努めているバラの派閥は今最も勢力が強く、所属人数が多い。最も四大派閥内では唯一創立五千年を超えないため歴史が浅くはあるがそこは嘆いてもしょうがないので気にしない。

 しかし要するに他の物騒な三つの派閥は創立から5千年は軽く超えると、吸血鬼の歴史長いな。


「あの、ニッチだった派閥が最大だなんて、歴史はどうなった?!」

「口調が崩れてるぞ?」

「おっほん、四大派閥の一つと言われはしても最少なことに変わりはなかった。四大などと言われておったのも力のある者が複数所属していたが故だ。所属人数の半分は人間たちだったからな」

「つまり残りの半分の吸血鬼だけで大派閥に数えられるだけの戦力だったと」

「うむ。古い血を継ぐ者、強力な力を持つ者、知識豊富な者など様々だ。勿論吸血鬼だけでなく人間たちもそれぞれが出来ることで力を貸してくれた」


 それは瞼を閉じればすぐに思い浮かぶ光景だ。

 我らの楽園は青々と茂った森に囲まれ、冷たい清流が町の近くを流れるのどかな場所だった。

 森からは木の実が取れ、動物が住まう豊かな森、我らは町の近くの森を拓き畑を作り、伐採した木々で家を作った。拓いた畑を燦々と降り注ぐ太陽のもとで耕す人々、川で水遊びをする人間とダンピールの子供たちは魚が逃げると大人に怒られていたっけ、夜には吸血鬼が周辺の森を巡回がてら狩りを行って動物を間引いて、大物が取れれば次の日には宴会だった。

 町は大きくすることもできたが無理に拓くことはしなかった。元々自給自足をしていたので発展する必要が無かったのもあって町の拡張は百年に一回有るか無いかぐらいだ。

 穏やかで緩やかに時が過ぎていくあの場所は本当に楽園だった。


「ふーん、本当にちゃんと共存してたんだな」

「なんだその気の無い返事は、あと本当にとはどういう意味じゃ」


 朗々と語っていたエーデルワイドにうつ相槌が適当になってきた。昔を大事にするのは良いし、その土地にもそこに住まうヒト達にも愛情が有るのは良いんだけど、


「いい話かもしんないけど長い」


 うん、ホンと長い。かれこれ一時間ぐらい郷土自慢された気がする。時計見てないから知らんけど。


「えっとごめんなさいねアンドロダスさん。別に貶してるわけじゃないの、寧ろ感心してるぐらいよ。長かったけど」

「ああ、何百年も昔で共存なんて鼻で笑われる時代によくもまあ実現できたとものだと思ってな、今の時代ですら難しい事なのに、長かったけど」

「うぐぅ、長かったのはすまぬ。はて今の時代?先程おんしが言っておったが今日日共存しか道は無いのだろう?なぜ難しいのだ」


 難しい理由ねえ。ある意味カガリの故郷と同じ問題なんだよなあ。

 てか謝るってことは長い自覚はあったのか、自主的に止まってくれよ頼むから。


「受け入れられないのよお互いに、特に古い時代を知るヒト達がね」

「例えばバラ以外の吸血鬼たちは人間たちを今だに食料としか見ていない奴らが多い」

「バカか?」

「直球ね。その通りだけど」

「世界のルールで知性があるモノ同士のはあらゆる殺傷、戦争、略奪は禁じられているから襲えないんだけどな、言葉や行動で脅したりは出来るんだよ」

「まじかに迫る凶器に恐怖して永続的に吸血する契約にうっかり頷いちゃうと吸われちゃうのよね」


 そうなんだよなあ、姫鬼のストーカーに狂がやってたみたいに攻撃もできるんだよ、届かないけど。その恐怖たるやそう筆舌に尽くしがたいらしく、渡し屋には穏便に契約の解除は出来ないかと依頼に来るヒトが幾人かいる。


「脅しに屈せぬ強い心を持てっと言いたい所ではあるが」

「難しいな。人間は驚くほど恐怖耐性が強い奴もいるが耐性皆無な奴もいるし」

「人間に限らずだけど少なからず恐怖は持っているものよ、それを巧妙に生かして契約を迫ってくる吸血鬼はなかなか減らないわね」

「詐欺みたいなものだしなあ」

「詐欺?・・・ああ教本に少し乗っていたな美味い話には裏があるっといったやつだな、我も気を付けねば。そう言えば穏便な契約解除とはどうやってるのだ?」

「「え?話合い(物理含む)」」

「穏便とは?」


 そも依頼内容に『穏便な』と付くのはもし手荒な交渉をして後でまた契約しろと迫られたら怖いからなので二度と依頼人の前に直接的にも間接的にもかかわらない様に丁寧な話合い(物理含む)をしている。丁寧な話し合いは確りと効果があり依頼達成率は今のとこ100%、再発は無い。

 たまに人間に下剋上された吸血鬼の方から契約の解除を受け入れてもらえないと泣き着かれる事もあるがそんなもん知ったこちゃない。自業自得である。よくよく話し合って自己解決してくれ。


 こうしてみると吸血鬼って面倒なこと多いな。

 つかまた雑談になってね?

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