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普通に生まれて当たり前に育ち、極々平凡に日常を生きる。  作者: 梓川 由紀
面倒な予感・・・
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バラ

 万屋本舗にて、ハナさん特性のバラジャムとバラアイスをふんだんに使い、緑の魔女産の食用薔薇を飾った見た目にも味にもこだわったバラパフェを紅達に奢らせ、更にはバラジャムを使ったバラクッキーをもお土産に奢らせたアリスはアンティーク調の壁掛け時計をチラリと見てからローズヒップが入っていたティーカップをソーサーに戻した。


「帰るわ」

「あらまあ」

「わかった」

「・・・随分と素直ね」


 帰ると口にしたものの素直に帰すとは思っていなかったアリスは面食らったような顔をしたのちに盛大に顔をしかめた。

 美少女なのになんつう顔してんだ。


「美少女のする顔じゃねえ」

「女の子がそんな顔見せるものじゃないわよ?」

「誰のせいよ誰の」

「「何が?」」

「くっ、このおとぼけバカップルがっ!最初あんだけ強引にしてた奴らがこんな簡単に引き下がるとか、気味が悪いわ」


 テーブルを挟んだ反対側でわざとらしく小首を傾げる二人組が心底忌々しい。仲良く頭くっ付けてんじゃないわよ!あんだけ強引の問答無用に拉致って箱の前まで連れて行っていたのは何処の誰よ!!


「バカップルって、私と紅はそんな仲じゃないわよ?」

「ああ、まだ清い仲だ」

「そこに反応してんじゃないわよ!・・・・て、まだ?」

「ん?」

「何でもないわ!」


 あっぶな!?下手な疑問は持つものじゃないわね。ええ本当に。

 小声で聞き返しただけじゃない。なんであの一瞬で真冬の様な寒気と高熱を出した時の悪寒を感じなきゃなんないわけ?

 てかまだこいつらは良く分からない関係性のままなわけ?あれだけ互いに牽制しておいて?バレンタインとか嫉妬と激アマの嵐だったじゃない。本当に意味わかんない奴らね。


「どうしたの?アリスちゃん」

「何でもないわ」


 紅のかもし出す寒さに背筋を震わせながらアリスはのほほんっと聞いて来るカレンにそっけなく返す。何故隣に居るのに冷気を感じないのかはなはだ疑問ではあるが、そこは紅が気付かれない様にしているからor天然故に気付いていなからだろう。

 まあ場合によっては気付かない振りをしているだけの可能性もあるが、カレンは悪意や殺気、害意には敏感ではあるが好意にはどうも鈍感なきらいがあるので判断が付き辛い。しかも顔が半分が見えないせいでさらに判断に困るのだ。

 心が読めるタイプも能力を弾かれて読めないし、表情から読むタイプも顔が見えないので読めない。行動や言動を読もうにも観察していると(番犬)に殺気を向けられるので読めない。おかげでカレンは腹が読めないヒトというのがパーティー内の認知だ。もっとも普通に話す限りでは穏やかな良いヒトなので困らないし、ヒトをみる事においては右に出るものが居ない万屋のパーティーリーダーが問題無しとしているので特に問題はない。


 問題があるのはむしろパートナーの紅の方だろう。普段は兎も角カレンに関する事はちょっとしたことでも殺気が飛んでくるのだ。しかも割と危機を感じるレべルの。おかげで紅はパーティー内外で軽く魔王認定されていたりする。


 閑話休題


「とにかく帰るわ」

「結構いい時間だものね」

「ええ、これ以上遅いとちび達の機嫌が悪くなるもの」

「大黒柱はたいへんだな」

「そうよ、たいへんよ。だから帰るわ」


 孤児院を経営しており、自身の定住も万屋本舗からほど近い孤児院の一角に構えている為彼女は日暮前には帰路に就くのが大半だ。なんせ遅いと施設の子供たちが拗ねてしまったり中には心配して探しに出てしまう子もいるので出来る限り早めの帰宅を心掛けているらしい。

 そんなアリスの事情をパーティー内では周知の事実であるため、アリスが帰ると口にすればよっぽどの事が無い限り引き留める事もなく素直に別れの挨拶を口にする。

 故に今回もそのいつも通りにしているだけだ。


「おう。付き合わせて悪かったな」

「素直に応じるとか胡散臭いわね」

「失敬な、特に裏はねぇよ」

「小さな子たちが待ってるでしょ?こっちは大丈夫よ」

「ああどうとでもなる」

「そう、何か進展が有ったら教えなさい。同じ吸血鬼として知っておきたいし」

「分かった」

「じゃあね」

「おう、お疲れ」

「ありがとう、アリスちゃん。お疲れ様」

「ええ、お疲れ様」


 自身の鞄とお土産のクッキーが詰まった箱をしっかりと掴んだアリスは紅とカレンの言葉を背に受けながら颯爽と店を出て行った。


「あらあら、格好いい事で」

「相変わらず格好付けるのが好きな奴だな」

「いいじゃない。格好付けるのは若い時の特権よ」

「そしてそれがのちの黒歴史になる」

「紅、お口にチャック。本人が気付くまで言いこなしよ。指摘されると余計に作っちゃう物なんだから」

「はーい」


 良いこのお返事ではあるが何時かからかいのネタにしそうね。

 まあでも、


「格好付けが様になっているのならいいじゃない?それに紅もヒトの事笑えないでしょ?」

「うっ」

「紅の黒歴史とか網羅してるからね」

「それは言わない約束で」

「ええ、約束だもの」


 うふふっと笑っているカレンは可愛らしいが、紅の冷や汗は止まらない。

 幼少期から一緒に居るっという事はそれだけの年月を共に過ごしているという事だ。そうなれば必然的に色々と見られているという事で・・・過去の自分とか黒歴史の塊じゃないか。


「カレン~」

「情けない声出さないの、大丈夫よ。私と紅だけの秘密でしょ?」

「お、おう」


 唇に人差し指を当てて小首をかしげるカレンのなんて美しい事か、思わず声が揺れそう、てか揺れたかも?

 出会って何年も経ったけど今日もカレンが綺麗で好きで生きるのが楽しい。カレンが居るからこそ腐らずにまっとうに今を生きている。


 だからこそ思う、己を知るう全てが死に絶えた世界で吸血鬼の王は生きていけるのだろうか?っと、生きる目標が無く生きるのは苦痛だ。もしそうなら無理に引き留めず死に場所を提供するのも一つの案だ。望むのであれば看取ることもしよう。或いは新たに生きる理由が得るのであれば手伝いぐらいはしよう。

 なんせ封印を解いて現代に蘇らせた責任が有るので下手に投げ出せない。


「あの吸血鬼はどうするんだろうな」

「それを今から聞きに行くんでしょ?」

「ああ、そうだな」


 アリスは帰った。

 上の状態も落ち着いた。

 ならば行くしかない。

 面倒だなあっとか思いつつもそれを微塵も顔に出さない様に気を付けながら紅とカレンは会議室、すなわち吸血鬼の王の元へ向かうのだった。

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