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普通に生まれて当たり前に育ち、極々平凡に日常を生きる。  作者: 梓川 由紀
面倒な予感・・・
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いきもの

「お世話になりまして(ニコ」

「お世話しまして(ニコ」

「朝食ごちそうさまだったのだわ」

「ぴー(おいしかった)」

「はい、お粗末様でした」


 食後の片づけと休憩を終えて身支度を整えた紅達は友人たちと一緒に家を出てマンションの下で別れた。

 その時のあいさつに約二名ちょっと皮肉が混じるのはいつものじゃれ合いなので気せずその他の面々は朗らかに挨拶をして別れとなった。


「さてと、じゃあ最初に」

「引取り屋に行こう」

「ええ、そうしましょう」


 顔を見合わせコクリと頷き合い。二人は腕を組んで歩きだす。

 行動としてはいつも通りのカップルなのだが、ちょこっとだけ緊張感が漂うのは向かう場所故だ。


 引取り屋とは文字通りどんな物品も引き取る買取店の事で、世界統合後に生まれ上手い感じに名前を付けようと試行錯誤したが決まらなかったのでそのまま呼び続けそう定着したらしい。何とも締まりがない。

 とはいえ、厄介払いが出来て尚且つ二束三文でもお金になるので何かと重宝する店で、ここにならどんな厄介でも危険でも"物"である以上持ち込める。

 唯一の不満点はたまに紛れ込んでいる"生きている"物は引き取ってもらえないことだろう。生きていると自力で動きだし、逃げ出たり暴れたりするので面倒臭がって引き取ってもらえないのだ。


 もっともそういった物は一旦開けてどういった生物なのか調べてから解体するなり、成仏を促したり再封印するなりしないといけないのでどっちにしろ引き取り屋とは処理方法が別なのでしょうがないと言えばしょうがない。


 因みに、引取り屋の処理方法は他への転売だ。

 透視等で中身の確認を確りとおこない。開けられない様に封印し時には特定の条件を満たさないと開封できない様に術を掛け、あるべき物があるべき場所にあるように売り渡している。物とヒトとの仲介の様な事をしているのだ。

 故に代金は仲介料金なので思う存分相手の足元を盛大にそれはもう盛大に見る。だって商売だし相手にとっては喉から手が出るほど欲しい物をギリギリの値段で譲ってるだけだし?合法だヨ。


 その合法な店に昨日と今朝部屋で発見した危険物を持ち込むのだ。場合によっては押し売りにあいかねない場所であるので緊張感の一つも出ると言う物だ。

 自分たちで処理する代物が出るかもしれないと戦々恐々なのもあるかもしれないが、どっちにしろ引取り屋に行くときは緊張するものなのだ。



       ※       ※       ※



「イキテルネ!」


 うわぁ聞きたくない言葉が聞こえた。

 そう思ったのは二人同時だったのだろう。引取り屋の店内カウンター前にて、紅は隠すことなく顔にカレンは身に纏う空気に二人そろって露骨にその思いをかもし出していた。

 元気よく片言の発音でそう二人にその言葉を突き付けたのはフード付きのダボダボの服を着たなんか良く分からない生物で、そのヒトは引取り屋の店主だ。


「・・・・・・どれが?」

「コノゲンジュウナノヨ!」

「うわぁ今朝の奴だ」

「ヒキトレナイヨ!」


 存じております。

 ことさら強い言葉で断言された言葉にうなずきつつ口を開く。


「中身が何か分かりますか?」

「百万ホシイヨ!」

「あ、いいです自分で見ます」


 口を開いてすぐ露骨に足元を見て来たので即行断って自分で確認することにする。あからさまなぼったくりに出す金はない。


「千円デイイヨ!オカネホシイヨ!」

「金額だけは確りと発音できる謎、はい千円」


 しかし引取り屋はめげずに即座に値段を通常に戻してきたのでこれには素直に出す。一円でも多く金が欲しいと言う引取り屋の特有のがめつさ故に起こるいつもの光景だ。


「マイドアリ!ムムム・・・チスウオニネ!」

「吸血鬼かー」

「狂ちゃんたちが居たから来たのかしら?」

「確かに昨日俺の部屋には姫鬼が居たからな、鬼つながりで転がり込んだってのはあるかもしれん。面倒だな」

「ええ、面倒ね」


 顔を見合わせる二人の脳裏には昨夜から今朝にかけて食料を食べ尽くしていった二鬼がよみがえる。たいへん気持ちの良い食べっぷりでした。

 デザートまで確りと食べてさらに夜食までがっつりと食べた二鬼を思い出している二人をよそに店主による査定は続き、全ての査定を終えた店主が口を開く。


「オキャクサン、ホカハカイトルヨ」

「いくらになる?」

「アワセテ千円ネ!」

「他所に行きますね」

「マチガイヨ!1万ネ!」


 中々のぼったくり具合だ。本当にいい根性なのでこちらもそれ相応の対応をする事にする。


「近くの引取り屋は確か」

「二万ネ!」

「通り一本向こうだな」

「三万!」

「あとは魔導士ギルドへの持ち込みもありよね」

「十万!」

「錬金ギルドもありだろ」


 引き取り屋の言葉を丸っと無視してどこに売りに行くかの相談をし続ける紅達に店主は声を張り上げ主張する。


「百万ダスカラコレ、オイテクネ!」

「二百万以上じゃないとダメ」

「錬金も魔道もその位は出すぞ?」


 しかし二人ともこういった物の価値をそれなりに知っているので最低価格を下げるつもりもない。実際そういった場所に持ち込めば一財産分にもなる代物なのだ。手続きが面倒なのであまりしないがそちらに持ち込んだ方が得になるなら持ち込む、引取り屋もそれを分かっているので食い下がっているのだ。


「グゥ・・・三百万ネ!ソレイジョウハダセナイネ!」

「「売った!」」

「ウゥ、ゼッタイクロジニシテヤルネ」


 かくして引取り屋との駆け引きに勝利した二人は相場よりも割高で自分たちにとっての厄介物の処理を終えたのである。一つを除いてではあるが、その最後の一つに関しては、


「まあ、最後で良いか」

「ええ、最後にしましょう」


 そう二人は頷き合い厄介物の処理を後回しにすることに決めた。

 駆け引きに負けて暗雲を背負った店主から三百万の代金をしっかりと受け取った二人は引取り屋を後にし、万屋パーティーの本部でもある万屋本舗に寄って食堂の主ハナに昨日のドラゴン肉の残りを渡して昼食の予約を取り付け、ついでに三階にある大きな窓の有る会議室の一日中良く日の当たる部屋の真ん中に危険物注意の張り紙と共に厄介物を置いて、厳重に封印を掛けてから街にくり出したのだった。

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