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普通に生まれて当たり前に育ち、極々平凡に日常を生きる。  作者: 梓川 由紀
面倒な予感・・・
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朝だ。

 朝だ。


「カレンおはよう、結婚してください」

「おはよう紅、二鬼に朝食が食べ尽くされるわよ?」

「それは不味い。いただきます」

「はい、召し上がれ」


 本日も華麗にプロポーズはスルー、安定である。いつもの事なので泣いてなどいない。

 本日の着物は黒い縦じま模様の着物に赤い襦袢を着ているらしく黒地から見える赤がたいへん粋で良い。

 今日は仕事着ではなく普段着なので動きやすさを重視ししない。そのため露出は少ないがそれはそれでグッとだ。黒に近い灰色から赤のグラデーションになっているベールも光沢があってとても似合っている。うむ、今日も嫁が可愛くて生きるのが楽しい。


 しかし我が嫁の手作り朝食を遠慮なくパクつく友人たちのせいで会話がろくに出来ない事はイラつく、チッ呪っておこう。


「寒ッ!?呪うなよ馬鹿紅!」

「うっせえ俺の飯まで食うな、人んちの食糧庫を空にするつもりか自重しろ」

「十分してんだよ!」

「すでに軽く三人前食ってて遠慮してるとか言えねえよ普通」

「鬼だから仕方ない。まだあと五人前はいける」

「いかせねえよ!?俺の分がなくなるわ!」


 たく、本当に鬼は燃費悪いな、結局昨日は地竜一匹分食いつくしたくせにもうそんな入るのかよ。中サイズの地竜一匹で100人前は軽いって言われてぐらいには肉の取れる種だぞ?昨日のは特大サイズだからそれ以上だってのに、おっそろしい胃袋だ。

 まあ鬼は燃費の悪さに比例しては妖力量が高くなる種だからな、大喰らいは才能の証拠だから種族内では歓迎される。エンゲル率ヤバいらしいけどな。


 まあ鬼の内事情とかどうでもいい。今は嫁の手作り飯だ。

 ピカピカの炊き立てのご飯に出汁を取ったみそ汁、だし巻き卵に焼き魚、青菜のお浸し、うん旨そうだな。

 ハンバーグとオムレツは姫鬼達ように用意したのだろう。出てるから俺も食べるけどな、大根おろしとポン酢が有るから和風ハンバーグか、多分昨日の地竜肉をミンチにして作ったんだろう。うん、うまい。


「姫鬼達は今日どうするんだ?」

「取りあえず罠にかかった変態どもを察に突き出して部屋の片づけしてから研究かな、今のやりかけが完成したら収入になりそうだしな」

「へー、どんな?」

「空飛ぶ絨毯」

「メルヘンだなアラビアンナイトか?」

「ああ、メルヘンの方が売れ行きが良いんだ」

「なるほど」


 空飛ぶ箒とかも開発してたな、その辺のいかにもって感じの空飛ぶ道具は人間によく売れる。確か飛行可能翼も売れ行きが良かったはずだ。使いづらかろうが非効率的だろうがその辺は人類の憧れだからな、一度は手にしてみたい魔道具ランキング上位だ。10年後には代わってるとは思うがいや、10年後20年後でもその手の創作物が出続ける限り上位のままか?人間の想像力って凄いよなあ。

 そう言えば、


「マンドラゴラ栽培はやるのか?」

「あー、懐に余裕が出来たら?」

「おいおい鬼の稼ぎの半分以上は飯代だろ?懐の余裕なんてできねえだろ」

「そうなんだよなあ、俺も狂も妖力保有量が尋常じゃないからとにかく食わねえと身が持たねえ、だから飯代はケチらない。すると金がない。金がないから研究費に回す余裕がない。故に研究が出来ない」

「見事に隙が無いな」

「だろ?出資しねえ?」

「確実性があるならしてやる」

「ねえな」

「んじゃ無理だな」

「チッ」


 いくら親友様でも根拠のない出資は無理だな、逆に言えば確実性があるなら出し惜しみは無いんだが姫鬼の様子を見るに取っ掛かりもまだなさそうだからこの件は保留だな、そのうち機会が有れば動くだろ。


「ごちそうさまでした」

「はえな。二人前ぐらいじゃん」

「朝はこんなもんだよ。俺は鬼より燃費いいからな」

「ふーん便利だな」

「まあな、その代わり狂に腕力で負ける」

「ざま!」

「姫鬼には負けないんだがな」

「あ゛?」

「事実だろ」


 姫鬼はホント腕力ないからな、その分妖術にというより妖術だけに傾向している。おかげで肉体はたいへん非力だ。そのくせ異常なほどの妖力量なせいで通常の鬼の倍は食べる。

 いくら頑張っても筋肉のつかない体に絶望しつつも筋トレが辞められないのは往生際が悪いと言うべきか粘り強いと褒めるべきか、継続は力なりを実践しているので幼少期よりましとは言うがそれも一体どこまで事実かは不明だ。


「なんか失礼なこと考えてないか?」

「ん?おう!」

「おう?!肯定すんのかよ?!喧嘩売ってんのか?ああ゛?」

「今喧嘩売ってどうすんだよ。俺は今日一日カレンとデートすんだぞ?他所事にかまってる暇はねえよ」

「デートか確かに暇はないな」

「だろ?」

「ああ、今日は水に流してやるから明日以降は覚悟しろよ?」

「さーて準備するか」

「おいゴラァ」


 どこぞの鬼が何か言っているような気がするが気にしない。気にないったら気にしない。

 ビシバシ向けられてくる呪いを無効にしたり返したりしながら部屋へと退散する。デートなのだから気合を入れて着替えねば、カレンは黒い着物だからそれに合わせてシックな感じの服にしよう。いやあデートの時ほど服選びが楽しい日は無いな、シャツとパンツとジャケットでも着ておくか他にも少しアクセサリーを、


「ぴ~」

「ん?」

「ぷー(よくねた)」

「・・・ライ起きんの遅くね?うっかり忘れて出るとこだぞ?」

「ぷぅ(わすれるのひどい)」

「そんな危険物の側で寝るからだろ」


 いつの間にやら紛れ込む危険物の近くに陣取って寝ていたライを意識から除外していたせいで完全に忘れてた。

 つか何でそんな危険物の側で寝るし、スライム意味わからん。


「取りあえず居間に行け、朝飯くいっぱぐれるぞ」

「ぴー(はーい)」


 ぽよんぽよんっと音が聞こえてきそうな跳躍で部屋を横断し体の一部を器用に伸ばして扉を開けて居間へと出て行くライを見送ったのち、紅はライが寝ていた付近に転がっている危険物を直視しない様に何重にも結界を張ってから触らない様に注意しながら札の張られた箱に安置して更に札を重ねばりしてから異次元収納に仕舞う。

 デート中にこういった物を専門に扱う店に持ち込もうそうしよう。

 久しぶりに悪寒がした。


 さて、気を取り直してバッチリとおめかしをしよう。

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