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 未だ遠くで悲鳴が聞こえる。そろそろ本気で帰りたいんだけど?

 お土産も買ったし、帰る準備はばっちりなんだけどなあ、紅に会いたいなあ。


 などと目の前の花園と遠くで聞こえる悲鳴に現実逃避する事しばらく、複数の毅然とした足音と一人分の生気の無いふらついた足音が部屋に近づいてくる。十中八九ジャン達だろうな、ふらついてるのは無特徴な彼か、ご愁傷様です。


「お待たせしました」


 勢い良く開いた扉からは予想通り、ジャン他数名の研究員たちとゲッソリした顔の例の無特徴君が入ってきた。


「説得は出来ましたか?」

「ばっちりです」


 にやりっとたいへんアレな顔で答えるジャン氏はとても輝いていた。Sっけでもあるんだろうな多分、本当に無特徴君にはどんまいとしか言いようがない。


 さて、取り敢えず無特徴君とも色々お話ししようか、先ず自己紹介からといこう。


「たいへんお疲れなところ申し訳ございません。私日本から参りました渡し屋ギルド所属、パーティー万屋のカレンと申します」

「ご丁寧にどうも、ここで研究員をしているカロンです」


 不満ありありって顔だね!

 ぶっすっとした顔で厭味ったらしく返されてしまった。まあいつの間にやら自分だけ日本に亡命って事になってたからね。蚊帳の外感が有って納得できないんだよね。気持ちはわかるよ。うんうん、しょうがいないね。

 なので態度が悪いとカロン君をシバくのはやめてあげてくれませんか?皆さま、カロン君が敵認定してないせいで皆さんからのコンボがフルに入っていて顔色が青を通り越して白くなってますよ!


 パン!

 哀れなカロンを救うためにカレンは柏手を一つ打って視線を集める。音に驚いてカロンへのコンボが止んだ隙に回復魔法をかけてやりつつ口を開いた。


「此度はカロン様とカガリ様の日本への亡命をお手伝いさせていただきます。差し当たって何か質問等はございますか?無いのであれば直ちに荷物を纏め、パスポートを持ち、航空券を買って出国いたします」

「直ちにって、早くないか?俺はパスポートなんてn「あるぞ」え?」

「何かあった時用に仲間内全員のパスポートは用意してある。ほらこれがカロンのだ」

「は?」

「旅行鞄もあるのよ。大容量だから人間だって入れるわよ!」

「へ?」

「仮眠室に置いてあった服入れるな!」

「な」

「軍資金は私達のカンパ済みだからそれなりに大金よ無くさないでね!」

「ちょ」

「航空券今日の最終便が取れたぜ!」

「早?!」

「カガリちゃんの服もバッチリよ!」

「荷物の大半カガリの服!」


 急な展開についていけてないカロンを置いてきぼりにして準備は進む、最後の方は突っ込みになっていたがいつもの事なのだろう。気にすることなくカロンとカガリの旅支度が進んでいく、皆様の連帯感が素晴らしい。

 私の分の航空券も取ってくれたのはありがたいね。


 サクサク進んでいく現状に突っ込むのにも疲れたのかカロンは椅子にぐったりと座り込んで死んだ目で空を見つめている。ほんとにお疲れぽいね。でも今のうちに話せることは話しちゃおう。


「カロン様」

「様要らない。なに?」

「承りました。カロンは亡命に乗り気ではないとお見受けいたしますが何故でしょう?」

「敬語もむず痒いから要らない。何故ってなんでだよ」

「分かった。物凄く抵抗してるみたいだし、嫌そうだから。今も嫌なんでしょう?」

「・・・分かってんならなんで俺なんだ」


 カレンの言葉にカロンはびくりと肩を跳ねさせると、呻くような声を出す。


「あなた以外に適任が居ないからよ」

「適任ってカガリの世話なら女子連中の方が買って出るだろ、俺はプログラマーであって工学はあんま得意じゃないから体の面倒も見てやれないし、なんで俺が・・・」


 片手で顔を隠し、俯くように言葉を絞り出す。


「貴方が最後まで残ったからよ」

「俺は、俺はプログラミングしかできないから、周りを見て立ち回るのとか下手だし、だから会社の奴らには好都合だったんだろう。ただそれだけで残っただけだ。なんで俺が」

「貴方が最後だからよ」

「だから!「貴方だけが生き残ったから」・・・え?」


 言いたい事が伝わっていない苛立ちをぶつける様に立ち上がり、声を荒げようとしたカロンの言葉を遮ってカレンは言い放つ、


「あなた以外の皆様はとっくに死者よ。この地を、自分たちの自慢の愛娘を認めないこの国の在り方を未練とし、この世に留まっている実態を持つ死者、この国は土葬ですしエバーミング技術も高い。故に彼らは生前の自分自身の体に憑依し、死者の力の源である未練を持ち続ける事によって生前に擬態し、生者の振舞いをしている」

「・・・」


 それはカロンだけが気付いていなかった現実であり、


「カロン、あなた以外のヒト達はこの国の現状を未練としてしまったが故にこの国を離れられない。だから貴方が、カロンだけがカガリ嬢と共に行くのよ」

「・・・」


 カロンに知ってほしくなかった事実だ。

 立ったままだった体をストンと椅子に落とし、カロンは茫然と床に視線を投げる。心ここにあらずっといった様子だがそれも仕方ない。今まで共に過ごした仲間たちがいつの間にやら死んでいて、しかもそれに気付くことなく今まで一緒に過ごしてきたのだ。その現実の衝撃は測り知れな


「ゾンビから受けたケガで感染してゾンビになったりしない?」

「しない」

「ならいいや」

「「「「「「「「「「「「「「「いいんかい?!」」」」」」」」」」」」」」」

「わりとどうでもいい!(キリ!」


 ・・・結構どうでもいいらしい。

 キリっとした顔でどうでもいい発言が飛び出すとは思わなかった。研究者は変人って言うしその類かな?

 片耳で二人の会話を聞いていた職員たちに一斉に突っ込まれるもどこ吹く風っといった感じだ。


「あ、墓参りしますよ。お供え物何が良いですか?」

「いらね」

「そもそも、墓の下に何も入ってないし」

「わたしはーそこにーいません♪」

「棒!すんごい棒に歌うなお前!?」

「眠ってなんか♪いません~♪」

「そりゃあここでフルに働いてるからな!こっちは上手いな」

「あ、お供え物はいらないけど高級ブランドバックが欲しい!」

「貰ってどうすんの?使うの?死んでんのに?」

「気分の問題よ気分!持ってるだけで気分がいい!」

「そんな事の為に後輩の財布薄くしてやんなよ。俺はあれだカガリの写真を一日一枚以上送ってくれれば良いぜ?目の保養だ」

「「「「「「「「「「「「「「「それだ!」」」」」」」」」」」」」」」

「しゃしん」

「「「「「「「「「「「「「「「頼んだぜ!!」」」」」」」」」」」」」」」

「上手く摂れたためしのない写真をご所望された。死にたい」

「「「「「「「「「「「「「「「生きろ!」」」」」」」」」」」」」」」

「orz」


 仲いいな、死者であるカミングアウトより写真にダメージ受けてる人とか初めて見たわ。


「あ、俺帰ってきても良いんですか?」

「え、駄目だよ?」

「なんで?」

「だってお前の死亡届出しちゃうし」

「へ?」

「だって亡命だしこっちに籍あると向こうで暮らしずらいだろ?だから戸籍上死んどけ」

「何と勝手な、それもカレンさんの指示ですか?」

「え、そんな指示出してない」

「え?」

「え?」


 きょとんと首を傾げるカレンにカロンも傾げ返す。いやそんなん聞かれても、私もいきなりの話についていけないなあ、てか依頼そのものもさっき受理したばかりだしそんな指示出した覚えはないぞ?そもそも別に戸籍上の死亡はいらないんだけどな?

 ちらりとジャン達に目をやると全力で逸らされた。勢い余ってやっちまった的な?でもまだ書類作ってないんだじゃ?


「しゅにーんカロンの死亡届明日には受理されるそうですよー」


 既に制作して提出されてる?!行動早いな!?

 ん?明日には受理ってことは、


「今日中に出国しないと警察沙汰かな?」


 死亡届が出てる人が飛行機乗ろうとしたらたいへんな事になりそうだね。


「・・・・・・俺、いつの間にか殺されかけてる」

「カロン、既に決定事項みたいだし、諦めて私とカガリ嬢と一緒に日本に行こうか、そうすればすべて丸く収まりるよ」

「・・・・・(コクリ」


 力無さげに小さく頷いたカロンの見えない場所でガッツポーズを一つ、これで心置きなく日本に帰れる!

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