だいじょばない!!
「おめでとう!あなたが初のクリア者です!!」
「まさかのビンゴ」
巨大な敷地内にあるビル数棟その全てから最も人の気配が多く、かつ何かを守っている仕草をしている人がいる場所めがけて一直線に来たがまさかの当りだとは思わなんだ。
因みに一直線とは言え壁破壊等はしていない。近くの窓から外に出て壁を駆け上がって屋上に出、そこから一番遠い目的のビルまで跳び、目的の部屋の窓まで重力操作で体を浮かせ念力で窓のカギを開けて中に入っただけだ。
入って直ぐにクラッカーを鳴らされ、祝いの言葉を貰うとは思っていなかったので面食らったが、取り敢えず試験合格って事かな?
「何か言いました?」
「いえ、今初クリアって言いました?」
「言いましたよ?」
「私が初?」
「はい!みんな途中で怒って帰るか壊そうとするので叩き出すかのどっちかで、ここまでたどり着いたのは貴方が初めてです」
「へー」
まあ、中々理不尽な試験だもんね。どこに行けばいいか分からないのに探す場所は広い。しかもビル内部は罠たっぷりでいくら世界の強制力があって死なないと言っても目の前を通過していく針やら炎やらは精神を削るしね。しょうがない。現に私も外に出た瞬間機関銃に撃たれるわミサイルに追い掛け回されるわだし、壊しちゃダメっていうから爆発しない様に氷漬けにして転がしておいたけど大丈夫かしら?たしか爆弾てシンカン?とかいうのを外さないといけないとか聞いたけど何にもしてないよ?あれ大丈夫?
「ところで爆発もしてないのに追撃ミサイルの反応がロストしてるんですけど何か知りません?」
「凍らせて庭に置いてきたけど、大丈夫かしらね?」
「・・・・・・だいじょばない!!できれば空の彼方とか他に迷惑のかからない場所で爆破処理していただけるとありがたいです!」
「あ、壊してよかったのね。分かったわちょっと待ててもらえます?」
「庭で爆破しないでくださいね!後処理が大変なんで!」
「大丈夫大丈夫」
やっぱ氷漬けはダメだったのね。異空間収納にでも突っ込んでおけば大丈夫かしら?あそこ時間停止してるし、ミサイルは大きな爆発物だから何かあったときに投げれば足止めぐらいにはなるわよね?っと持って帰るなら確認取らなきゃね。
「あの、手榴弾感覚で持って帰っていいですか?」
「え、アレ大きいよ?てか手榴弾より高威力だし、1000mmの鉄板が入った壁が吹き飛ぶぐらいには高威力だよ?」
「時間停止空間に収納するので大きさは関係ありません。威力が大きな分にはダンジョン内で使えばいいだけですの問題は無いと思います」
「なるほど?」
「はい、なので持って帰っていいですか?」
「良いんじゃないかな?アレ僕らが作ったものだから国がどうとかないし、そもそも発射した時点でなくなって当然だから無くなる事はどうでもいいし、てか時間停止空間ってなn」
カレンの説明に納得しているんだかしていないんだか分からないが、首を傾げながらも許可をもらったのでさっそく先ほど転がしたミサイルの元へ向かうため入ってきた窓から出て行く、出て行く背中に好奇心たっぷりの質問が投げかけられたような気がするが、そこは思いっきりスルーしてミサイルの回収に向かうのだった。
※ ※ ※
「で?」
「はい?」
ミサイル回収後、部屋に戻ってきたカレンは応接間と思われるソファーと机の有る部屋でお茶とお菓子でもてなされていた。
ここでも出された物に一服盛られていたが、解毒魔法で無効化し食し始めたら周囲から拍手が起こった。どうやらこれも試験の一環だったらしい。
色々と物騒な試験内容に言いたいことは有れどため息一つで流すことにして本題に入ることにした。
「依頼があって私を呼んだのではないんですか?」
「はい、そうですよ」
「では依頼内容は?」
「ところであなたお名前は?」
思いっきり話の腰を折ってきたが、天然だろうか?確かに自己紹介はまだだったけども・・・。
「・・・・・・・カレンです」
「カレンさん。綺麗なお名前ですね!日本在住ですよね?」
「ええ」
「もともと日本生まれですか?それとも移民?」
「日本生まれの日本育ちですよ」
「そうですか、日本では異種族の差別がないと聞いたのですが本当ですか?」
首を傾げ、ニッコリ笑顔ではあるけどなんだか腹黒さが滲み出る仮面の様な笑顔だなあ。私との会話で何かの確信が欲しいみたいだけど何が欲しいんだろう?
「まったくないのかと言われればそんなことはありません。人間同士でも差別が有るんです。種そのものが違えばそれだけ諍いがあってしかるべきです」
「そうですか」
「ええ、ですが」
「?」
「ですが今の世界は武力、暴力による差別が出来ません。出来ないがために話し合うことになります。話し合う席を設けると差別が解消することが多いですね」
「それは興味深いですね」
おや?食いついてきた。という事は差別云々について?確か彼ヒト運動もこのビルを元々持っていた会社の研究員たちが起こしたって話だし、彼はその運動のリーダーでもあったはず。異種間での何かが知りたいのかな?
「そうですか?普通だと思いますよ」
「何故です?」
「だって、今の世界は言語が統一されているんですよ?」
「そうですね」
「言語の統一とは、つまり全ての種族と通訳なしに話し合う事が可能という事ですよね?」
「はい。そうですね」
「だからですよ」
「え、えっと?」
「分かりません?」
「お恥ずかしながら」
困った様に笑うその顔は演技ではなさそうだ。ふむ、人の上に立つこともあるみたいだし分かりそうなんだけどなあ。
「通訳がないという事はその人物のヒトとなりが分かりやすくなるのです。例えばなぜ、話し合いの席に着いたのか、とか」
「というと?」
「だって今の世界では不干渉を決め込み自分たちの陣地から出ない様に引き籠る事だって可能です。変化を嫌うのであれば鎖国状態になればいい。それをしないのであれば何か出来ない理由があるんです」
「なるほど、道理です」
「ではその理由は何か?それは様々です。少子化問題、食糧難、経済、理由な様々ですが共通点は二つです。自分たちの中だけでは解決できない問題を抱えているという事、その解決策を求めて外と接触しているという事です。そして外との接触により問題を解決するのであれば略奪、侵略は出来ない。何故だかお分かりですね?」
「勿論、何故なら統一者が世界がそのようにしたからです」
それは周知の事実、世界統一後に様々な世界の創世神と呼ばれるモノたちが世界を創り直そうとしてできなかった。ならばそれよりも力の無いモノたちには尚更そのルールを覆すことは不可能だ。
「ええそうです。一方的に利益を奪えないのならば話し合うしかない。互いにとって不利にならない条件を求めてお互いにある程度腹を割って話し合わなければ問題は解決しない」
なんせ戦争も略奪も侵略も出来ないのだ。争いごとに有利な力をどれほど持っていてもその力を振るう事は出来ないのだから意味はない。
「ですから、言葉を尽くし知恵を絞り、双方が納得する着地点にもっていかねばならないのです。その為には話し合わねばならい。そうして何日間も話し合い続ければお互いが抱える問題も、お互いの人となりも見えてくる。そうして気付くんですよ」
「何に?」
「お互いがただ明日を生き続けるために今日を必死に生きている生命であり、より良い未来を欲するヒトだとね」
「・・・」
結局みんな生きてるんだから行きつく所は同じ、なら出来るだけ手を取り合った方がやれることが増えるのも当然よね。
「勿論種族的な壁はあります。異種族故の不理解もあります。ですがそれは互いを良く知らないからです。互いを知っていけばその壁も不理解も少しずつ減らしていけます」
「しかし、異種族である事への意識を完全に取り払う事は出来ません」
「当然です。同族同士でも他者への不理解が生じるのです。異種族なら当たり前です。それに全てを分かる必要はありません」
「なぜ?」
なぜ?そんなのは決まっている。
「他人だからです。どれほど近くとも個別の生命なんです。全てを理解する事は出来ないしする必要もありません。必要なのはその異差を個性として受け入れられる環境です」
「環境?」
「ええ、例えば日本には吸血鬼がいます」
「え゛」
あからさまに顔色が悪くなるわね。そんなに外つ国の人は吸血鬼が怖いのかしら?
「ですが彼らは日本では受け要られているんです」
「な、何でですか?」
「大変優秀な血抜き要員だからです」
「はい?」
まさにポカーンといった表現がぴったりの顔で彼は固まった。この話は何処に行っても同じような反応されるなあ。
「吸血鬼の皆さんには其々好みの血があります。鳥、豚、牛、羊、馬、猪、魚、生きていくには命を殺めるのは当然です。そして殺めた命からは血が出ます。それをしっかりと一滴残らず抜いてくれるのが吸血鬼の皆さんです」
「へ??」
間抜けな声を出していますが確りと血抜きされた肉は美味しいです。吸血鬼さんたちのおかげで肉の質が上がったのは日本では有名な話しです。
「だから、日本では吸血鬼の皆さんは堂々と道を歩いても恐れられません」
「それは、凄いですね。ですが人間の血を欲しがるモノもいるでしょう?」
「ええ、当然です。それだけしか飲めない方もいますし偶にで良いから人間の血が欲しいという方も居ます」
「そういったモノはどうするのです?差別されるのではないですか?」
「いいえ」
「何故?」
「破棄献血ですよ」
「はい?」
「期限切れで破棄される献血を提供しています。鮮度に関してどうしようもないですが飢えるよりはましですし、定期的に提供できるので評判は悪くないそうです。どうしても採れたてが欲しければ人間とお友達になって提供して頂ければ良いだけですし、その辺は本人の努力次第かと」
「な、なるほど」
少し引きつった顔ではあるが、一応は納得したらしい。
そんな事で驚いててどうするんでしょう?動く死体とか普通にいるんですが?




