昔々・・・
まあ話す言うたかてどこから話したもんやろな・・・せや、わいの始まりから話そか、多分その方が分かりやすいやろ。
話し初めはそやな、『昔々有るところに一人の男がおりました。』っで初めよか。
※ ※ ※
昔々有るところに一人の男が居った。
その男は生まれつき目の見えない盲目者やった。光を知らんそいつは外を知らん。当たり前やな、一人で生きられる術がないんや、周りはアイツを『トウヤ』を腫れものを触るような扱いしとった。
裕福な家やったし三男坊やった事もあって家を心配する必要はあらへんし、ちゃんと家族には愛されとったからな特に不自由はしとらんかった。
トウヤの生きとった時代は世界統合前の現代よりもずっと闇が濃くてな?人の中にまぎれる妖がぎょうさん居って、妖を認識できる奴もそれなりに居った。そんでそいつ等と対話する変人も居た。トウヤもそんな変人の一人や。
切欠はわいやな、目が見えへんせえで外に出れんでずっと詰まらなそうなアイツに気紛れで声掛けたったねん。
『時化た面してるな坊主』
「は、え?誰や?」
そんで返って来たのは間抜け面と間抜けな声、それに爆笑してやったらまろい頬を更に丸くしてな、余計笑えた。
一通り笑ってやったら不機嫌そやから仕方なしに外の、わいの知ってとる話をしてやったんや、そしたらごっつ嬉しそうでな?気分が良う成って、それ以来何となく足が向いて会いに行ったんや。
それからあいつ、わいと話せるなら他にも話せるんちゃかと思ったらしいんや、そっからは道行く人に声を掛けて話を聞いて、更にはその辺の妖怪にまで話しかけおった。妖怪も人も関係なかったんやな、ほんにいろんなモンに話しかけとった。
んで何やおもろいからって皆そのままトウヤと話し込むんや、相当の数になるで?本人曰く人と妖怪の区別はついとったらしいんやけどソレも何処まで本当か。
兎も角そんな変人がおるって妖怪の間でも噂になってな、ちっこいのからでっかいのまで色んなんが来たんや。
『わはははは、トウヤ!お前の話はいっつも面白いな!』
『話し方一つで変わるよな!最初はクソ詰んなかったのによ。お前が話すだけで様変わりだ!』
「トウヤ君はそんな話を何処から持ってくるんだい?外を歩き回っている私より話の幅が広くて羨ましいよ」
『俺が持ってきたんだぜ!あ、このおっさん聞こえないのか、なーな、言ってやれよトウヤ、妖怪が持ってきたんだぜって』
『よせよせ、あのおっさん妖怪嫌いだろ?気分悪くなるぞ?』
『其処はからかうんだよ!妖怪の仕業だー!!て騒いでくれたら楽しいじゃんか』
「ダメダメ!あのおじさんの持ってくるお菓子美味しいんだから言っちゃダメ!トウくん言っちゃダメよ」
『譲ちゃんの声のほうがデカイぞ?』
「あ」
「ちょwマジ、まwぶふ!!終わった後も周りがおもしろいwwwぶぶ、腹が、ぶはははははははは、ごほ」
『アンちゃん大丈夫か?』
「む、咽、ごほ、だ、だれかさすって」
『よーし、この無数の腕でいっせいに弄ってやろう』
「ちょwま、ぶはははははははは、ぐは!」
『更に酷くなってんぜ?』
『わざとだ(どや』
『どや顔やめろ、俺まで笑うwww』
「ちょ、何事や、とり合えず笑らっとこ、ぎゃはははははは」
『『『「「「もうちょいましに笑え!!」」」』』』
「サーセン」
人も妖怪も入り乱れて其処に居った。妖怪を認知できる奴も出来ん奴も居って、人が好きな奴もそうでもない奴も居った。普段は兎も角其処に居るときだけは皆笑っとったんや。
そこに集まった奴らはな?みーんなどっかで一人ぼっちやったんや、普段はあんま気にせんけどどっか寂しかった。
その寂しいにトウヤは丁度よかったんや、わいらの話を聞いて、自分の聞いた話を面白可笑しく話して、それがクソおもろくてな、皆して腹抱えて笑ったわ。
笑いは笑いを呼んで更に皆笑った。んで笑わせてもろうた礼に山から取って来たもんなんか渡したんや、それはわいらだけや無くて人も同じでな、人は菓子やら着物やらを持って来とった。
あいつの周りには人も妖も関係なしに集まっとった。あそこに入り浸っとった者同士は仲間意識みたいなのだ出来てな、あの場所で夫婦が生まれたりなんかもしたんやで?
出会いの場所になったんだな
そや
「あはは、こんなに笑ったのはいつ以来だろ、すごく久し振りだ」
「あら、偶然ね。私も久しぶりに笑ったの」
「そうなんですか、ずっと笑う暇なんて無かったけど、笑うと楽しいですね」
「えぇ、凄く清々しいわ」
『なんかいい雰囲気だな!』
『俺、このまま付き合うに一票!』
『あ、ずりぃ、俺も!』
『俺はもうちょい後に一票だ!』
「ちょwなんか賭けになりだしおったwwあの二人の子供がここに来るに一票や(キリ」
『『『「「「ちょw気が早いwwww」」」』』』
「「まだ付き合ってすらいないんですけど?!」」
トウヤの戯言が当たってな、二人はホンに子供が出来て報告に来たんや、当時を思い出して爆笑したもんや。
それがずっと続いたんや、あいつがちっこい頃からずっと、ずっと・・・
「トウヤ君、今日も天気がいいよ」
『トウヤ、今日は何か面白い話はあるか?』
「あ、トウヤさんこの間こんな話を聞いたんです!」
人は変わって妖怪は増えたり減ったりして、
「おじいちゃんお気の毒様……」
「甥が生まれたんだって?こっちには来るの?」
『甥はお前に似とるな!』
あいつの家族も減ったり増えたりしたなぁ。
「はじめまして、私は妖怪が見えるんです。貴方もですか?」
「わいには何も見えへんよ、聞こえるだけや。そもそも盲目なんやから見えたら怖いやろ」
「あ、そうですね。すみません」
「気にすんなや、誤るんやったらなにか話をしてぇな、わいの楽しみなんや」
「えっと、じゃぁこんな話を知ってますか?」
そう言えばあいつの噂を聞いて会いに来おった人も居ったな、
「ぶっ、…だ、ダメ我慢できない。あはははは、そんなこと本当にあったの?」
『あった。あった。そしたらトウヤの奴』
「のわああああああああああああああああああ言うなや!言うな!!恥ずいわ!!」
『そこは言っとかんと、わいらだけ知っとって嫁さんだけ知らんのもいかんやろ』
「アホ抜かせ!嫁の前ではかっこよくありたいやん!」
「大丈夫よ。だって、今のままでもあ、あたなは十分、か、かっこいいもの///」
「そ、そか?///」
「ええ///」
『うおー、あまずっぺー』
『コレが純愛か』
「やっかましいわボケ!!」
「嫁さん貰ってよかったね!!」
「今度はこっちがはやし立てるからな!いつかの恨み!恥ずかしかったんだぞ!」
「出会えた事に後悔はないけどね!」
「その節はえろうスンマセン!だからからかわんといて!」
「「そう簡単には終わらせん!!」」
「ぎゃああす!」
「くすくす」
盲目で働けんくせに気立てのいい嫁さん貰ろうたんやで?しかも『見える』嫁さん。そっからは嫁さん含めて腹抱えて笑ったんや、
「あかちゃんかわいー」
「ちっちゃーい」
『猿みてぇー』
『赤子とはよく言ったもんやな、確かに赤いわ』
「言うに事を欠いてそれかい!!もっと何か有るやろ!こう、嫁さんに似て可愛とか、父親に似てかっこいいとか」
『『「「後者だけは絶対無い」」』』
「ちくしょーーーーーーーーーーー!!」
んで、何時の間にやら子供が居った。時は早いもんや。
「父さん?何やってるんですか?」
「うん?いや、少しは何か出来ないかと思って木彫りを」
『止めてくれーーーーー!!』
『怖い!怖い!!すっっっごく怖い!!』
「指切る!血が出る!まだ出てないけどいつか出る!」
『怖いーーー!!』
「ちょ、何事や」
『『「「いいから早く止めてくれ!」」』』
「何でや!?」
「父さん……危ないから小刀置こうか、ね?母さんに言いつけるよ?」
「あ、そら勘弁して!」
「おじちゃ」
「うっほい!我が孫いらっしゃい!!目に入れても全然まったく痛くない、わいの可愛い孫!目ないからな!!」
『変なところで自虐入れるなや』
「影は口調直らななったな!」
『こらもう直らんな』
「そのまま似非関西弁妖怪突っ走れ!!」
『おっしゃ、開きなおっとる!!』
「そのちょうしや!」
「あらあら、相変わらず仲が良いわね」
「あ、嫁さん」
「お茶が入りましたからお部屋へどうぞ、お客様も妖怪の皆さんもどうぞ」
『『『「「「やっほーーーい」」」』』』
餓鬼がでかくなって、孫が出来て、気ぃ付いたら最初見た、ちっこい餓鬼は背が伸びて丸まって、その子が子を産んで、孫が出来た。まろかった頬は痩せこけて皺皺でアイツは気立てのいい嫁さん共々ヨボヨボの爺さん婆さんや。
それは・・・
今考えれば普通やな、わいらにとっては短い時間でもアイツ等にとってはえろう長い時間やったんや。それに気ぃ付いたとたん怖くなったんや
怖いって?
人は弱いんや、こんなヨボヨボなってもうたらすぐに死んでまう、そんなんやや、死んでほしくない、そう思ったんよ。
せやから其処からは他の妖怪達とも話して持ってくるもんは栄養のあるものを採ってきた。長生きしろって、長く生きてわいらと遊んで欲しかったんや。
「そないな、悲しい顔するなや」
『顔って見えへん癖に何言いってんねん』
「分らいでぇか、影とはずっと居ったんや、わいの世界を広げてくれた恩人で友人なんや、声や話方で分る。悲しそうや」
『……』
たまに悲しそうに自分を見るわいらに気付いたんやろな、トウヤは目が見えへん癖して勘はぴか一やったからな。
『トウヤ死ぬんか?』
「せやな、わいは随分長く生きた方や、もうすぐ逝くやろな」
『………こんな辛いなら出会わなければと思ってまいそうや』
「わいは出会ってよかったと思っとる。別れを恐れて出会いを嘆くなんてしたく無い。わいは影に会えて良かったんや。おかげでこんなに幸せや、たった百年にも満たない時間でこんだけ大量の人と妖怪に出会えて、良い嫁さんもろうて、子と孫が出来た。何て幸せな人生や」
『トウヤ……』
「影は?影はわいに会わへん方が良かった?あの時声掛けない方が良かったと思うか?」
『そんな事無い。わいは、俺はお前に会えてよかった』
「ならええやん、わいとの出会いを嘆かんで?出会わなければ、何て思わんで?今のわいは影のおかげや、覚えとって、わいと嫁さんと子と孫を、忘れへんで?」
『あぁ、約束だ。俺は忘ない。トウヤお前と出会って友人になれて、幸せだ。だから絶対忘れない。このまま似非関西弁妖怪続けたるわ!』
「おう!あんがとな!影、あんな?人は妖怪が思うほど脆弱やない、一人一人は弱かろーが、わいら人は血を紡げる。思いを繋げる。わいの思いはわいの子が継いでくれはった。子の思いは孫が継いでくれはる。そうやって繋がってくんや、わいの縁は影のおかげでぎょうさん繋がった。ありがとうな」
にぱって笑いうんや、光が灯った様に笑ってそれが最後やな。
何となくやけど気付いたわいらはな、必死に言いたいこと言っとく事にしたんや、言わずに後悔だけはしとうなかった。だってトウヤとは最後になると解かっとったんやから。
『トウヤ…わいからも礼を言うで、トウヤのおかげでわいにも縁が出来た。人との縁は何時まで繋げられるか分らん。せやけど妖怪同士の縁ならどうにかなる。お前が繋いでくれた縁や、大事に繋いどく、せやから安心せい。わいらはもう一人でないで?わいら皆お前なおかげで繋がったんや、そやろ?』
『ああ、そうだ。そうだぞ!』
『トウヤ!お前のおかげでもう寂しくないぞ!』
『仲間がこんなに居る!お前のおかげだ!』
『俺等妖怪だけじゃないぞ?人にだってお前が繋いだ縁はたくさんある!』
『トウヤ、ありがとな』
『俺等に声掛けてくれてありがと』
『感謝してる』
『俺等にとってもお前は大事な友人だ!』
「はは、何や皆して、今までそないな事言ってくれへんかったやん、あーもう、今日が最高の日や」
『トウヤ』
「天気良いんやろ?暖かいもんな、死ぬには良い日や、友人にこんだけ囲まれて、あ、愛し子の足音や」
「わ、いっぱい。父さんは相変わらず友達多いな」
「ええやろ?こんな良い日に死ねるんやから僥倖や」
「っ、そうだね。人の方の友人も来てるよ」
わいらだけやなくて、トウヤも自分の死期を悟とった。やから集まったわいらの話も茶化さずに聞いたんやろ。同時に子も父親の死期を悟ったんやな、人の友人を出来る限り呼んだんや。
「トウヤ!」
「おいこらトウヤ、どう言う事だ!私より先に死ぬなどぬかしおって!」
「トウヤさん、冗談が過ぎますよー」
「おじさん、あそびに来たのー」
「トウヤおじいちゃん元気?遊びに来たよ~」
「おじちゃん、ぐあいわるいの?」
「また、娘に話を聞かせてください」
「おじさんの好きなお菓子有りますよ?」
「お義父さん、もう直ぐ梅が咲きますよ元気になったら花見に行きましょう?」
「そうだよ父さん、早く元気になってよ」
皆分っとったのにな、それでも生きてて欲しかったんやろ、好物やら、おねだりやら、約束やらをしとった。
それに答えんでトウヤは嬉しそうに笑うばかりやった。
あいつは見えへんかったやろうけど皆涙目なんや、ちっちゃい子も居ったんやけど、どっか寂しそうで、何となく解かっとたやろ、んでトウヤも解かっとったよ。皆声に涙が滲んどったからな。
「あぁ、こんなにいっぱい来てくれはった」
「あなた」
「嫁さん」
「あなたに出会えて幸せでした。私も直ぐに追いますから少しの間待っててくださいね?」
「勿論や、何時までも待ってるさかい、ゆっくりおいで、川のほとりで待ってるで」
「ええ、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ………」
暖かい小春日和やった。
あいつは、わいらの大事な友人のトウヤは逝ってもうた。穏やかに笑った嫁さんに手を握られて、子に孫に、たくさんの友人に囲まれて幸せそうに笑って逝った。
皆ボロボロ泣いたんや、妖怪も人も関係あらへん。皆や、そのあと一年も経たんうちに嫁さんも逝ってもうた。どっちもあの時代からしたら長生きやったんやで?
トウヤと関わってわいらは知ったんや、人も妖怪も価値観の差こそ有れど、どっちも同じ様に意思を持ち、考えを持って生きとる。自分の信念を貫いて生きるんは尊いんや、生きてるからこその縁であり出会いや、簡単で直ぐ見失う事をトウヤが教えてくれた。わいらの自慢の友人や。




