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昏倒 困惑 後遺症

前回までのあらすじ。

犬ってなんだっけ?

動く甲冑発見

怯える老体

山神のような狼ワンワン

宙を舞う、俺の腕


暗い


昏い


クライ


くらい


暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい暗い昏いクライくらい


どこまでも暗い、何も見えず、沈んでいく昏さ。

泣き叫びたいのに声もでない。

ここが何処かもわからない。

あぁ、ただ、怖かった。


熱い


暑い


アツイ


あつい


熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい熱い暑いアツイあつい


右腕が熱い。燃えてるよう・・・ではなく、比喩じゃない。燃えてる、燃えてしまっている。熱い

全身が炙られているように暑い。兎に角暑くて堪らない。

アツイ、左脚が疼いて仕方がない。アツイ。

何が何だかわからない。

あぁ、ただ、辛かった。


何故俺はこんな所に。

何故俺はこんな思いを。

何故俺は、

何故俺は、

何故俺は、


何故俺はいま


生きているんだ?



――――――――



瞼が重い。

全然開く気がしない。

身体が重い。

全然動く気がしない。

はっきりしない意識の中、不自由さだけははっきりわかった。

右腕も、顔も、左脚も熱くて熱くて仕方がない。

でも、そんな感覚もどこか遠く、他人ごとのようだ。

刺すような、抉るような、掻き毟るような、痛みもどこかぼんやりしている。

いまはただ、水が欲しい。


「・・・の、・・お・・・あ」


少し前のことを思い出そうとしても、集中できずに霧散していく。

何度かこんな思いを繰り返していた気もするし、初めてのような気もする。

でも、考えがまとまるより先に俺はまた、意識を手放した。



――――――――



あれから何日経ったか分からないが俺は目を覚ました。

ずっと薄ぼんやりとしていた気もするし、寝ていた間のことは全然覚えていないような気もする。

堅く閉ざされていた左目を開ける。何故か右目は開かない。

俺の視界に映るのはキレイな天井。


「ひぃぁ・・ぃへ・・・ら?」


例の定番になっている「知らない天井だ」と言おうとしたのに声が出なかったことに唖然とする。

驚愕の思いで飛び起きようと身体を動かしたつもりだったが、ピクリとも動かなかった。

なんだ?どうなってる?俺は、俺の身体はなんで動かないんだ??!


(カナデ!カナデっ!俺のコエが聞こえるか?!)


口で出せないなら心の中で叫んでみる。いつも頭の中にカナデの声が響いているんだし、きっと不可能じゃない・・・はず?


《はい、マスター。無事意識が戻ったのですね。何よりです。》


おぉ。いつもの音声合成ボイス=カナデの声が聞こえる!やった。これで現状について知ることができるっぽい。


(なぁカナデ。俺、身体が全然動かないんだけど理由わかる?身体と魂が馴染んでないとか言ってたアレが原因とか?)


《・・・いいえ、マスター。マスターは自分自身の力によっていまの状態になりました。》


いまの状態?いまの状態ってなんだ?話せないことと動けないことか?あ、あと右目が全然開かないな。コレのこととかもか?

それに全身めっちゃ痛い。痛くない場所わかんないくらいに痛くてツラい。


(えっと、できれば具体的に教えて欲しいんだけど、俺、何したの?何があったの?)


《・・・はい、マスター。マスターは、『冒険級火属性魔法(マギアス・アーベント・フレイム)』の暴発によって、深刻な身体的ダメージを負っています。

具体的には、右上腕部から先の欠損。右上半身の重軽度の火傷を複数。右目は眼球が焼けてしまったので失明。

並びに、爆発の衝撃を至近距離で浴びてしまったために肋骨と鎖骨に複数個所の骨折。また、同衝撃によって弾き飛ばされたため、全身の裂傷や打撲。

最後に吹き飛ばされ転がる先にあった木へ左脚が接触し、左脚は全体的に骨折などを含め破損しています。》


(・・・・・・はっ?・・・・えっ?・・・なんで?)


《はい、マスター。マスターはカナデの制止も聞かず、誤った使用方法で魔法を行使。

その際に制御できなかった爆発や火炎のエネルギーにより今以(いまもっ)て尚、瀕死の重傷です。》


(・・・えっと。)


《マスター。繰り返しますが、マスターは生死の狭間を8日間彷徨い続けた重症者(しにそこない)です。》


(何それ!それまだ聞いてなかったよっ?!俺、1週間以上意識不明の重体だったの?いきなり情報詰め込まれすぎて全然頭ついていかないんだけどっ!)


話された衝撃的な事実も当然だが、それよりなによりこんな衝撃的な事柄を半分キレたように言い募ってくるカナデに対して困惑してしまう。

まだ出会って体感で1日にも満たない間柄だけど結構いつも淡々としていたイメージがあるし、何より怒られるなんて思ってなかったから普通にビビッていしまう。

これ俺のメンタル弱いのかな?いやいや、そんなことはない・・・はず。うん。大丈夫なはず。


きっとカナデさんの声が結構怖いのが原因だ。射抜かれるような、そんな鋭さを持っているのが要因だ。それよりなんでカナデさんが怒っているかが問題だ。

いま俺と会話できる唯一の存在の上、俺がこの世界で生きていくのに絶対必要な協力者であり同時に理解者でもある。言ってみれば最強のパートナーだ。

俺の記憶を同期してるみたいなこと言ってたような気もするし、そもそも俺の記憶の管理しているなら全部知られてるし。・・・ん?

えっ?俺の・・・記憶、全部、知られてるの?・・・ちょっマジで?えっ、ちょっ、ちょっと、マジですか?マジなんですか??俺の生きてきた記憶全部って・・・それ、なんて拷問?

俺が今までしてきた恥ずかしいことやらなにやら全部知られてんじゃーん!全然気付かなかったけど、俺の趣味趣向も全部ご存じなんですね?そうなんですね?!うわー。うわーっ。うわー!うわーっ!あああぁぁぁあああああーっ!!

急にメンタル削られてる!ガリガリ減ってる!ゴリゴリやられてる!俺のライフはもう0ぽ!

こっちの世界に来て以来、どんどん俺のライフ残機が減ってるよ!もうヤバい!マジヤバい!半端なくヤバい!もうダメぽ!

俺の黒歴史が、俺の処○厨が、俺が彼女いない歴=年齢だってことが、何もかもバレてーら!こんなに恥ずかしいこと他にはないってくらいに恥ずかしい!

ちょっと前までのカナデさんならいまよりなんか機械的?だった部分もあるからまだマシだったかもわかんないけど、なんかいまのカナデさんダメだ!感情的な部分出されてめっさ人格的なアレソレ意識しちゃったよー。もうホントやだー。穴があったらインしたいー。お尻晒すからせめて頭だけでも隠させてほしいー。俺前世で何かしたっけ?こんな仕打ち受けるくらい悪いことしてないと思うんだけどなー。絶対なんか間違ってるよー。

その後散々内心でグチグチ言ってたら、カナデさんが話しかけてきてくれて、ようやく俺は正気に戻った。正気を取り戻せた。大丈夫、俺は正気だ。正気のはずだ。


(えっと、つまり俺はあの魔法暴発事件で重傷を負ってこの屋敷に運ばれたと?)


《はい、マスター。ちなみに私はマスターを通してしか外界を識ることができないので、聴覚情報しか更新できていません。

ですので、ここがメタリカ家であること以外は殆どわかっていません。》


(ふ~ん。そうなんだ。ここがメタリカさんのお家ね~。)


どうやら俺はメタリカさんという方のお世話になっているらしい。どこの誰ベーさんかは存じ上げませんが、お世話してくださってありがとうございますって感じだな?

それにしてもメタリカさんか、どっかで聞いたことある名前のような気もしないではないなぁ。ん~っと、メタリカ、メタリカ。あーダメだ。全然思い出せん。メタリカ?

そんなに関係薄い知り合いとかだったのかな?それとも人伝てに聞いたとか、芸能人とか?・・・いやいや、ここは異世界だよ?そんなちょっと知り合いの知り合いーって人なんている訳ないじゃん。

俺が知ってるのはせいぜいカナデのことと、近くの街がメタリカーナ・・・で、そこの領主が確かメタリカだったってことくらい。うん。うん?

あーそっかそっか。ここ領主の家じゃん!っってはあぁぁっ?!関わらないとか決めてたクセに速攻のフラグ回収お疲れ様でしたっっっ!・・・もういいよ。疲れたよ。パトラッツュ(笑)。この世界は僕に優しくないみたいだ。

きっと善良な市民を痛ぶるのが趣味のヤバめな神とかが管理してるんだよ。あのじじーも傲慢だか怠惰だとかの大罪系だったと思うから、もしかしたら神はいないのかもしれない。この世界は悪魔が管理してるのかもしれない。

七つの大罪ってあと何があったっけ?暴食、色欲、強欲、憂鬱、憤怒、怠惰、虚飾、傲慢、嫉妬・・・これで全部?あれ?なんか数多くない?枢要罪との違いがわかんなくなっちゃった。

まぁいっか。少ないよりは。大は小を兼ねると言いますしー。大罪なんか知らなくっても生きていけるし!平気だし!

はぁ、そうなると俺はどういう立ち位置なんだ?お貴族様のお屋敷で8日間も寝てたってことは何かしらの事情はありそうだな。早速種族バレしたか?研究の為とか。もしくは領主様が変な趣味してて、俺みたいな瀕死の重傷者を見るのが趣味とか?そんな感じの変態さんだったら、貴族とか関係なくお近づきになりたくない人確定だよ。


(なぁ、カナデ。状況は大体わかってきたけど、俺がここで寝かされてるのはなんでだ?)


《はい、マスター。マスターは現在ここの領主の娘によって治療を施されているところです。

手配された治癒術師の腕はおそらく冒険級だと思われますが、部位欠損や火傷跡など、一般的に自然治癒しない損傷を回復させる力はないようです。》


(そう、か。じゃあ、この腕や眼なんかはこのままか。受け入れがたい事実だけども、早速異世界でハンデ背負っちゃったな。)


今後どうするのが良いか考えるよりも先に、現状に酷く落ち込む。俺の利き腕、ないのか。全身が痛いせいで特別右腕が群を抜いて痛いってわけじゃない。それでも他の痛みとは違った、喪失感というか焦燥感というか、そんなのが色々混じって余計に痛みを感じる気がする。

幻肢痛と言われるものがあるとは聞いたことがあるって程度には知っていたつもりだったが、本当にいまもまだ腕があるかのように腕があったところ辺りが痛む。痛みに顔が歪む。でもここは異世界だ。現代日本じゃどうしようもなかったかもしれないが、いまの俺には解決方法があるかもしれない。それだけでもなんとか絶望しないでいられる。カナデもいるしな。どうにか、なる。いや、どうにでもしてみせる!決意を胸にカナデに聞いてみた。


(なぁ、カナデ。俺の右腕なんだけどさ、魔法・アイテム・スキルとか、何かしらの方法で元通りにすることってできないか?)


《はい、マスター。先に述べられました、そのどれもが可能です。魔法でいうなら魔導級、アイテムでしたら上級ポーションの中に部位欠損用の特殊ポーションがありますし、スキルでしたら上級スキルの『自己再生成』などが挙げられます。》


(っっ!やっぱりあるのか!なら、当面の目標はそこだな。まずは自分の身体を治したい。

このままじゃ生活もままならないからなぁ。あ、ちなみにそのコストとかは?)


《はい、マスター。魔導級魔法はSP50、DP5万。

部位欠損用特殊上級ポーションはDP5,500。

『自己再生成』スキルはSP50、DP3万です。》


(結構バラバラなのな?DPの価値がいまいちわからん。でもそういえば一覧見てる時に魔法の方がスキルよりも取得コストが高かったなぁって思ってたっけ?汎用性があるからかな?)


《はい、マスター。価値や基準は特に意味が規定されている訳ではありませんので、その認識で間違いありません。

スキルごと、魔法ごとに階級が存在し、その程度によって必要ポイントが変動しますので、利便性などはあまり考慮されていません。単純に階級が高いと必要DPも高くなります。

またポーションに関しても同じで、利便性などは関係なく素材の希少性が高いアイテム程、必要ポイントが高くなっています。》


(そうなのか。それってかなり面白いな。取得コストに利便性や製法の難易度が加味されないなら、高度な技術を使って製造されている物が格安で手に入る可能性があるってことだし。こっちの世界、ミロワールドだっけ?ここの物価とか全然わかんないけど、うまくやれば商業チートもできちゃうかも!)


《はい、マスター。ご推察の通り、可能です。マスターは迷宮主ですので、この世界では優遇された職業と言えます。》


つまり、一応神(笑)に選ばれし俺すげーってことか!いあいあ、よくよく考えてみたら俺もうDPないじゃん?すでに詰んでるよ。ははっ。

あるのは魔法が1個だけ。ぷーくすくす。これさ、なんて無理ゲ?俺最初の選択肢間違えちゃってるじゃんっ!(笑えっ)

くっそーマジか―。こんなチートルートあったのに、最初の分岐ミスるとかマジ雑魚。俺情弱。おっつー。

こんなことならスキルや魔法の一覧見てるんじゃなくて、もっとシステム的な部分とか確認しとけばよかったーマジショックー。あ~、まぁでも?仕方ないとこもあるのかなぁ。あの老夫婦を見捨てるなんてできなかったし。これからまた地道にDP稼いで選択肢を増やしていけばいいだけだし。

俺の腕も脚も一応は治せそうではあるんだし。前向きにいきましょう。うん。そうしましょう。


―――コンコンッ


ノックの音が聞こえ、そちらへ首を向ける。(首だけ動かせた。)ガチャッと開かれた扉の奥から、金髪(ブロンド)美女が現れた。


お読みいただき、ありがとうございます。


異世界で初めての魔法を使用

代償は全身重症

腕と眼の焼失

左足の大破

前途多難な(そう)君の今後に期待・・・していいのかなっ?!


次回予告。

音波攻撃

振動攻撃

口から反撃

の3本です。

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