金髪怪音波発声機登場
前回のあらすじ。
暗くて熱い夢
カナデさん、オコ
今後の予定
取り戻す、決意だけなら即完了
自分修理の予定
初めまして金髪
「おぉっ!目が覚めたのか!魔法師殿っ!」
開口一番美女が叫んだ。かなりの声量で、傷に響く。やめて頂きたい。まっこと、やめていただきたい。本当に、できることならいますぐにでもやめてっ!マジで・・・。俺が顔をしかめると、何を勘違いをしたのか美女が走り寄ってくる。
「あぁっ、ムリをしてはいけないっ!君はかなりの重傷なんだっ!ゆっくりしてると良いっ!」
いちいち叫ばないでくれ。マジで痛い。
彼女の口から発される衝撃が身体を駆け巡る。空気の振動が、俺の身体を確実に蝕んでいる。痛みで吐き気がしてきた。
いってぇぇぇ。うぇっ・・・ぅぅ。
そんな俺に構うことなく美女が迫る。
「君には是非ともお礼を言いたいと思っていたんだ!あの時君が来てくれていなかったらあの御人達を助けることは叶わなかっただろう。それにだっ!それを抜きにしてもあれだけの数の<マーダージャック・ウルフ>を相手に、私自身、この身も危うかったであろうっ!君には重ね重ね、感謝の意を表したいっ!ありがとうっ!!」
具合の悪い俺を完全に置き去りにして、彼女の声量はガンガン上がる。矢継ぎ早に衝撃をガンガン言い放ってくる。俺の頭もガンガン痛む。
吐き気の度合いもガンガンガンガンガンガンガン・・・「うおえぇぇっ、おろろろろろろおおおぉぉぉぉ。」
「んなっ!大丈夫か?!待ってろ!い、いま医者を持ってきてやるっ!」
言うなり彼女は反転して駆け出した。持ってくるってなに?ここの医者は物か何かなの?
「必ずすぐにもーどるーかーらな~~っ」
ドップラー効果付きで遠ざかる彼女を目で追うこともできずに胃液をぶちまける。10日近く何も食べてないから胃液しかでない。それもかなり濃い目だ。きっつい。
咽喉が、鼻が、ヒリヒリするし歯が溶けるんじゃないかってくらいに口の中も気持ち悪い。
《マスター。ベッド脇にあるテーブルの上に、水差しがあります。取って、中身を飲めますか?》
視界の端の方に、確かに机っぽいのがある。痛み、震える身体に全霊を注ぎ込み、無理矢理起き上がらせる。油の切れた機械みたいに、ぎこちなく動く身体が恨めしい。
左腕を伸ばし机を掴む。腕と身体全部を使って自分を起こす。続いて右手で水差しを掴もうと思い、腕がないことを改めて実感する。しかし呆けてる時間はない。もう動くのも限界だ。
渾身の力で左腕を伸ばし水差しを掴み、差し口から直接水を飲む。
「・・・んっ、ん・・・んぐっ・・・ん。」
水差しには何か、水じゃない物が入っていた。日本のエナジー系ドリンクの中でも、お高いにっがいヤツに似てる。不味いけど、くっそ不味いけどいまは我慢して飲む。飲む。飲む!
なんか身体が欲してる?飲むのもツラいが、もっとだ!もっとだと、身体が訴えかけてくる。
一口くらい含むだけのつもりだったのに、最早飲むのをやめられないとまらない。何かヤバい成分とか入ってない?大丈夫なのコレ!?
すると、不思議と少しずつ身体に力が入るようになってきたような気がしないでもないかもしれない予感がヒシヒシと感じられるような勢いだった。水差しの中身を半分ほど飲み干し、一息つく。
「ふうぅぅ・・・。」
ふと、漏らした息で気が付いた。
「声が・・・。」
《はい、マスター。その水差しに入っているのは、下級のポーションを薄めた、希釈ポーションです。
ホンの僅かですが、マスターの体力の回復、それと、ヒリついた咽喉を癒せたようです。》
「これ、が、ポーショ、ンか。」
まだまだ身体がキツく、痛く、ツラいが、ベッドにもたれ掛かっていられる程度には回復した。
ポーションすげー。さっきリバースした気持ち悪さも、大分マシになってきたかも。
まぁ、臭いのはどうしようもないんだけど。しばらく息を整えながら待っていると、
バンッッ!
扉が開く。吹き飛ぶんじゃないかってくらいの勢いで。ちょっとギシギシいってない?かと思えば、さっきの美女がおっさんを担いでやってきた。
何を言っているかわからないと思うが、俺にも訳がわからない。細っこい美女が、メタボ気味なおっさんを肩にひょいっと担いで走ってくるんだ。それも自動車並みの速度でだ。
冗談なんかじゃねぇぇんだぜぇぇぇっと言いたくなる程に我が眼を疑った。見開きすぎて、我が眼が溢れ落ちてしまうんじゃないかとやや焦る。
まだまだ疲れているのだし、致し方ない。幻覚だって見るだろう。気付かない内に寝てるとかってこともあるだろう。
私はいま夢の中?それともここは幻覚の中?それは誰にもわからない。
「待たせたなっ!!」
―――ビリビリビリッ
壁が震えた。比喩じゃない。なんなんだこの声量は?拡声器使ってます?使ってない?あ、そうですか。
それにしても、多少体調が良くなってきたってのに、頭にも腹にも響く声だな。俺のHPゲージ大丈夫?いまので減ってない?残ってるの?あと僅かでなくなりそうだけど?風前の灯火よりも昼行燈してそうだけど?
そんな俺の状況を知ってか知らずか、彼女は一切お構いなしだ。笑顔全開。ニッコニコ。メタボなおっさんを、いやさ、お医者様を肩から降ろし、地面に打ち付けんが如く、ドンっ。と降ろす。
おっさん、あんよ、大丈夫?おっさんはフラフラながらも自力で立ってる。凄い!メタボが立った!
クラ○と違って感動はない。しかし、それでも凄い。このおっさんも何かしら鍛えているのかもしれない。
あの腹からは想像できないが、もしかしたらあの腹はフェイクなのかもしれない。一体どうやって駄肉を装着しているのか。人類の進化に興味が尽きない。
「あぁ~、酷い目にあった。肩が腹に食い込むわ、足がいまにも折れそうだわで散々だわい。」
おっさんは言う。全然日本人に見えないが、しっかり言ってる内容が理解できて何よりだ。こういう異世界言語翻訳の機能とかって、あのマジキチじーさんのお陰かと思うと感動も半減だが、翻訳コン〇ャクお味噌味並みにスゴい。
あの神の加護1つで、現世の英会話教室が軒並み閉店に追いやられること請け合いだ。
「かなり、の、衝撃、だったと、思い、ますが、大丈、夫、ですか?」
まだまだ本調子じゃない俺の咽喉では、大きな声も流暢な言葉もちょっとムリだ。なので、ゆっくり、確認しながら発音する。それを受け、少し驚いた様子のおっさん医者は、
「ほぅ。見た所随分と落ち着いているようだの。大したもんだ。お若いのにな。」
と、どこか物珍しいモノを見たような、それでいて悲しそうな顔をしながら独り言のように呟いた。
もしかして、俺の身体がボロボロだからか?もっと取り乱してるもんだとでも思ったのだろうか?
記憶の混乱が起こっているとでも思っているのだろうか?
まぁ、普通ならそうだろう。俺だって現代日本にいたなら、いまよりもっと気にしてただろうし、取り乱していた自信がある。そもそも地球なら魔法で自爆はしないが・・・。
兎にも角にも、回復手段がいくらかあったことを知れたことはデカい。それに、何より俺にはカナデがいるし。例え口が利けなくなっても、意思疎通ができるパートナーがいるのは精神的に非常に大きなアドバンテージだろう。
お蔭で俺も落ち着いていられるし、こうやって普通にしてられるのだ。
「ショック、は、あります、が、いまは、落ち着いて、います。大丈夫、です。俺の、治療は、貴方が?」
「あぁ、そうだの。私が担当した。あまり言いたくはないが、かなり危険な状態だった。君の意識が回復して何よりだよ。」
「いえ、ありが、と、ござい、ます。」
今度は朗らかに笑うおっさん。小太りな体型からくるのか知らんが、どことなく親しみやすいおっさんだな。さっきから医者医者言ってたけど、多分治癒術師とかヒーラーとかそんな職業なんだろう。
おっさんヒーラーとか需要なさそうだが、現実はこんなもんさ。
MMOとかの美少女ヒーラーとかも、中身は大抵このおっさんより非道いもんだろうと予想を立てる。
かく言う俺も女性キャラ持ってたし。いや、擬似美少女はしてないよ?ちゃんと性別公言してたかんね?
と、少しあっちの世界に逝ってる間に、おっさんは俺の状態を見てくれたらしく、一応は安定していそうだと仮の太鼓判を押してくれた。当面、当座は大人しく休んでいるようにと告げると、部屋から出ていく。帰るの早くね?放置感半端ないんですけど?この国の医療はこんなもんなのか?それとも俺が吐いたモノがあまりにも臭かったからかな?確かに放置されてていまも臭いがキツいけどさ。
俺いま掃除とか無理なんよ。ごめんな?
よくわからないままポケーッとしてたら、今まで黙ってニコニコしていた美人さんが近づいてきた。
「うむっ!ベルゲイさんが平気と言うならもうなんの問題も無いなっ!よかったよかったっ!」
言ってるセリフは俺の身を案じてくれているのだろう。言いながら俺の肩をバコンバコン叩くのはやめて頂きたい。そろそろ肩の関節とか外れてしまいそうだ。そもそもメッチャ痛い。骨とか大丈夫?折れているかもしれない。どんだけ力強いんだよ。そういえばさっきのおっさん担いでたな。
叩かれる度に視界が揺れる。
鎖骨とかマジで折れたかもしんない。
ギシギシいってるもん。
痛いんだもん。
あ、なんか、段々と意識が、遠く、に・・・。
―――――――――
「ほんっとうにっ、済まないっ!」
バンッ!!
目の前で金髪美女が両手を合わせた。普通なら小さくパンとなるような仕草なのに、彼女がやると鉄板と鉄板をぶつけたみたいな凄い音が鳴る。衝撃波に近い、ビリビリとした空気の悲鳴も感じる。
正直怖い。アレで俺の頭を挟まれたらきっとトマトみたいに簡単に潰れちゃうんだ。怖い。
無意識に身体が震える。涙が出そうだ。いや、もう出てるかもしれない。なんか怖くて色々とよくわからない。もしかしたら漏らしているかもしれない。いや、きっと漏らしてる。うん。もう漏らしちゃっているに違いない。じわじわと全身が濡れていく。汗だか油だか何がなんだかわからない体液が滴る。
大丈夫。ギリ漏らしてない、ハズ。自信はない。(キリっ)
生まれたての小鹿のように震える俺。手を合わせ、頭を下げたまま微動だにしない彼女。まるで彫刻のように動かないのがマジで怖い。どんな筋力と体幹だよ。少しは身動ぎしてくれよ。
このまま黙っていても彼女は動かなさそうだ。ここは怖いけど、決意と誠意をもって頑張ろう。頑張れ、俺。
「えっと、俺の、こと、助けて、くれた、のは、貴女、ですよ、ね?」
「んんっ?」
あれ?スゴくびっくりしたような顔して首傾げちゃったぞ??どうしたんだ?俺、何か間違っちゃったかな?
「えと、俺、が、魔法で、自爆、しちゃっ、た、時に、近くにいた、騎士?さん、ですよ、ね?」
「あ、あぁ、あぁっ!そうだ!あの時側にいたのは私だ!私だった!私でしたっ!」
ニコニコと嬉しそうに自分を指差す金髪美人。・・・もういっか。残念美人がそこにいた。
金髪のストレートヘアー。後頭部の高いところでポニーテールにし、左サイドの髪を編み込み、逆サイドはピンで留めている。ある種独特なヘアスタイルをしているが、彼女は確かに美人である。
おめめぱっちり鼻筋スッと、血色の良さそうな唇がぷくっとしていて若干幼い感じもありながらも、文句なしの美人さんである。
ちなみに胸囲は驚異的である。頭下げてる時とか超目のやり場に困る。たゆんたゆん。たゆんたゆんである。絵で描けば、縦線一本で表現可能な兵器だ。ホントにデカいと谷は線になると聞いたことはあったが・・・。
凄いや、理想郷は本当にあったんだっ!
貴族っぽい、白のゆったりワンピースを着ているが、バストサイズにしか合わせていなさそうだ。
多分七分丈なのに十分丈っぽくなっちゃってる。普通お貴族様なんだから、オーダーメイドとかじゃないの?丈とか合わせるでしょ?
そんな彼女だが、会って数分ですぐにわかる程に残念系。そう。ちょっと頭の方が弱そうである。そんな娘が、簡単に人を壊せちゃう怪力持ってるとかマジ勘弁なんですけど?どうなってるの?この世界。これがデフォルトなの?なんなの?
しかしながら、誠に遺憾ではあるものの、多分あの街道からここまで運んでくれたのは彼女なのだろう。看病してくれたり、もしかしたら治療費も払ってくれちゃっているのかもしれない。そういう点を鑑みると、最早感謝しかないのだが、どうにも残念すぎる。もう少し落ち着いて話せる相手がいればよかったのに。
「何故君は、私があの時の甲冑の中身だとわかったのだ?いつも信じてもらうのすら苦労するのにっ!」
不思議そうに言いながらも、顔は完全に笑顔だ。腑に落ちないながらもいつも誤解されているから嬉しいのだろう。きっと。
「いや、自分で、言ってたじゃ、ないです、か。<マーダー、ジャック・ウ、ルフ>が、どうのって。」
どうやってあの驚異的な脅威の胸囲を鎧の中に押し込んでいたかは謎だ。謎すぎる。迷宮入りだ。俺の迷宮にも是非欲しい難事件だ。
「お?おぉっ!そういえばそうであったな!確かにさっきそんなことを言った気がするっ!」
おい、気がしただけかよ。適当だな。性格か?頭の作りか?大事な栄養が大層結構な所に流れまくってるんじゃないだろうか?
(なぁ、カナデ。この残念美女がメタリカ家のお貴族様であってるか?)
《はい、マスター。この方がここ、メタリカ領、領主の長女、エリザベート・モルドレ・ド・メタリカです。領主の名前はクリフレット・モルドレ・ド・メタリカ。爵位は子爵にあたります。》
子爵か。全然ピンとこない。ついこの前も同じことを思った気がする。そもそもなんだよ子爵って。ドラキュラさんは伯爵だっけ?子爵はその下だったな。男爵イモさんの上か。そうなるとそこそこ結構偉いんじゃないの?
偉いと普通は教養学んだり、礼儀作法学んだりして粛々としたりするんじゃないの?この残念美人さんは悉く俺の予想と想像の斜め上か下辺りをうろちょろするな。どうにもこうにもやり辛い。
俺は畏まればいいのか、彼女を敬えばいいのかさっぱルンルンだ。少なくとも、どちらも上手くできる気がしない。そういう風に気をもっていかせようとしているならかなりの曲者・・・なんだが、絶対違うって顔に書いてあるな。そんなに物事考えられるお脳味噌をお持ちではなさそうに見受けられる。
んむー。そもそもこんな色々規格外な令嬢と接するスキルなんかないし、無難に敬語を継続させて凌ぐか。日本人的に?問題解決だ。
「その節は、誠に、お世話、を、お掛けしま、した。お蔭でこう、して、命を、拾うことが、でき、ました。」
姿勢は変えられないが、軽く頭を下げておく。これくらいが無難だろう。というかこれくらいが限界だろう。俺の身体的に。
「この、御恩は「いやいやいやいやっ!やめてくれっ!頼むからやめてくれないかっ!」」
金髪残念美女に両肩を掴まれ揺り動かされるるるるるrrrっ。
いててててててっ!!!
これ、アカンっ!
ヤバいヤツやっ!!
真剣な眼差しで、悲しそうな瞳で、食い入るように俺を見つめる彼女は、両腕の力強さとは裏腹に、どこか儚げに見えた。
それは
絶対に
勘違いだと
強く
心に刻みながら
再び意識を手放した。
お読みいただき、ありがとうございます。
この2人、カップリングが最悪かも、です。
このまま想君撃沈かも・・・?
次回予告。
彼女の想い
想君涙目
交わす言葉




