番外編④ あるルルシア帝国軍将校によるオクタピア侵攻時の手記
エピソード45の敵視点となります。
3ヶ月前にオクタピアへの侵攻が発動された。リンデル少佐は我々の中隊を率いる人望の厚い上官だ。部隊の全員だけでなく他の小隊の中にも彼を慕う声が多い。そんな彼から作戦について聞かされたのは開始の一週間前だった。すでに所属している師団の大部分は演習の名目で国境沿いに展開していた。口伝で伝えられている噂によると西部方面に配置されている軍の大部分が国境沿いに張り付いていると言う話だった。作戦開始の日が来ると伝令から命令書が届いた。その内容は国境を超えて敵首都ダンバーを目指すように伝えられた。それを受けて少佐は進軍を俺たちに命じた。
ユーコス皇帝が即位してから我々の軍は大きく変わった。国民の国家への所属意識が高まり、国に尽くそうという概念が流行した。その中でこれまで戦争が起こるたびに徴兵されていたものが、常に軍隊に所属する、いわゆる職業軍人という仕事が生まれた。そこに入ろうとする若者はかなり多く、俺もその一人だった。この小隊を率いるリンデル少佐は貴族の出身ながらも革命に加担して功績を残したという話を噂で聞いた。
国境沿いの大河を何の抵抗もなく渡ると輪重部隊も同行して順調に進軍を進めた。野営をするときは酒が配られて毎日宴会をしている気分だった。しかし、三日目を境に様子がおかしくなっていた。左翼側からの伝令が減ってきていたのだ。たまたま師団長の近くに配置されていた俺たちは将校たちの話ごえを聞いてしまった。その内容は伝令がこないことを不審に思いつつも想定以上に敵と接敵しないことで計画よりも早く進軍しているのだろうと言う内容だった。リンデル少佐はそれを聞いて「何か嫌な予感がする。」そう話していた。それから二日後、久しぶりに左翼側から伝令がきた。彼が話すには、左翼側の部隊は補給路である橋を落とされ、物資不足ということだった。少佐は低い位にいたものの撤退するように意見具申をした。しかし、師団長はそれを拒否して決戦を目指した。翌日、伝令からの知らせで自分達が通ってきた橋が落とされたことを知った。その知らせを聞いて一時間後には背後から騎兵が迫っていると後衛から報告が入った。重装甲兵が立ちはだかったものの敵の持つ武器は彼らの甲冑を無力化して本陣に迫った。聞き慣れない激音が聞こええた後、気がつくと師団長やその幕僚たちののる馬車は小さい穴が無数に空いていた。「先ほど装甲兵を襲った武器による攻撃だと考えてすでに命はないだろう」と少佐は言った。たまたまというべきなのか我々の小隊は全員が生き残っていた。その場には命令を下せる将校は上位の者たちも含めて誰ひとりとしていなかった。そこで名乗りをあげたのはリンデル少佐だった。残った兵士たちは彼に従うことに決めた。その彼が下した決断は右に見えている山岳へ向かい、そこで戦う味方と合流することだった。
手持ちの物資はまだ少なからず残っていたが、少佐は荷車を置いていくという命令を出して、人力でできる限り持っていくように指示を出された。俺も食料などが入った袋を背負い歩いて彼について行った。最初は意味がわからなかったが、二日後になって理由がわかった。俺たちが進んでいたのは鬱蒼と木々が立ち込める森林だった。そこは道幅は人一人が通るのがやっとの場所だった。こんなところに荷車を持ち込むのは無謀だったのではないかと俺は感じた。
そこで持ってこなかった理由に合点がいった。少佐は初めからこの道を通ることを予見していたのではないかと推測して、先見の明に関心を禁じえなかった。
背負った荷物はどんどん軽くなっていき、足取りは軽くなったものの食事はだんだんと乏しくなっていた。開戦初頭に酒を毎晩飲んでいたことが嘘のように思えた。そのような生活を一週間ほど続けてようやく味方と合流を果たした。そこに辿り着いたのは三千人ほどだった。
その数は師団に所属していた人員の30%に昇った。決して多くはないものの同じ方面から進軍して生還した部隊としては最多だと教えられた。
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あと二話ほど執筆動機を書いて終了します




