独白
連絡を終えたユーコスは緊張の糸が解けたのか、「ふぅー」と吐息を吐いた。顔には疲労の色が見て取れた。「なぁ、今脇に立っている武人たちよ。聞いてほしいことがある。俺は元々武人だった。ところが、革命が起きて、臨時政府が立っても国民の困窮は改善することはなかった。その時だ。国民の俺に対する視線が英雄を見る目から救済を求める目に変わったんだ。期待に応えるために権力を掌握して国民をより豊かにしたつもりでいた。勇者召喚やオクタピアとの戦争だって理由としては同じだ。それが敗戦によって、退位することが出来た。首都への強襲上陸が始まった頃に家臣が進言したんだ。ここを放棄してでも帝王殿下には生き延びて戦争を継続してほしいと。だが、それを断って指揮を出し続けた。周りには、市民を逃すためだと説明したが、内心ではこうなってほしいと思っていたのかもしれない。あいにくあんたらの国はいい国だ。もし、其方たちが英雄になったとしても、こんなことが起きないように政治への意見は控えることが得策だ。」そこまでで言い切ったと思ったが、彼はさらに続けた。「元勇者はそこにいるな。最初に見せ物として利用しようとした理由が分かるか?」一瞬反応に困ったが、俺は答えることにした。「きっと自分の政策を合理的に自分自身と民衆へ説明する手段だったのではないでしょうか?あなたは戦場で効率性を求めるあまり、有能な腹心まで失ったんだと思います。それは心理的負荷が高かった事でしょう。もしかすると、帝位についた後も夢でうなされる日があったのかもしれない。そんな時、勇者として召喚されたうちの一人が私だった。私を過去に救えなかった腹心たちとリンクさせてしまったあなたは、自己弁護のために無価値だと決めつけることしかできなかった。違いますか?」その答えに対してユーコスは首を縦に振るだけで、それ以上は何も話さなかった。その後の一時間近く沈黙が続いた。しかし、誰も静寂を破ろうとはしなかった。
それを破ったのはとある知らせだった。シュベルツが王宮に現れたのだ。報告を受けてしばらくすると王の間に彼が現れた。その目からは怒りに満ちているようにも見て取れたが、呼吸や素振りは荒くなくて、冷静さを失っていないようにも感じた。ユーコスと視線を合わせると彼は話し出した。「まずは撤兵を指示していただき、ありがとうございます。首都がこの有様だということは終戦に向けて舵を切ったということで間違いありませんか?」まずはそう問いただした。「そうだ。すでに聞いたかもしれないが、こちら側の降伏をオクタピアは望んでいる。私は戦術面においては強かったが、国家戦略についてはこの有様だ。すまないが終戦処理を頼んでもいいか?」一呼吸おくと言葉に怒りを滲ませながら返答を始めた。「分かりました。引き受けましょう。それで講和条件とはどのようなものでしょうか?」その問いに対してオクタピアの外交官が改めて答えた。「皇帝の退位と食料の優先輸入権、そして差別の撤廃です。」「えっ、それだけなのか?」答えを聞いたシュベルツは一瞬拍子抜けした表情を見せたため、外交官は補足説明を始めた。「あなたたちに高い賠償金を要求するのは簡単です。しかし、私たちの国家元首はそれを望まなかった。疑問に思った私の同期で仲がいい知り合いに理由を尋ねると彼女はこう言ったそうです。『その条件をかなり大きくしてしまうと禍根が残って次の戦争の火種になってしまうから、ある程度達成可能に見える目標の方が良い。経済的恩恵を両者が享受することが将来に平和を残すには必要なことだ。』と。それが私たちのトップなりの答えです。」その答えを聞いた彼は納得したようでこう言った。「今すぐに仮書面を用意する。今は内乱で国がゴタゴタしているから本契約の調印は2ヶ月ほど待ってくれ」そしてバタバタと動き始めた。俺たちの役目は終わったようだったので、了解を得るために外交官の方を見ると彼は頷いた。撤収の許可を仰ごうとした時、ちょうど無線が鳴った。「ウイスキー1へ、こちらHQ、城内に残る全ての抵抗勢力の排除を完了した。軍人の仕事は終わった。これより撤収を開始せよ」「ウイスキー1よりHQへ、了解した。」そう本部から許可が下りると、外交官とその護衛を残して王の間から退出した。
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次回の投稿予定は6月11日です。




