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来-3(旧題:円環の虹)

 久しぶりに再会した夢の世界の善悪が呆れて語る。


「また来たのか」


 そんな科白をいう男を横目にひたすらに探す。気合いを入れてきただけ落差は大きい……がひたすらに気づかない振りをして、その分、足を動かす。郊外に息を切らして走る、桟橋に、みんなと一緒に水をかぶった舟はない。焦げ目のある木はーー、ない。

 ニヤニヤしながら善悪が「何をしている?」と聞いてくる。無視した。

 宿屋をバンッと開けた。

 シクラーゼが「退屈だぜぇい」とカウンター奥でぼやいていた。


「シクラーゼ、変わったことはないか?」

「っへっへっへ。たった今、お前ぇがなんで俺の名を知っているかってぇことだな」


 っおい、おい。

 呼びかけるシクラーゼを無視して奥の部屋を開けたっ。

 間取りが違う。ベッドは小綺麗なのがひとつ、鏡はなし。


「シクラーゼ」


 追ってきた宿屋の主人に問う。


「このタンスに見覚えは? 縛られた経験はあるか?」

「見覚えも何もさぁ、もともとウチんのタンスだぜ。それと俺に縛られるような趣味はねえぜ」


 不安な気持ちがでないよう無言で宿をでる。次は広場だ。

 風よりも早く、広場へと向かう。中央にでた。城をみる。


「初実イイィィィッッ!!!」


 と悲痛に叫ぶ。通行人が少し脇によけて通り過ぎた。何も世界が変わることなく、市はただそこにあった。ケダゲタ顔なじみが笑う。

 っ、あの電灯!!

 来た道を大急ぎで引き返す。肩で息をしながら、道沿いをみる。

 心の柱が折れそうになるのも気づかない振りをして宿屋から裏道へと駆ける。

 酒場だったその場所は……ただの民家になっていた。唸りながら、俺は街の外へと駆けだした、もう駄目なのかもしれない、張り切ってきたのはいいけど、何の影響も与えちゃいない。何もッッ変わらないっ。自嘲したくなる、その心を認め、それでもっ、と走りだす。ゴウゴウと鳴っている動力炉がそこにあった。しかし、あの日見下ろした光景とは全く違っていた。世歩玲が寝ていた場所で膝をついた。


「いくら現実に善悪に影響させても……ここが変わらないのなら……意味がない」

「何をしているかは知らないが……満足したか?」


 無言でいるのを肯定ととったのか、まあこの世界を楽しもうや、と励まし重い足取りでごみの街というクチクラップへ気分転換にいこうというので、ひきずるような体で盲目的に騎士様についていく。解説をしてくるが正直どうでもよかった。


「あんまし、竜退治とかいった派手なクエストはないけどファンタジー世界のお約束みたいなものはあるなあ、どんな需要があるのかしらん十グラムしかくれないクエストとかな、開発者なに考えとるんやろ? 笑いながら道ばたを「それ」と指さす。

 呆気にとられた俺に善悪が流ちょうに語る。


「売っても一グラムにしかならんやん」


 なおもつづくぜんあくのはなしはみみに届かなかった。


 膝を着いた。

 目元をなにかが流れるのを感じた。

 何を勘違いしたのかクラスメイトが慌てて、矢継ぎ早に話す。


「まあ、直接さわらなくてもいいってのが、ミソだな。初心者は大抵直で触ろうとする」


 実演しようとする勇者を手で制した。


 (知ってるよ)

 (風呂敷があるんだろう?)


 砂地から顕れた唐草模様で包まれた犬のフンを結んであーだこーだ言っていることがおかしかった。俺は泣いて。


 そして笑った。

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