来-2(旧題:円環の虹)
みっかかな、いやよっかか……みっか過ぎた気がする。
そんな、日付がどうでもよくなるぐらい、俺はいままで俺に起こった体験をもとに小説執筆に力を入れていた。忘れたくない。無にはしたくない。そんな思い一心であった。
ごちゃ混ぜの気持ち、思考、思いそして願い。書けば書くほどに整理され、研ぎ澄まされるようで、しだいに俺を客観視できるぐらいには落ち着いていった。
そうだよな、と姿見の俺に頷きかえす。俺は変わらないといけないのかもしれない。夢の世界のゼンアクはどうなんだろう? 頑なに己の世界を守る。絶対に信じられない。人に言ってははいけない夢を持ってしまった。変化がせまられる。それをやったのは自分だ。俺はあいつの世界の悪でしかないのか? 俺は俺の善を押しつけようとしていた。じゃあどうすればいい?
「どうすればよかったんでしょう」
なんともなしに口に出した端に善悪が反応した。
行き詰まった……先が未定の筋書きを前に俺はボーッとしていた。
「良かったやん? 普通であることに気づけてさ」皮肉に笑いながら、夢物語を聞かされて辟易していた善悪が突っかかってきた。
「だいたい才能ねえんだよ、設定矛盾点ありやがるし」
善悪の手書きのメモが渡された。
「夢のなかにサッキュバス? が連れていくのはいい。で、選ばれた人間の自意識が強力でそこに行けないって……行ってんやねーか。様子みてたけどよー」
確かに。善悪の言うとおりだった!
行けないのに行けていた……、それはナゼか。しばらく作者都合の為、お休みを頂いていた小脳が出番がきたとムクムク動き出す。目まぐるしく走馬燈のような追体験を行うなかで、何度も世歩玲は口をつぐむ。言ってはいけない、言葉は可能性を制限する……それをナゼ俺にだけ……なぜ?? 夢を繋げるーー善悪の夢とは……一言もいっていない? なら。ならどこと俺の夢を繋げたんだ??
「物事を律する」
あのときの口論でトーキチが言いかけたことは決まりがあるということだ、それを世歩玲は拒絶した。世歩玲が崩れいく光景がフラッシュバックする。
(忘れないで……私を)
なんで、忘れないで、なのだろう? 死に際、もっということが他にあるはずだ、最期に伝えたい言葉! それが私を忘れないで!! 記憶を操作できるあの世歩玲が??
っっヲイ!!
「どうしたんだよ達三」
大丈夫だ、大丈夫。むしろ善悪ありがとう!! 舞い上がる俺をみて善悪が「なおさないとな」と気落ちする。それに俺は地平に沈んだ太陽に再会する面持ちで答えた。
「ああ! なおさないとなっ」
図書館で本を借りた。
気がついた……いや見たくないだけだったのかもしれない。ラポール島の由来。俺をどこと繋げたかまでは、ついには、わからなかった。でもそれでもいいかもしれない。
「固有名詞『ラポール島』、それだけわかればいいわっ」
そういうことだけ、わかればよかったのだろう。
図書館で専門用語を見つけた俺は悪態を吐いた。
(曾根崎初実を助けたい)
あのときの巫女様の笑顔。
夢の善悪がナゼ人を拒絶し、そのくせ俺をまた招き入れたのか。
そして俺はーーページをめくろうとした手が止まった。
俺はーー俺が区分され定義されているだろう、科学の尖兵をバタンと拒絶した。
「行ける、ラポール島が存在する限り行ける」
なるべく人間を定義づけされていなく、科学が現実のものとした、善悪に勝てるものを求めたが、わかっているような気がしながらもわからないような喉につっかえた小骨のような気持ち悪さがしていた。
家にかえり縋る気持ちを抑え、棚を動かした。
「あった」
神気溢れる台紙をみつけ、寝床に持っていった。
沸き上がる気持ちを理性がとどめた。懐かしい椿の木が見えるテーブルで読書をする。
「名前がないとかいってたな……」
白紙の筋書きを練る。俺は初実とどうしたいんだ、そもそも勝てるのか? 夢のなかの善悪にとって俺は敵だ。ーー世界を変えようともくろんでいるから、当然ですっと。ん? 巫女さま達が変えて欲しいのは、現実の善悪でしょう。それなら、勝つとか負けるとか意味がないんじゃん。善悪に不思議なこともあると、現実で認めさせなくてはならない。……勝たなくていいのか? 第一、善悪の反応を確かめながら、誤差修正するフィードバックじゃ追いつかない。そもそもここがラポール島なら、善悪も救ってやらないと。あれ? そうか、勝つんじゃない、克つのか……俺は。
「……ブローカ野、表裏一体な世界」
絶対に救ってやる! ナリィーも、世歩玲も、初実も……そして善悪も。




