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妖狐の伝記  作者: 黒紫蝶
壱章 妖狐に転生 ~妖狐としての第一歩~
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第拾壱話

「何だ?楸、その姿は」

「成程、私は楸ではありませんが良いでしょう。私自体の姿はもう消えています。ですが、消される際にこの体に入っただけの事です。何か文句あるんですか?下等者」

「私はそれを知りたいのではなく、名を知りたいだけなのだがな」


 予想以上に動じないようですね。この体はまだ覚醒までは至ってないようですね。となれば、直接私の魂でこの体を相応の強さにしましょう。このままだと戦闘では長く持ちそうにありませんね。そして私はある程度この体に直接強化しました。これなら多少の戦闘では持つ筈です。


「中々巧みな事をしてくれるのだな」

「巧み、ですか。私のしている事は巧みでも何の事でもありませんね。これが普通なのですから」

「そうか、終わってるのならやるぞ」


 その途端、瞬時に私に来ましたが、案外弱いですね。私はその右ストレートを左の掌で軽く受け止めました。ちょっと痛いですが、多少強化をしている為、このくらいは朝飯前です。


「何……?先程までは避けていた癖に今度は受け止めただと……?」

「ええ、受け止めただけですが何か?」

「ちっ……、まあ良い。直に倒してくれよう。本気でいくとしようか」


 先程までは、本気では無かったのですか。なら更にこの体に強化をしてそれに身体能力も上げておきますか。ですが、これだとバランスが悪いので妖術面も強くしておきましょう。


「何をしている!遅い!……は?」

「遅いのはどっちですか?」

「がはっ……!?」


 私も本気を出せばこんな下等者を容易く倒せるのですよ?あまり私を侮辱させられては困りますね。私の妖術型ボールが下等者の腹に目掛けて真面に食らってくれましたね。ですが、まだまだですよ?


「私より速いなど……がっ!?」

「少しでも慢心を抱いてしまっている時点で負けなのですよ?観念をしなければこのまま殺します」

「何!?ぐぁ!!」


 所詮は下等者。詰めが甘いですね。これだから半妖は弱体な存在にしか過ぎないのです。私は以前体があった時は数百年生きていましたが、相変わらず半妖は半妖で甘過ぎます。


「ちっ!!この……!!っ……!?うおあああああ!!!」


 遅いですね。私は下等者の両腕を素手で千切りました。案外半妖ってのは脆いですね。しかしこの両腕不潔ですので抹消しました。さて下等者、残りの脚で太刀打ち出来るんですかね?ふふ、良い様です。


「くそっ!!何をする気だ!!」

「言ったでしょう?次は確実に殺します、と」

「何!?ああああああああ!!!」


 遅過ぎて話になりません。こんな半妖は消えてしまえば良いのです。そう、私からしてただの邪魔なんです。消えてもらわなくては困りますので脚も素手で千切りました。いよいよ胴体だけですね。


「さあ、観念しますか?」

「く……ぐうう!!はぁ、黙れ!お前は一体何者だ!!」

「今更それですか。言いましたよね。貴方のような下等者に名を教える権利は無い、と」

「ふざけるな!お前は何なんだ!答えろ!私を倒す程の力があると言う事はお前は楸ではない!誰だ!」


 おや?急に楸様を心配するような態度ですか。安心して下さい。確かに外から見れば乗っ取っているようですが、こうでもしないといつまでも戦闘が続いてしまうでしょう?だから私が出たのです。


「しつこいですね。何度言えば分かるのですか?死にたいんですか?そこまでして私に殺されたいのですか?」


 暫く私と下等者は睨み合いを続けましたが、下等者は自分の状況を見て睨むをのを止め傍観気味に顔を俯きました。そう、下等者は観念するべきです。最も最初の内に観念しておけば良いものを。


「……あぁ、もう良い。私の負けだ。両腕と両脚が無い状態じゃあお前を太刀打ち出来ない。妖怪ではなく半妖の定めなのだからであろうが、事実上私の負けだ。さあ、私を殺せ、早く私を殺せ」

「そうですか。なら遠慮無く、その身を粉々に砕いてあげましょう」


 そして私は右手で妖術を発動して、その下等者の身を中心に発動しようとしましたが、私の後ろから何かに当てられ、よろけてしまいました。誰ですか、私を後ろから押し倒すなんて、まだ下等者がいるんですか。


「ふざけないで!そんなの!お姉ちゃんじゃない!」

「……は?琳様、一体何を言って―――っ!?」


 その時、私の右の頬に叩かれた感触がしました。


「馬鹿!お姉ちゃんの馬鹿!何でお姉ちゃんじゃない人にやらせるの!」

「琳様、それは致し方がありません。こういう状況になってしまった以上、後戻りは不可能です。確かに体は楸様ですが、私だってあの時本当なら魂にならずに済んだのです」

「お姉ちゃんは約束した筈だよね!お父さんを倒す、と言ったよね!なのにこんな悲惨な倒し方は絶対に嫌だ!」

「琳……?お前、私は楸に殺されても良いと言ったのだぞ?こんな状態じゃあ私はもう長くは持たないぞ?確かに今の楸は楸じゃないが形上は楸の筈だぞ」


 下等者も意外な展開に琳様に話し掛けていますが、琳様はまた意外な事を言ってきました。


「でも嫌なの!こんな形で倒すのは嫌なの!」

「では琳様、私はどうしろと言うのですか?」


 その途端、琳様は私に怒鳴り付けるようにして言い放ちました。


「そんなの!お姉ちゃんに戻れば良いだけじゃん!!」

「え?そんな無茶な事を言っても今更戻れる筈など……あれ……?」


 私は仰向けに倒れてしまいました。嘘でしょう?私の意識が少し遠のいています。まずいです。せっかく私が変わり身で復活を成したと思ったのですが……、ここまででしたか……。またその時までに……。


「……う~ん……、あれ……琳ちゃん……」

「……!!お姉ちゃん!!」


 あれ……?確かさっき琳ちゃんはぐったりしてて私はあの慶紀を倒そうとしていたのですが、いつの間にか琳ちゃん元気になっています。一体何が起きたの?私は姿勢を起こしてみましたら、両腕と両脚の無い慶紀さんの姿がありました。その途端絶句しました。あまりにも無様過ぎていますからね。


「な、な、な、何ですかこれは!?私が意識を失っていた間に何があったんですか!?」

「何だかよく分からないが、その雰囲気だと楸のようだな。まあ良い。知らぬ者に殺されるよりは正直マシだ。お前が意識を失っていて状況が分からないと思うから、この長く持たぬ哀れな身で説明してあげるとするか」


 そして私は意識を失っている間の事を慶紀さんが説明しました。私じゃない者ってまさか!?


「もしかして、私の中の人ですか?」

「……何!?中の人だと!?どうなっているんだ!楸!」

「お姉ちゃんは凄いんだよ!」


 そうなんです。謎の女性の声が響き渡る人が一時的に表に出たんでしょうね。推測ですけど。そんな感じで慶紀さんに説明したら、血だらけの胴体で訝し気に私を見たのですが、どうやら信じるしか無く私に話し掛けました。


「……そうだったのか、流石に翁からそんな話一度も聞いた事が無かったぞそれは……」

「え?翁さんも知らなかった事ですよ?」

「何!?」


 まあ驚くのも無理は無いですね。知らなくて当然だと思いますし、私自身だって分かりません。少なくとも私を知る者は白狐さんだけだと思いますがその状況を見れたのは私の実母と実父だけとか言ってましたね。まあ一度も会った事無いので分かりませんが……。

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