第玖話
翌日になり、私と琳ちゃんと白狐さんの3人で一緒に寝ていました。実際には寝る時は白狐さんが最後に寝ましたけどね。そして白狐さんと出会ってから4日が経過しましたよ。となると明日は両親が以前住んでた家に帰って来るんでしょうね。そして今は妖怪屋敷の寝室にいます。
「ふあ~ぁ……、今日も気持ちの良い朝です」
パジャマ姿の私は琳ちゃんがまだ寝ている内に着替えます。って思ったら白狐さんはいないと思ってちょっと部屋中を見てみたんですけど、どうやら本当にいないみたいですね。そして私は巫女服に着替え、毛並みを整え、琳ちゃんを起こしました。
「琳ちゃーん、朝だよー。おはよー」
「ふぇ……?……、んー……」
「え……?ちょっとちょっと待って!?」
寝ぼけているのか分からないですけど、何故か私を逃がさないようにしてぎゅっと抱き締めて、私の唇に近付けようとしました。
「……お姉ちゃん……おはよーのちゅー……」
「へ!?待って……!んむ!?」
と思ったら案の定普通のちゅーでしたよ。すぐに離しましたし。まあ、ですよね、ちゅー以上考えられそうなのは白狐さんだけですので気を付けなければいけません。変に警戒しちゃってる私もどうかしていると思うんですけれどね。まだ私には早いですし、正直色々とまずいんですのでね。気付いたら琳ちゃんは二度寝してしまったようです。けど今日は確かに日曜日なんですけど起きてもらわないと困ります。
「琳ちゃーん!二度寝しちゃ駄目!」
私は琳ちゃんの頬にぺちぺちと尻尾で軽く叩いてあげました。
「……ふぇ!?あ!……おはようお姉ちゃん」
「やっと起きてくれたんだね……、恐らく食事出来ていると思うから一緒に行こっか」
「うん!ちょっと待っててね!」
こうして行動を見ていると琳ちゃんは相変わらず健気な妹で可愛いですね。癒しになります。そして琳ちゃんは着替えを済ませたようなので一緒に食堂へ行きました。
「えーと……昨日座ってた席はどこかな?あ、あったあった。琳ちゃん、こっちだよ」
「うん!」
まるで私と琳ちゃんの為にあるかのような特等席が何故かあるんです。他の妖怪達も食事をしたりしているんですけども、私達みたいな特等席ではないようです。まあ、席で気にしてても意味が無いので取り敢えず昼食を貰いに行きました。そして台の前に来たのは私に近い感じな年齢で見た目が獣っ娘っぽい感じな女の子が私達に声を掛けました。
「あ!楸ちゃん!お帰りー!おっと……、ごめんね楸ちゃん、嬉しくてつい……」
「あはは……」
「じゃあ楸ちゃん、琳ちゃん。特製の作るからどれにしたいかな?」
この子は見た目は私と同じく肌は人の肌と同じなんですけど、耳と尻尾が違いますね。何と言うか、狼のような耳をしていて、ばっさばさな毛並みの尻尾です。恐らくは狼娘の妖怪なんでしょうね。そして私は琳ちゃんに話し掛けました。
「琳ちゃんは、どれが良いかな?」
「えーっとね、これが良い!」
「どれどれ……」
琳ちゃんが指差した所を見ましたら、人間達で言うお子様セットらしき物でした。うん、琳ちゃんは事実上本当に子供の半妖ですので、全然異議無しですね。
「よし、じゃあ私はこれにしますのでお願いします」
「はいはい!楸ちゃんと琳ちゃんには特別に美味しいの作ってあげるね!」
「はは……、分かりました」
そして調理室に走って行った狼娘でしたが、何でしょう。かなり私には親しい感じでした。もしかしてこれも私が記憶のせいで覚えていないだけの可能性が高いでしょうね。そんな事を考えていたらいつの間にか台に上がっていました。
「どうぞ!楸ちゃん、琳ちゃん!是非特等席で食べてね!」
「あぁ、うん」
「はーい!」
ちょっと対応に困りながらも後にし、トレーを持って私と琳ちゃんは特等席で食べ始めました。
「やっぱりここの食堂は美味しいね。昨日の夜も思ったのだけれど、やっぱりあの狼娘の手料理のおかげなんだろうね」
「うん!あたしはそう思う!」
昨日の夜の時点では狼娘が作ったとかは分からなかったけれど、今日の朝で誰がこんな美味しい料理を作っているのかを把握出来ただけでも私は安堵しましたよ。じゃないとこれから此処に住むのですし、ある意味不便じゃないですかね。
「やっぱり特等席で食べると少し目立つね」
「うん!けどあたしは別に目立っても良いと思うかな」
琳ちゃんはどこまでも純情な性格、私からすればほんとそんな性格は無難で良いなぁと思いましたよ。そして言葉通り、何体かの妖達がチラチラ私達が食べている所を見ていました。ちょっと恥ずかしいですが琳ちゃんはあまりそれを気にしなかったみたいですね。
暫くして私と琳ちゃんは、朝食を済ませ。狼娘に食器を差し出し、翁さんのいる部屋に行きました。そう、まだ私には翁さんに聞きたい事があって来たのです。そして扉の隙間からには白狐さんと奥には翁さんの姿がありました。何やら話している内容は軽い内容な感じがしません。そして私は扉にノックをしました。
「翁さん、入ります」
「おぉ、楸かの。丁度良い所に来てくれた。入ってくれるかの」
「ふむ、楸と琳じゃな」
「はい、分かりました」
そして私と琳ちゃんは部屋に入り、座布団に座り込みました。白狐さんはかなり真剣な顔です。
「では、白狐には伝えておいた上、一旦抜けても良いぞ」
「分かりました。では、我はこれにて抜けておきます」
そう言って白狐さんは部屋から出ていきました。それから翁さんは私達に目をやりました。
「あの後は宴会で終わってしまったからの。すまぬの」
「いえ、大丈夫です。翁さん」
「ふむ、ではそうじゃな。続きの話をするとしようかの」
「是非お願いします」
「うむ、分かったのじゃ。琳の両親についてじゃが、その母の華江を捕らえたのじゃ」
「え……?」
私と琳ちゃんは返事でハモってしまいましたが、でも育ての母が捕らえたってどう言う事でしょうね。
「実はの、以前住んでた家があるじゃろ?」
「はい」
「どうやら昨日の夜中に奇襲して楸と琳を殺す為に家に華江は戻ったそうなんじゃ。じゃが、楸達は今こちらにいるじゃろう?華江はそれ故知らずにいない事に大暴れをしたようなんじゃ。じゃからそれを知った儂達は白狐に頼んでおいて地下牢に閉じ込めて置いたんじゃよ。それ以上の罰を与えるには楸達の判断にしてくれるらしいからの」
「そうなんですか。私達が寝てる間に色々と起きたのですね」
どうやら私達が寝た後に、白狐さんは起きて翁さんの部屋に行き、私達が住んでた家に大暴れしている育ての母親を捕らえて妖怪屋敷の地下牢に閉じ込めたそうです。まあ私にしては何となく察しが付きましたけどね。
「うむ、4日前。楸達が以前住んでた家に白狐が来た意味がやっと分かったかの?」
「はい。何故白狐さんが来たのかは恐らく、金銭問題を抱えてて私達の世話をまともにしなくなった、と言う事ですね」
「うむ、その通りじゃ。じゃからその危機を救う為に、白狐に言ってあげたのじゃ。そしたら白狐は頷きそそくさにその日の夜に行ったようなんじゃ」
「成程……話が繋がりました。大丈夫です」
「うむ、繋がったのであれば大丈夫じゃの」
「はい」
その後、私達は幾つかの大事な話を聞いていました。結構本格的に育ての両親が狂い始めているのは間違い無いようです。




