第捌話
「ふむ……、成程のう」
「お姉ちゃんって凄い能力があるんだね!」
「琳ちゃん、具体的に言うと別にこれは能力ではないんだけどね……」
「ふぅん、そうなんだ」
先程私と白狐さんは接客室に戻って翁さんにその事実を伝えた所、翁さんもその現象については白狐さんと同じく直接見かけはしなかったものの、推測が白狐さんと似ていているようです。どうやら魂となって私の中に入って来たのは本当のようです。でも中に魂が入っているとなると何だか歯がゆいですね……。
「ところで楸。今はどうじゃ?頭に響き渡るとか、そんな現象は起きていないかの?」
「いえ、今は特に何も起きてないですね」
「ふむ、そうかの。まあ、それに関しては追々楸自身が解決させるしかない問題じゃな。それと最後に楸と琳に言うのじゃが……」
「はい、何でしょうか?」
「もう前の所に戻る必要は無い且つ今日から此処に住むと良い」
「え…?」
「お姉ちゃん!良かったね!もうあんな生活は嫌だよ!」
「そ、そうだけど……えっと、良いんでしょうか?翁さん」
私は恐る恐る翁さんに聞いた所、案の定両羽の動作で丸と言う感じでポーズを取りましたよ。
「それとじゃが、琳が半妖と言う事は分かるのじゃな?」
「はい、白狐さんから聞きましたので」
「となれば両親のどちらかが妖怪なのは存じておるのかの?」
「え?」
「ふむ、知らなければ教えてやるとしようかの」
「はい、そうしてくれると有難いです」
そして翁さんはそれについての意味を言ってくれたのですが、それだけではないようでした。
「半妖と言うのはじゃな、人間と妖怪の中間の存在の事を意味しているのじゃよ。例えば母が人間であり、父が妖怪であればその生まれて来る赤子は人間でも無く妖怪でも無く、半妖が生まれると言う訳じゃよ。実際琳は今の例えが事実なのじゃがな。道理で儂の姿を見て何の驚きもしないと言うのも分かるんじゃよ」
「そ、そうだったんですね……」
「お姉ちゃん、半妖じゃ駄目だった?」
うっ……。そんな悲しそうでうるうるしてる顔を私に見せつけたらそんなの良いに決まってるじゃないですかもう。
「いや、琳ちゃんは実妹のような存在だから別に駄目じゃないよ。琳ちゃん」
「わーい!お姉ちゃんなら言うと信じたよー!」
そして琳ちゃんに抱き着かれました。でも、そう言う関係も悪くないかも知れませんね。何せ私と琳ちゃんは本当に姉妹のような存在なのですからね。
「まあ、我からすれば楸は可憐で美少女な妖狐で何と言えば良いのか迷うのじゃが……姉妹の空間割れは良くないからの。我は大人しくしているとしようかの」
接客室に戻ってやっと第一声を発した言葉がそれですか!?……若干、白狐さんが落ち込み気味になりましたので私は、白狐さんのとこに行って寄り添うようにしました。
「む?楸よ?どうしたんじゃ?姉妹との改めての関係はどうするんじゃ?」
「それもそうですけれど、私にとっては琳ちゃんも白狐さんも大切な妖です!」
「ふむ、そうかの。今の我にそう言われると少々照れくさいの。じゃが、楸のその気持ち。有難く頂かせてもらうとしようかの」
そう言ったら翁さんが私に言ってきました。
「楸よ。今真摯な感動で済まないとは思って大変恐縮なのであるのじゃが……、今日は取り敢えず大事な話は此処までじゃ。とにかく楸も戻った且つ琳も来てくれたようじゃしの。お祝いをしようと思っていての……」
翁さんがそう言い終わった途端、真剣な顔が先程の妖怪屋敷に入った時のような顔になり……。お祝いってまさか……?
「……よし!皆の者!入って良いぞ!戻って来た楸とその実妹のような存在の琳を存分に挨拶すると良いのじゃー!」
「やったー!!!」
だと思いましたよ……。そして色んな妖怪がぞろぞろと妖怪が……、おっと、内心が乱れてしまいそうになりました……。普通に見ると可愛い妖怪もいれば人の形をしていない妖怪もいれば如何にも怖い妖怪がいて様々な種類の妖怪が私と琳ちゃんを囲うようにして並ばれました。
「楸ちゃん!改めてお帰り!どうだった!?」
「この子が琳ちゃんって言うの!?初めまして!」
色んな妖怪の喜びの声が飛び交う中私は内装の違和感を感じました。そう、先程までは接客室のような感じの和室が食堂に様変わりしていて私は少々絶句してしまった事ですね。
「い、いつの間に食堂の空間に様変わりに……!?」
「まあ、儂にとっては空間を変えるくらい朝飯前のようじゃが楸にとっては記憶のせいで初めてに感じるのじゃろうの。まあ慣れてしまうのじゃろうが」
そして暫くして沢山の妖怪達はそれぞれの席に座り、まるで宴会のような雰囲気でわいわいと騒がしい状態ですね。私達も席に座っていて、いつの間にか食卓も置いてありました。勿論私の分や琳ちゃんの分や白狐さんの分までありましたよ。
「わあ、とても美味しそうですね」
「うむ、我々妖怪達もこうやって食事をするのじゃよ。我は毎食毎食此処に来て食べている訳では無いのじゃがな」
「そうなんですね」
「お姉ちゃん!これ美味しいよ!」
「え?どれどれ……じゃなかった。琳ちゃん!頂きますもせずに食べちゃ駄目だよ」
「うぅ……ごめんなさい」
そう、この通り琳ちゃんはとても素直なので何をしても自慢の妹で可愛いんですよ。そしたら白狐さんが意外な事を私に言い掛けてきました。
「む?楸よ。ここの屋敷は別に頂きますなどをしなくても良いんじゃぞ」
「え?そうなんですか?」
てっきり私は此処でも頂きますをするのかと思いきや……。そうでした。まだ人間の時の感覚が強い為か癖で言ってしまいました……。
「あぁ……。ごめんね、琳ちゃん」
「ううん。良いのお姉ちゃん。あたしもお姉ちゃんも知らなかったんだから」
何か琳ちゃん、私より頼れちゃう存在になってきているような気がするのは気のせいでしょうかね。まさかとは思うんですがね。まああまり気にしても仕方が無いと思うんですけど取り敢えず私達は食べる事にしましたよ。
「うん、美味しいねこれは!」
あまりの美味しさについ大声で言ってしまいましたよ。ちょっと恥ずかしいですけどね。
「そうじゃろう?何せ、此処は人間の手料理じゃ此処までには及ばぬからの。例え、人生を料理に究めたとしてもじゃの」
「……となると作ってる者は……」
「当然妖じゃよ。人の身であればこんな極上な手料理を味わう事すら出来ぬからの。ほんと妖と言う者は良き者じゃよ」
私はそんな白狐さんの故人が言いそうな名言をあっさりと言われてしまって。ちょっと黙っちゃいましたよ。そんな一面の白狐さんもあるんだなと思うと少々心の片隅に憧れが湧いてきますね。
「まあ我はこう見えて色んな場面を数え切れぬ程見てきたからの」
「白狐さんにとってはどれも大事な物だったんでしょうね」
「うむ、確かに言われればそうなのじゃがな。じゃが、今一番大事な物と言えばこれじゃ」
「何でしょうかね?」
と言われたそばから私に抱き着いて来ましたよ……。琳ちゃんがいるのに……。まあ、そう言う意味なのは十分に伝わりましたけれど。今日はやたら抱き着き過ぎませんかね!?ちょっと!おまけに尻尾まで触られていますし!
「ふぃー、我が言わなくとも分かるじゃろう?こう言う意味なんじゃよ」
「そうですね。けど、そんなにガッツがれると苦しいです」
「おっと、そうじゃったそうじゃった。すまぬの、つい乗ってしまったようじゃ」
「あぁいえいえ、大丈夫です」
そんな感じなやり取りで私達妖怪達は屋敷で宴会を楽しみましたよ。楽しむ時間ってのはあっという間の事でした。




