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断罪相手は人違い?最強婚約者乱入で現場が破綻しました。【出会い編追加版】  作者: 衛星 奏志
断罪相手は人違い?最強婚約者乱入で現場が破綻しました。

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第三話 最強婚約者

最強婚約者登場っ!

 人垣の向こうでも頭半分飛び出す高い身長。


 サッと人垣が割れる。


 ガイウス様が、私の姿を見つけた途端、柔らかく微笑んで、一瞬で距離を詰め抱き上げてくれる。


 太い腕に逞しい体。傷があって尚、凛々しく整ったお顔。衝突が絶えない辺境伯領の守護神で私の大好きな婚約者、ガイウス様だ。


 周囲からは──


「来たのか……」

「来ちゃったよ、最強守護神が」

「そりゃ来ますわ。婚約者の危機ですもの」

「これ、王太子殿下とあの男爵令嬢終わったんじゃないかしら」

「命運尽きたな……」


 などと、囁かれているが、関係ない。

 温かい腕に抱かれて心からホッとする。


「大丈夫か? 手紙をもらってすぐ北方を発ったんだ」

「私のために……お忙しかったでしょうに」

「愛おしいセレイアのためならば、当然のこと」

「優しい御方。ありがとうございます」


 嬉しくなって、その太い首に抱きつく。


「誰だ、我が可愛い婚約者を貶めようとする輩は」


 地を這うような声が響く。場の温度が数度下がった気がする。


「え、あ……いや」


 テオドール王太子殿下は言葉を濁し、周囲が戦く中、ただ一人コンラート殿下だけが冷静に言葉を続ける。


「只今、状況確認中です。ガイウス殿にも分かるように説明と確認を続けてもよろしいでしょうか?」


 コンラート殿下の言葉にガイウス様が頷く。

 未だピリピリした空気を発するガイウス様を宥めるように頬ずりする。


「セレイア・ヴァルネ侯爵令嬢には辺境伯令息であるガイウス殿という婚約者がおり、ご覧の通りその仲は非常に良好だ」


 コンラート殿下は証人達に目を向ける。


「私が調査していた内容だが、まず、セレイア・ヴァルネ侯爵令嬢を見たとの証言だが、階段の上に立っていたのを見ただけで、突き落としたところを見た者は一人もいない」


 証人達はコクコクと頷く。


「また、皆一様に悲鳴を聞いたと言っている。それ以外、例えば階段を転げ落ちる際に体を打ちつけた音などは一切聞いておらず、階段下でうずくまるフランボ男爵令嬢を見た、と」


 訝しむ視線がフランボ男爵令嬢に集まっていく。


「先ほど、テオドール王太子殿下はフランボ男爵令嬢は腕を捻挫したと仰った。しかし、目撃者は足が痛いと言って救護室に連れて行ったと証言している。他の場所は問題なさそうだったと聞いているが、怪我をした場所は腕か? 足か? さらに──」

「もういい」


 テオドール王太子殿下がコンラート殿下の言葉を止める。


「リリー正直に言ってくれ。事件は本当に起きたのか?」

「え……テオ、私を信じてくれないの?」

「もうそういう状況ではないのだ。ガイウス殿がここにいる以上、嘘の報告をしてはならない。君を突き落としたのが、私の婚約者であるセレスティア・ヴァルナ公爵令嬢ではないことははっきりしている。ならば、ならばなぜこの事件は起きたのか」

「た……頼んだのよ! 婚約者の公爵令嬢が、あの侯爵令嬢に、だから……だから……ひっ」


 ゴンと音がした。

 背負った大剣をガイウス様が鞘に入ったまま片手で床に打ちつけた。数人がかりで持つ大剣だ、床は蜘蛛の巣状に凹み、周囲に向かってヒビが入る。


「そこの女。我が愛する婚約者を嘘で貶めようと言うのであれば、俺が武力をもって貴様の男爵家を潰す。そして、それを容認するそこの愚かな王子もだ。心優しい我が婚約者がそれを望まなかったとしてもな」


 私を信じ、私のために怒ってくれるガイウス様を宥める様に逞しい胸をぽんぽんと叩く。


「正直に言っていい、リリー。セレイア・ヴァルネ侯爵令嬢はリリーを階段から突き落としたのか?」


 フランボ男爵令嬢はその場に座り込む。


「いいえ。私が嘘をつきました」

「自作自演だった、ということでいいのだな?」


 コンラート殿下が聞き返すと。


「そうよ! 婚約者の有責で婚約破棄できれば、テオと結婚して私が王妃になれるはずだったのよ! それを、それを、そこの侯爵令嬢が邪魔したせいで……ヒッ」


 無意識に私がガイウス様の服をギュッと握った。その瞬間ヒュンと風が起き、フランボ男爵令嬢の髪飾りが真っ二つに割れカランと床に落ち、留めていた髪がはらりと落ちる。


 王の御前での抜刀は御法度。だが、この場にいた誰一人、ガイウス様の抜刀を見たものはいないだろう。あれほどの大剣、そして私を抱えたままで、起きた風でふわりと私の前髪が揺れただけ。それほどにガイウス様の剣技は常人の域を超えている。


 そして、フランボ男爵令嬢の言葉は誰かが入れ知恵したことを示している。


「お前は王妃にはなれない。我が可愛い婚約者を貶めたこと、後悔させてやる」


 テオドール王太子殿下をガイウス様が睨む。


「あの女に指示したのは貴様だな? 貴様にも責任を取ってもらう。ただで済むと思うな」


 観念したようにテオドール王太子殿下が膝を着く。


 ガイウス様の言葉に周りが戸惑っている。今回の事件にテオドール王太子殿下が関わっていることを示唆したのだから当然だ。


 カズレ男爵令息の様子から、目撃者を用意したのもテオドール王太子殿下だとしたら──


「ガイウス様、私は大丈夫ですわ」

「セレイアは優しいな。愛しいセレイア」


 私の言葉にガイウス様は相好を崩す。

 会場が一気に安堵の声に包まれる。


 しかし、すぐにガイウス様が厳しい目を壇上へと向ける。


「王よ、俺は我が可愛い婚約者を貶めようとしたその女を許しはしない。そして、それに加担する王太子も支持しない。次代の王がそれになるのなら、我ら北方はこの国に従うつもりはない」


 少しの睨み合い。二十近くも歳上の陛下に、ガイウス様は一歩も引かなかった。


「承知した」


 答えた陛下の顔には苦悩が見て取れた。無理もない、ガイウス様が支持しないということは北の国防が機能しないと言うことだ。

 北の国防が機能しない場合、魔獣によってこの国は一月も経たずに滅ぶ。それほどに重要拠点であり、ガイウス様の存在はその根幹を支えるものなのだ。


 それを陛下は誰よりも知っており、ガイウス様に敬意を払う。


 陛下が立ち上がり、周囲が最敬礼する中、ガイウス様とガイウス様に抱えられている私だけが礼をとっていない。

 下ろしてもらおうと顔を覗き込むと甘い顔で返される。下ろしてもらえないようだ。


 壇上の側妃様の顔色もとても悪い。まあ、自分の子の起こした問題と行く末に顔色が悪くなるのも仕方ないことだろう。


 ちなみにコンラート第二王子殿下は王妃様のお子様で、テオドール王太子殿下とは異母兄弟だ。


「面を上げよ。正式な発表は後日とするが、テオドール第一王子の王位継承権の剥奪及び王籍の剥奪、コンラート第二王子を王太子とする。それに伴い、テオドールの婚約者であったセレスティア・ヴァルナ公爵令嬢との婚約をテオドール有責により破棄。また、リリー・フランボ男爵令嬢を虚偽告訴・誣告(ぶこく)などの罪で逮捕する。……二人を連れていけ」

「え? え? 何で? テオ、テオ助けてよ、テオ……嫌、嫌よ。テオーー」


 フランボ男爵令嬢が衛兵に連れて行かれる。

 そして、テオドール殿下もまた別の方へと連れて行かれた。


 テオドール殿下を見つめる陛下の顔には落胆が見て取れた。しかし、それも一瞬。


「さて、セレスティア・ヴァルナ公爵令嬢、セレイア・ヴァルネ侯爵令嬢。二人には大変な迷惑をかけた。セレスティアにはヴァルナ公爵を交えて慰謝料を含め今後のことをまた後日話し合うことにしよう」

「畏まりました」


 セレスティア様がカーテシーで答える。


「セレイア侯爵令嬢は、無関係にも関わらず迷惑を掛けてしまったな」

「いいえ。私は無実ということがわかって頂ければそれで十分です。それに──」


 と、目線が同じガイウス様に目を向ける。

 私の視線に気付くと、厳しい顔をしていたガイウス様の視線が蕩ける。


「こうしてガイウス様に予期せずお会いできたことを嬉しく思います」

「重畳、重畳。王命で成した婚約であったが、そうとは思えぬ程の溺愛ぶり。何よりも嬉しく思う。誰もセレイア嬢が誰かを害するなど思っておらぬ。その必要もないからな。ガイウス殿がこんなにも愛しておられるのがその証拠」


 陛下は目を細めて言い、ホールを見渡す。


「一生に一度しかない卒業パーティーを台無しにしてしまい、皆にも迷惑をかけた。だがまだパーティーは始まったばかり、今あったことを余興とし、パーティーを楽しむが良い」


 陛下が手を上げると音楽隊が音楽を奏で始める。

 コンラート王太子殿下がセレスティア様をダンスに誘い、二人がホールへと出ていく。

 コンラート王太子殿下は婚約者がいない。恐らくこの二人が今後婚約を結ぶのだろう。お似合いの二人だ。


 私はというと、ガイウス様と一度会場を出た。

 控え室に案内され、ガイウス様の準備を待つ間用意されたお茶とお菓子をつまむ。

 しばらくして、扉が開いて現れたガイウス様に、はわわと声がでる。


 王宮が用意した衣装を纏ったガイウス様があまりにも素敵すぎて固まってしまう。

 野生味溢れていた髪は後ろに撫でつけられ、無精髭も無くなり、すっきりとした青年に変わっている。

 恵まれた体に、正装はあまりにも似合いすぎた。広い肩幅も引き締まった腰も、長い足も。全てが完璧だった。


「久しぶりの正装だが、どうだろうか?」

「カッコ良すぎて……言葉が出ません」

「そうか? セレイアも今日は一段と美しいな」


 そう言って、指先にキスしてくるからふらりとよろけると腰を支えられ、そのままエスコートされる。


「では行こうか」

「は、はい」


 ガイウス様のエスコートでホールに戻る。

 扉が開き、中に入った途端ため息で迎えられた。


 そう、私のガイウス様はかっこいいのだ。

 一騎当千の武力が有名過ぎて、普段は武人然としている野生系だけど、正装をした時のガイウス様は世界一かっこいい。


「美少女と野獣かと思っていたけれど……これは」

「ええ、美男美女、お似合いの二人ですわね」


 お似合いの二人という言葉に嬉しさが溢れる。


「ガイウス様、大好きです」


 ガイウス様に屈んでもらい、耳に口を寄せて言うと、


「俺もだ」


 と、お返しの耳打ちが返ってくる。


 魔獣蔓延る北の守護神、最強戦士の婚約者だけど、私にとっては最愛の婚約者です。


王太子とリリーですが、コメントで頂いていた考察が大正解でした。

共謀のようで共謀じゃありません。

婚約者有責で婚約破棄できたらリリーと結婚できるんだがな、チラッチラッ。しめしめリリーがなんか画策してる、俺が指示できる目撃者用意しとくかーくらいの軽い気持ちでやったらうっかり国潰される最強守護神出てきちゃって目撃者寝返って、四面楚歌からのリリーになんとか罪をなすりつけたい……失敗。

二度と、表舞台には出てきません。


コンラートが画策してテオドールが踊った事件だったら怖いっていうコメント頂きましたが、それはそれで面白かったでしょうね。でもセレイアを巻き込んだらぶっ潰す程度にはガイウス過激派ですのでだいぶ命懸け。セレイアがセレスティアに大変お世話になっていて、とかでガイウス宥めたら気に食わないけどその狡賢さは嫌いではないとか言って許しそうな懐の深さはある男です。深いかな?どちらにしてもセレイア次第だな。


次から出会い編です。

ほぼ戦闘です。後半イチャイチャしてますのでお楽しみください。

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