3.ペチュニア①
真弓とは新幹線のある駅で待ち合わせしている。日曜日で混んでいるし、お互いあまり慣れない駅だったので、苦労したが見つけることができた。
「澄玲〜久しぶり〜!会いたかったぁ」
「ほんと久しぶり〜真弓〜!元気そうで良かった〜」
年柄もなくハグで再会を喜び合う。
売店で買い物をしてから、新幹線に乗り込む。
お菓子を食べながら、お互いの近況を話し込んだ。
真弓の息子のこと、姑のこと、チラッと見たテレビに出ていたアイドルに元気をもらったこと。
私の方は康太のこと、仕事のこと、最近あった出来事。
2時間強もあっという間に過ごせてしまう。
今日の夜は寝ずに話し込みそう。
駅を降りて、先に大きいカバンをホテルに預けようかと話していたところに、真弓のスマホが鳴った。
困惑しながら話している…
子供に何かあったのだろうか?…大丈夫かしら…
「澄玲〜、どうしよ…ホテルが、なんか毒の持つクモ?が出てその駆除で、今日泊まれないって…」
私も慌ててスマホでホテルのホームページを見たら、確かにそう書かれていた。
館内で「セアカゴケグモ」が発見された、と。しかも空の卵嚢も。その駆除に伴い一時閉鎖となったらしい。
よりによってなんで今日なの…
「これは…弱ったね…他のホテル……」
言いかけ、周りを見渡す…さっきから思っていたが、ライブがあるようで、着飾った人達がたくさん見受けられる。
真弓と一緒に近くのホテルを探すが、なかなか空いていない。人気のアイドルやアーティストのライブがそれぞれ行われるので、見事に埋まっていた。
なんて日だ…
2人で相談した結果、夜行バスが時間別で1席ずつ空いていたので、それで帰ることにした。
日帰りの新幹線は、財布の紐が許さない。
辛うじて空いていた1つのコインロッカーに、大きいカバンを2人分押し込み、観光をすることにした。
少し遠い神社から巡ることにした。
ほんのり雪化粧の境内が美しく、それだけでテンションが上がる。
せっかくだからと絵馬を書く事にした。
手が寒さでかじかみ上手く書けない…
お互いの絵馬を見せ合い笑いあった。
「なんて書いてるか読めないじゃん!」
「真弓だってなに書いてるかわかんないよ!あと、健康の健?にんべん足りないよ」
「なんか足りないと思ってた!ありがと!」
真弓は家族の健康を。私は子授けを祈願した。
それから商店街、博物館やカフェを巡り、お土産も買いこんだ。
残りの時間はカラオケで、特に歌わずに話し込んだ。
「ねぇ、康太さん気が気じゃないんじゃない?レオくんが現れて!」
「だからなんもないって〜」
「でも、康太さん高校にもバイト先にも澄玲の事、迎えに行ってたじゃん?心配するって」
「そうだけど…もういい大人だし、万が一でもレオくんの事はそういう目で見れないかな〜。異性ってよりは兄さん過ぎるもん」
昔の事や最近の事、ペットをお迎えするか否か、など尽きることがなかった。
ふと、ミモアを開いた。昼に写真を送ったのだが、康太からの既読がまだ無かった。一人の時間をのびのび楽しんでるのであろう。
別に夜行バスで帰ること伝えなくてもいいか…
康太の出勤前に帰れるけど、朝ごはん作れないし、何も影響は無いだろうし。
そろそろいい時間なのでカラオケを出て、荷物を取りにコインロッカーへ向かった。
雪がチラチラ降っていて、寒いけど2人でキャッキャしながらお土産が増えた重い荷物を持ち、待合所へ向かった。
せっかくの楽しい時間があっという間…
「さすがに寒いね、風邪引きそう〜」
「ほんと、今日泊まれたら良かったよね」
「ほんとだよ〜もっと澄玲と話したかったのに…」
「私も話し足りない…こんなに話したのに」
会ってから12時間以上も話している。さすがに自分でも怖い。
「そろそろ時間だからもう並ぶね。今日本当に会えてよかった!」
「私も久しぶりに会えてよかったよ!気を付けて帰ってね!」
「うん!そっちも気を付けてね!またね」
あぁ、別れるのが惜しい…
バス停へ向かい列に並ぶ。ライブ帰りの人達が多い。
バスに乗り込み、充電器や飲み物を用意しておく。
楽しかったけど、さすがに疲れた。
ホテルのベッドで寝たかったなぁ。
車内が暗くなり、真弓の顔を思い出しながら、私はいつの間にか眠りについていた。
ペチュニアの花言葉
『心の安らぎ』
次回、6月3日20:30予定。
お読み頂き、ありがとうございました!
評価頂けると嬉しいです。




