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ベヒーモス  作者: うなぎかご
人形の章
115/124

第115話 戦うシルクの妖精さん

 UPL弾薬庫、ここはUPL戦闘員達の憩いの場所の一つでもあった。

 冷ややかな空調の風が、無骨なコンクリートの壁を撫でるように吹き抜けている。

 金属とガンオイル、そして微かなオゾンの匂いが入り混じるこの無機質な空間で、ミリア・アニエラは、己の愛らしい出で立ちとはおよそ不釣り合いな作業に没頭していた。

 彼女が身に纏っているのは、黒を基調とし、幾重にも重なる真っ白なレースが贅沢にあしらわれた、フリフリのゴシックロリータ服である。

 その柔らかな布地をそっと持ち上げると、可愛らしい外見からは想像もつかない、機能性のみを追求した強靭なバンダリア(弾帯)があちらこちらのスカートの隙間にしっかりと固定されているのが見えた。

 彼女は、一発一発がずっしりと重いACHR(対サイボーグ重量弾)を手に取り、「パチッ、パチッ」と小気味よい金属音を立ててはめ込んでいく。

 指先の繊細な人工皮膚が、鈍く光る弾頭の冷たさを的確に電脳へと伝達していた。


 数時間前、カインから下された次なる任務。

 それは、明日出発し、アイルランド山中へと向かうという過酷なものだった。

 目的地は、約120年前に大規模な噴火を起こし、現在では人が寄り付かない孤島となっているキャラントゥール島。

 そのキャラントゥール山の中腹に、レッド・スコルピオンの極秘研究施設が秘匿されているというのだ。

 ペガサスの情報を元に動いた陸軍情報部第四課からの事前情報によれば、施設は山の中腹を穿つように作られた強固な地下バンカーであり、空爆による物理的破壊は不可能。

 さらに、周囲の警戒網は異常なほど厳重であり、正規軍の強襲部隊ですら内部への潜入は絶望的だという回答が寄せられていた。

 そこでターゲットとなっているのは、現在まさに「新たな神の肉体」へと換装作業中であるという『カプリコーン(山羊座)』だ。


 カインは、パリでのペガサス捕縛任務を終えたランとコンラートが本日の夜に帰還することを見越し、体力が万全であるラズロとミリアの二人に、この危険極まりない潜入作戦の実行を命じたのである。

 そして、その現地バックアップとして同行するのが、通信と解析のエキスパートであるノエルだ。


 任務の命を下された直後のブリーフィングでの出来事が、ミリアの頭の中で何度も、甘美なリフレインとして繰り返されていた。

 フリル全開のメイド服のようなロリータファッションで現れた彼女を見て、カインは明らかに口元をヒクヒクと引き攣らせ、頭痛を堪えるかのように眉間を押さえていた。

 だが、次の瞬間、彼は大真面目な顔で、どこか絞り出すようにこう言い放ったのだ。

『今日も可愛い服だ。ミリア。期待している』


 その言葉を思い出すたび、ミリアの頬はカッと熱を帯び、電脳の液冷機構が出力を上げる。

 「はい! ありがとうございます。カインさん!」と、あの時元気に返事をした自分の声が耳の奥で蘇る。

(やっぱり……カインさんは、こういう可愛い服が好きなんだわ……! クールで無口に見えるけど、内心ではフリルが好きなのね。なら、エージェントとして戦う時も、フリルが付いた可愛い服で完璧な結果を出して見せなくちゃ!)

 彼女は思い込みが激しく、一度信じたら一直線に突き進むタイプの少女だった。

 カインのあの言葉が、彼自身の脳内に居座るアリスからの『ほら! カイン! 褒める! 乙女心を傷つけたら深夜にカーニバルよ!ほらほら』という猛烈な脅しによるものだとは、夢にも思っていないのである。


 当のカインはといえば、自室のヴィラで一人、電脳の中で頭を抱えていた。

(おい……アリス。いくら何でもやっぱり目立ちすぎるぞ。俺たちは隠密行動が基本のエージェントなんだ……あんなヒラヒラの服で戦場に出るのは、どう考えてもダメじゃないか?)

『ひゃっ……! きゅ、急にアリスって呼ばないでよ……!』

 カインが軍人として極めて論理的な苦言を呈したはずなのに、脳内の彼女の反応はまったく別の方向に飛んでいった。

 「アリア」として過ごした時間が長い彼女にとって、「アリス」という自分の本当の名前の響きには、まだ慣れていないのだ。


 それは昨日の夜の出来事だった。

 静寂に包まれたヴィラのリビングで、カインは一人、グラスに注いだ黒ビールをゆっくりと傾けていた。

 電脳空間では、いつものようにアリアのアバターがソファに寝転がりながら足をパタパタとさせている。

『アリス、ねぇ……。カインがそう呼びたいなら、アリスでいいよ。まあ、確かにお父さんとお母さんが付けてくれたはずの名前だしね。記憶がすっぽり抜け落ちちゃってるから、全然実感はないんだけどさぁ』

 少し寂しそうに笑う彼女に対し、カインは心の中の温かな感情を隠すことなく、深く、そして優しく呼びかけた。

(ああ……アリス)

『ひゃっ! か、か、カイン! やめてよ急に、そんな甘い声で! 心臓が持たないわよ!』

(甘くした覚えは無いんだが……)

 どうやら、彼女は「アリス」と名前を呼ばれることにまだ慣れないらしい。

 電脳の視界に映る彼女のアバターは、一瞬で顔を林檎のように真っ赤に染め上げ、ソファの上で猫のように小さく丸まってしまった。

 その愛らしい反応に、カインは思わず口元をほころばせたものだ。


 そんな裏事情など知る由もないミリアは、今日も気合十分で戦闘用ロリータ服の最終調整を行っている。

 弾薬室には、彼女の他にバディとなるラズロと、見送りのために手伝いに来ているほのかの姿があった。


「ねえ、ミリー……」

 ほのかが、手にした予備マガジンをケースにしまいながら、心底呆れたようなため息をこぼした。

「それ……ロリータ服? メイド服? 本当にエージェントとして、そんなヒラヒラでいいの? いくらなんでも無理があると思うんだけど……」

「ガッハッハッハ! ほんとだぜ!」

 傍らで愛用のショットガン『ケルベロス』の機関部を布で磨いていたラズロが、腹を抱えて豪快な笑い声を上げた。

「ま、オマエが好きならそれでいいぜ! 潜入中にスカートがめくれて、敵のサイボーグどもにサービスショットを提供しないようにだけ気をつけろよな!」


「だって……カインさんが『可愛い』って言ってくれたんだもの」

 ミリアは頬を少し染めながらも、真剣な眼差しで二人を見た。

 そして、慣れない崩れた口調を無理やり作り出す。

「だぜ。ラズロ。……ほのかも心配ないわよ。しっかりとカールさんとドクトルFが、この服を完全な『戦闘用』に調整してくれたの」

「「調整!?戦闘用!?」」

 ラズロとほのかの声が、コンクリートの壁に綺麗にハモって反響した。


「ええ、このスカートの生地は、見た目はシルクだけど……アストラ・クリスタル真空蒸着防弾・防刃繊維が編み込まれていて、ACHRの直撃にすら対弾するってカールさんがそう言っていたの。表面なら自己修復もするって。だぜ」

「ウソだろオイ……」

 ラズロが半信半疑で、ミリアの何層にも重なったスカートの端を軽く手に取った瞬間、その表情が驚愕に染まった。

「バカな……! 一枚一枚に……ハニカム紋様が……。ウソだろ……これは……」

「そうだぜ、相棒。スカートの一枚一枚に独立した電磁シールドが展開できる構造になっているのよ。フリルが多重に光ってて可愛いだぜ?」

 ミリアが自慢げにくるりと回ってみせる。

「ウソだろ……多重電磁バリアなんて……ハワイで衛星軌道の陽電子砲を防いだアレじゃねぇのかよ……」


 ほのかは目を丸くして、ガサゴソとミリアのスカートの外側や内側に手を突っ込み始めた。

「ちょ、ちょっとミリー! これ……ラズロさん、ミリーのスカートの中、ホログラムのパニエですよ! 絶対に捲れないし、どんな角度からでも中が見えないように光学迷彩ホログラムが展開されてる!」

「ええっ!? あの変態技術者ども、趣味に走りすぎだろ!」

「それに、スカートの合間合間に……信じられないくらいの数の予備弾倉が仕込まれてるよぉ……。これ、歩く弾薬庫じゃない!」


「主兵装の『シャイニング・ファルコン』は、背中側、腰のハードポイントにマウントしているのよ」

 ミリアが振り返り、腰の背面にカシャリと大口径の銃を収めると、その上に巨大なホログラムのリボンがふわりと展開し、無骨な銃のシルエットを完全に視界から覆い隠した。

「これもあるだぜ?」

 ミリアは再び正面に向き直ると、フリルから覗く左手の甲をスッと前に突き出した。

 一見すると、ただのロリータ服を着た銀髪の少女が、小さくて可愛らしい手を自慢げに見せているようにしか見えない。


「私のお気に入り……ここからレーザー誘導のナノマシンが展開されて、約1メートルの陽電子レーザーサーベルが形成されるの。接触部にだけ局所的な対消滅を起こすように調整されているから、MBT(主力戦車)の正面装甲くらいなら抜ける……『オメガ・メナス』……私は『オメメン』って呼んでる」


「「オメメン?!」」


 ミリアの表情には、得意げでありながらも氷のような憲兵将校の冷徹さが同居していた。

 口角をニヤリと上げたその冷ややかな表情は、到底笑っているようには見えない。

 流れるような銀髪は、弾薬室の蛍光灯の角度によって、神々しい金髪のようにも煌めいて見えた。



 しかし、その中央の生体皮膚が音もなく割け、せり出してきたのは4mm径の陽電子レーザーサーベル形成口である。

 ラズロは呆れ果てて、自身の着ているいつもの使い古されたライダーススーツを見下ろした。

「なぁ……俺がこの格好で、そのフリフリのミリアと一緒に街を歩くの……客観的に見てすげぇ変じゃねえか?」

「大丈夫ですよ、ラズロさん。ちょっとワイルドだけど、可愛い娘を連れて歩くお父さんに見えますって!」

 ほのかが明るく笑い飛ばすと、ミリアも真顔でそれに乗っかった。

「そうだぜ相棒。これからは、パパと呼びますか?」

「パパ!? やめろ、なんか体が痒くなりそうだぜ……! 頼むから、いつも通りラズロと呼んでくれや」

「分かったぜ、相棒」


 ふと、ミリアが気になったように周囲を見回した。

「そういえば、今回、マリアンヌさんは居ませんよね? コンラートさんとランさんをパリから連れて帰ってきたら、そのまま私たちを乗せてすぐにアイルランドへ飛ぶのかと思っていました。それだと、マリアンヌさんの負担が大変すぎません?」

「ああ、カインは最初そう指示したんだがな。オレが『マリアンヌは休ませろ』って直訴して、作戦を変更してもらったんだ」

「そうだぜ。ほのか」

 ミリアもラズロの言葉に深く頷く。

 マリアンヌの疲労は、見なくても予想がつく。

 カインはそれでも『蠍の情報網』を警戒してマリアンヌに頼ろうとしたのだ。


「じゃあ、今回はどうやってアイルランドまで行くの?」

 ほのかが小首を傾げると、ラズロが壁の電子マップを指差して説明を始めた。

「今回は、択捉から海軍の潜水艦に北海道地区まで送ってもらう。そこから小樽へ出て、大陸横断鉄道の一等車に乗り込むんだ。目的地まで三泊四日の旅だ。ノエルに『チケットは足がつかないように現地で現金で買え』って言われてる。万が一にも、『蠍』の耳目に引っかからないようにな」

「ふぅーん……。そういえば私、大陸鉄道って乗った事ないかも。いいなぁ、私が行きたかったな。車窓からの景色とか、きっと綺麗なんでしょうね」

「ダメよ」

 弾薬室の自動扉が開き、小型のスーツケースを手にしたノエルが静かに入ってきた。

 彼女のヒールの音が、冷たい床にコツコツと響く。

「ほのか……あなた、あの複雑な路線の乗り継ぎを間違えたら、大変なことになるのよ」

「乗り間違えないよぉ。ノエルさん、失礼しちゃうんだから!」

 唇を尖らせるほのかを見て、ミリアは思わず素でクスクスと笑い声を漏らした。

「ふふっ……ほのかなら、オベントウに気を取られて絶対に間違えそうだわ」


「小樽は、ユーラシア大陸鉄道東端の巨大なハブステーションよ」

 ノエルがホログラムで路線図を展開し、赤い光点でルートを指し示す。

「通常ならモスクワ、オスロを経由する北回りルートがアイルランドへの最短だけれど、今は、あの辺りは『蠍』の傀儡政権による紛争地域よ。違法サイボーグ集団による列車強盗や、重火器を使った襲撃も頻発しているから、エクスキューショナーが警乗しているくらいなんだから!危険すぎて避けた方がいいわ。だから今回は、北京からテヘラン、ベオグラードを抜け、パリ経由でロンドンへ入る南回りの長距離ルートを取るの。くれぐれも、間違ってマドリード行きの特急なんかに乗っちゃダメよ」

「まあ、その辺は俺に任せておけ。時刻表くらい読めるさ」

 ラズロが胸を叩く。

「あのねぇ……時刻表ってどこの田舎よ……」

「でも、何でわざわざ鉄道なんですか? 軍の中の蠍のウォッチャーが沢山いて危ないのはハワイの件で分かりましたけど、飛行機や船という選択肢は?」

 ミリアが当然の疑問を口にする。


「船は流石に時間がかかりすぎるわ」

 ノエルは首を横に振った。

「もし、UPLがペガサスの供述を知ったと分かれば、蠍も警戒して逃げたり対策したりするわね。時間は惜しいの。かと言って航空機は、武器弾薬とか、私の持ち込む機密の暗号通信オペレート機材……これらを機内に持ち込むのは不可能だわ。それに貨物室に預けて手元から離すわけにはいかないもの」

 ノエルは手元の端末を操作し、列車の内装写真を映し出した。

「だからこそ、検査が比較的緩く、プライバシーが保たれる大陸鉄道の一等車両なの。六人部屋のスイート個室を貸し切るわ。防音は完璧だし、何よりサイボーグ用のリブートシステムが備え付けられた特別寝台があるのが決め手ね。長旅でもコンディションを万全に保てるわ」

「えええ! なにそれ、すごく楽しそう! 旅行みたい! 私も絶対に行きたかったなぁ!」

 ほのかが、本気で悔しそうに頬を大きく膨らませた。

「貴女はリーダーのカインを支えなきゃいけないでしょう?」

「そっか、カインさんとずっと一緒か……ならいいや」

 その日の夜。

 作戦を終えたランとコンラートを乗せたヴェノム・ワイバーンが、カトラ基地の地下三階層のハンガーへ無事に帰還した。

 深夜にも関わらず、明日(厳密には三時間後)の出発に備えてすでに仮眠に入っていたラズロ、ミリア、ノエル以外の全員が、エントランスへ出迎えに出ていた。


「ご苦労だった、二人とも。いい成果だった。ゆっくり休んでくれ」

 カインが、労いの言葉と共に二人を迎える。

 ドクトルFが「ほれ、疲れた体には甘いものが一番じゃ」と笹の葉に包まれた緑色の草団子を差し出し、カールが「こちらもどうぞ」と上品な箱に入ったカスタードたっぷりのシュークリームを並べる。

 そして、ほのかがたまごクマちゃん大佐の付いた急須で淹れた、温かく香ばしいほうじ茶の湯気を立たせた。


「おいおい、いくらなんでも夜中だよ……」

 コンラートが苦笑しながらも、差し出されたほうじ茶のカップを受け取る。

「ほのかちゃん……しかし、美しい君が心を込めて淹れてくれたお茶となれば、飲まないわけにはいかないね。その少し眠そうな目も最高にキュートだ……どうだい?これからボクのヴィラで生バラの……」

 コンラートがウィンクを飛ばしながら、甘ったるい声でほのかに顔を近づけようとした、その瞬間だった。


 ――ガンッ!!


 重く、乾いた破壊音が深夜のエントランスに鳴り響いた。

 コンラートの後頭部に、ランの容赦のないハイキックが完璧な軌道で炸裂したのだ。

「お嬢! 痛い! 頭の形が変わるわ!」

 コンラートがほうじ茶をこぼさないように必死にバランスを保ちながら、涙目で抗議する。

「チタンセラミック化複合スケルトンパーツでしょう? コンラート。私が本気さえ出さなきゃ、ちょっと凹むくらいで済むわよ」

「本気なら……どうなるっていうんだい?」

「首が取れるわね……あるいはスイカみたいに割れるかも。アンタねぇ……」

 ランの切れ長の目が、絶対零度の吹雪よりも冷たく細められた。

「プロポーズ、受けてやったのに、目の前でほのかを口説くとかナメてるの?」


「「「ええええええええええええええ!!」」」

 その場にいたドクトルF、カール、ほのか、そしてカインの四人の声が、完璧なユニゾンを描いて基地内に響き渡った。

『ええええええええええええええっ!?』

 さらに、カインの電脳の中で一部始終を聞いていたアリスの絶叫が、カインの脳髄をビリビリと震わせた。


「ど……どういう事ですか、ランさん!?」

 ほのかが、持っていたお盆を落としそうになりながら詰め寄る。

 ランはふいと顔をそらし、椅子に腰掛けてスリットから覗く脚を組み替え、左手の薬指をスッと持ち上げた。

 そこには、基地の照明を反射して控えめだが確かな輝きを放つ、美しいダイヤモンドの指輪が光っていた。

 彼女の白い頬は、ほんのりと赤く染まっている。


「ラン……! 僕のハニー……!」

 コンラートが感極まった顔でランを抱きしめようとした瞬間。


 ――ウゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

 突如として、基地全体を揺るがすようなけたたましい非常サイレンが鳴り響いた。

「全員、伏せろ!!」

 カインの怒号とほぼ同時に、頭上の分厚い防壁のさらに上、地表付近で凄まじい爆発音が轟いた。

 ドォォォォン!! という衝撃波が、地下数十メートルにいる彼らの足元までビリビリと伝わってくる。


「なんだ!? 敵襲ですか!?」

 カールが即座にコンソールへ飛びつき、外部センサーの映像をホログラムで展開する。

「上空に熱源反応!……撃墜された所属不明の戦闘機ドローンです! UPL警護役独立憲兵隊が迎撃しました!」


「チッ、蠍か……発見されたのか……?それとも偵察か……」

 カインは即座に状況を分析し、すかさず全員を基地の堅牢な区画へと誘導する。

「ラズロとミリア、ノエルを起こせ! 予定変更だ。カール!独立憲兵隊のLz-C装甲車両をD2ハッチへ呼べ。三人は別ルートを使って、確実に任務につけ!」


 それぞれの電脳と、ヴィラに備え付けられた緊急通信機から、カインの冷徹な指示が流れる。

 祝福と驚愕に包まれていた平和な空気は一瞬で吹き飛び、UPLの戦士たちは再び、硝煙と死の匂いが立ち込める過酷な戦場へと、それぞれの武器を手に駆け出していった。

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