表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウチの母ちゃんが25年前に書いた小説見つけたったwww  作者: 征彌
第3部 復讐はすでに始まっていた
210/210

210. UCK25外伝 父ちゃんの上の弟

 リアルで進行中のPCのゴタゴタのせいで、現在、この小説は何と

「本来の俺パート」

「俺が勝手に書いている「母ちゃんの小説」の続き」

「時間つなぎに書いている「俺パートの外伝」」

の3本立てになってしまった。


 実にカオスだはwwwww


 で、今は外伝で俺の父ちゃんサイドの家族について書いているところだ。


 まあ、母ちゃんについてあれだけ掘り下げたのだから、いずれ父ちゃんのこともある程度書いてバランスを取っておくべきだろうと前々から思っていたので、今がちょうどいい機会なのかもしれない。

 しかし何というか「家」の存在が何よりも大きい母ちゃんたちに対し、父ちゃんのほうはまず「個人」ありきなため、書こうとするとどうしてもひとりひとりをクローズアップすることになる。

 好むと好まざるとに関わらず。



「前に来てから276日。そんなにもなりますか」


「そうだよ」

 次郎オジはちょっと眉間にしわを寄せた。

 相づちのつもりで言っただけなのに、俺が記憶を疑っていると思ったようだ。


「あのとき雄司くんは学校の帰りに寄ることになっていたが、電車の乗り換えを間違えたと言って約束の時間より44分遅れてここにきた。まだ暑いのに秋物の服を着ていたね。あの日の最高気温は27度、雄司くんは茶色の長袖のシャツとコーデュロイのズボンで、ズボンが擦れる音が廊下の向こうから聞こえたよ。走ってきたとかで、すごく汗かいてた。でも、ぼくが水をすすめても飲まなかったな。そしてぼくが学校のことを聞いたら、雄司くんは持ってきたお土産を……」


「今日も持ってきました」

 次郎オジがしゃべりだすと同時に俺は肩にかけていたデイパックを開け、中から紙の包みを取り出すとタイミングを見計らって次郎オジに押しつけた。


「ありがとう」

 眉間からしわが消えた次郎オジの顔を見て俺は内心ほっとする。

 普段はそこまで似ているように思わないが、不機嫌な表情の次郎オジは父ちゃんそっくりになるのだ。 

 いつもビジネススーツの父ちゃんに対し、黒の上下に白衣をはおっている次郎オジはかけている眼鏡のレトロな丸いフレームもあって実際の年齢よりも若く穏やかそうに見える。

 ……表面的には、な。


「あ、いつものチョコレートだ」

 次郎オジは丁寧にテープをはがして中身を見て言った。

「ありがとう。ぼくはチョコレートはこれしか食べないから、助かるよ。雄司くんは6歳のとき初めてぼくの職場に遊びに来たときからぼくの好物を覚えていてずっと持って来てくれるね。感心かんしん」


 何が「感心かんしん」だ。


 自分が6歳だったかどうだか覚えてないが、たまたま俺が選んだチョコレートが次郎オジの好物というだけである。選んだ理由だって「単に包み紙に描いてあるゾウの絵がリアルでカッコよかった」と思ったからにすぎず、俺が選んだのがベルギーの高級チョコで、どの店でも売っているワケでもないと分かったのはその後何回か次郎オジのところに行くようになってからだ。 

「好物を覚えていた」のではなく「それが好物と分かってしまったため、おかげで毎回切らさず持って行くハメになった」が正しい。

『いつもあげるものが決まってるとお土産を考える手間が省けて便利ではあるけど、次郎さんの場合は一度気に入ったら、その後は絶対にソレじゃなきゃダメ!になっちゃうからねぇ』

 おまけに高いし〜、と母ちゃんがブツブツ文句を言いつつ買うのも恒例になった。


「いただきます」

 さっそく銀紙ごと包み紙を剥いて次郎オジはチョコレートを食べ始めた。


 部屋にこもってチョコレートを食べる研究者、とくれば「デブだろ」と思われそうだが、次郎オジは太っていない。

 それどころか、体脂肪があるのかも怪しいほど痩せている。

 どれぐらいすごいかというと、自力で体温が保てないため1日に最低3度はシャワーを浴び、シャワーを浴びていないときは熱いコーヒーをひっきりなしに飲んでいるくらいだ。

 次郎オジは、研究室に詰めている間は今のようにごく少量のチョコレートと大量のコーヒーで生きており、それ以外のものを食べるのは研究所近くに借りている自分の部屋に戻ったときだけだ。

 食性が極端に偏っている上、食材や調理法にもこだわるため、出来合いどころか外食も受けつけないためである。



 ずっと昔、どういう理由でかは知らないが、次郎オジが一週間ほどウチに滞在したことがある。

 家に来た彼がまっさきに何をしたかというと、冷蔵庫を開けて中に入っていたものを全部出し、代わりに自分が持って来た食料を詰め込んだのだった。

 それを知らずに後から冷蔵庫を開けた俺は中を見て腰を抜かしそうになった。

 冷蔵庫の中は全部の段が緑で埋まっていた。

 しかも、キュウリやピーマンなど身近なものでなく、野菜と言うより野草と呼ぶべき見たこともない植物しかなかった。


 次郎オジは、肉や魚はもちろん卵も乳製品も摂らないヴィーガンと呼ばれるベジタリアンの中でもかなりエクストリームなタイプで、蒸した野菜と豆にタヒニとかいうゴマのソースをかけて食べ、自分でミキサーにかけて作った野菜ジュースを飲み、嗜好品のコーヒーとチョコレートもブラックのみと徹底している。

『雄司くんも食べてみる?』

 断っては悪いと思い、俺は次郎オジが作った蒸し野菜を一口だけ食べたが、味はなく、代わりに口の中がアクでえずえずしたので涙目になりながら無理に飲み下した。


 そして滞在中、次郎オジはずっと同じメニューを繰り返した。

 気を利かせた母ちゃんが菜食レストランを見つけて探して夕食にそこに連れて行ったが、次郎オジはメニューを見て首を振り、俺たちがしぶしぶ肉抜きの料理を食べる様子をブラックコーヒーを飲みながらニコニコながめていた。

『ケツに打つんだとよ、ケツに』

 父ちゃんによると、次郎オジは体温が保てないばかりか栄養、特に肉を摂らないため鉄分が慢性的に不足しており、月に1度注射で人工的に補うとのことだ。


 信じられないのは、ここまで過酷な食生活をしていながら次郎オジには体質や宗教的な背景等、ベジタリアンでなければならない必要性が全くないことである。

『ただなんとなく、かなぁ』

 水で流し込むようにしてやっと野菜ばかりの料理を食べ終えた俺がベジタリアンになったワケを聞くと、次郎オジはそう答えた。



 チョコレートを食べる次郎オジを横目で見ながら俺は嗅覚を元に戻してみた。

 ありがたいことに、カカオの濃厚な香りの膜に遮られ桜の木の皮のニオイはうっすらとしか感じない。


 言っておくが、普通、人間のにおいは桜の木の皮など連想させない。

 ここまで空気が澱んでいたら、獣脂を鼻の中に直接詰め込んだようになる。

 これは肉を断ち体質を限りなく植物に近づけた次郎オジが同じく植物から作られた紙と「同居」することによって初めて発生する異臭である。


 チョコレートがなくなる前に用件を済ませないと。

 俺はバッグからビニール袋ごと2つめの包みを取り出した。

「それから、これも」


 袋にプリントされたロゴを見て次郎オジが声を上げた。

「えっ、○○○ミュージアム、行ってきたの!?」

「いえ、お台場に行ったときにグッズ売ってる店があって……」


 次の瞬間、骨に直接皮を貼ったような痩せた手が伸び、袋を握るやいなやシールを剥がした。


「あっ、新しく出たヤツ!! 欲しかったんだっ!」


 次郎オジの学者以外のもうひとつの顔。

 それは○○○のキャラクターグッズのコレクターである。


 次郎オジは小さいころからぬいぐるみが好きだったそうだが、学生時代に○○○のアニメに出会ってから一気に拍車がかかり、今では手に入るかぎりのグッズを集めている。

 具体名を出すといろいろ面倒なので伏せ字にしておくが、○○○は、まあ、アニメで一般的に最も知名度があり、かつ無難とされているブランドだと思ってくれていい。

 ちなみに、次郎オジのデスクの上にあるコーヒーが半分ほど入ったマグカップも、今履いているスリッパにも○○○のキャラクターの顔がでかでかとついたシロモノだ。


「いいよ〜、この子の肌触り〜」

 袋からつかみ出したぬいぐるみに無精ヒゲがまばらに伸びた頬をジョリジョリと擦りつけうっとりと目を細める次郎オジを見て、俺は一歩、後退した。


『やっぱり血は争えないねぇ』

 俺が自室の本棚にフィギュアを飾り始めたとき、母ちゃんは次郎オジを引き合いに出した。

 同類。

 そう言いたかったようだ。


 だが、俺は次郎オジとは違う。 

 俺にとってフィギュアは二次元における俺の「嫁」を三次元に留めおく神聖な器で、そのなめらかなPVCの肌を俺の皮脂で汚すなどという行為は絶対にありえない。


 一方、次郎オジにとってのぬいぐるみは。


 デスクの脇に小型の金属製のキャビネットがある。

 きっと助手が拭いているのだろう、その上にはほこりは積もっておらず、カギだの眼鏡ケースなどといった次郎オジが日常的に使う小物が並ぶ。

 その中に、何やらボロぞうきんらしき布のかたまりがある。

 それが、次郎オジの最初にして最愛のぬいぐるみ「ふわふわうさぎ赤ちゃん用」の成れの果てである。


 次郎オジは新しいぬいぐるみを手に入れると、狂喜して撫でさすったり頬ずりする。

 しかし。

 あと数分もすれば次郎オジはそれを止め、新しい収穫を所定の場所へ移す。

 そして二度と触らない。


 次郎オジのアレはぬいぐるみへ愛玩行為ではなく「スキャニング」なのだ。


 目で見、手で触れることで色、サイズ、素材を、とどめに頬ずりで繊細な触り心地とにおいを認識して情報として脳にインプットする。

 それが済むと、いつでも脳から記録を呼び出し映像や触感を追体験できるので、もはや本体を手元に置く必要はなくなる、というワケだ。


 俺はチョコレートのにおいの勢いを借り、恐るおそる天井を見上げた。

 本と書類で築き上げられた壁が視界をかすめる。


 過去に建物全体の清掃を請け負う業者が作業中に壁を一部倒壊させるという「事故」が起きあぶなく大惨事になりかけて以来、堆積された本と書類は要所要所支柱と金網で補強され、ちょっとぶつかった程度では崩れなくなった。

 そして、壁の上には。


 俺はあわてて目をそらした。

 だが、いくら詮索を止めようと目に焼き付いた像は消せない。


 無数のいびつなボール状の物体が部屋の入り口から整然と並ぶ。

 大小さまざまだが、みな一様にくすんだ灰色をしている。

 灰色なのは、ほこりが積もって元の色を覆い隠しているからである。

 積もっているだけでなく、クモの巣にこびりついてだらーっと垂れ下がっていたりもする。


 それらは次郎オジのぬいぐるみの成れの果てだ。


 次郎オジは高速でスキャニングし終えるとぬいぐるみを壁の上に載せていく。もう壁に直接置くスペースはなく、今はすでに置かれたものの間に新しいぬいぐるみが頭を突き出すように積んである。


 数年前に地震が起きたときに、ぬいぐるみが全部壁から落ちたことがあったという。幸い材質が柔らかかったのでケガ人は出なかったが、区別がつかないほどほこりまみれのぬいぐるみを次郎オジに言われたとおり壁の上の元の場所に前と同じ状態で並べていく作業を手伝った助手は後にPTSDを発症して研究室を去ったそうだ。 

 伝え聞いただけで実際にその場に居合わせたのではないが、次郎オジはそれぞれのぬいぐるみの位置と置いてあった場所を正確に覚えており、作業の間じゅう平板な声で取得年月日・寄贈者から始まるぬいぐるみの個別データをつぶやいていたという。


 食性だけでもじゅうぶん特殊な次郎オジだが、最も常軌を逸しているところはその記憶力である。

 どれだけすごいかというと、あの父ちゃんをして「アイツは化け物だから」と言わしめるほどで、それこそ物心ついたころからの出来事を委細漏らさず全て覚えているため家族と住んでいたころは歩くハードディスクとして重宝されていたとのことだ。


 言い忘れていたが、次郎オジはぬいぐるみだけでなく壁を構築している本や書類の中身も全て覚えていてそらんじることができる。


 つまり「壁」は次郎オジの脳にあるメモリーのごく一部を具象化したものなのだ。


 次郎オジのデスクの上にはPCがあり、現在も稼働中だ。しかし次郎オジはそれを公式文書作成とネットサーフィンに使うだけで、手渡された書類は目でスキャンし自分の頭のほうにセーブしている。そして用済みになった書類を次から次へと室内に積み上げるから、結果的に高くそびえ横にうねうねと続く壁ができるのである。


「じゃあ、僕、クリニックでサンプルを取ってもらうんで、そろそろ……」

「ああ、うん」

 ぬいぐるみのスキャニングに余念のない次郎オジを見ながら、俺は二歩三歩と出口に向かって後ずさった。


 親戚の職場に用事があったら寄ってあいさつをするのは当然だろう。

 しかし、次郎オジの場合はそう簡単にはいかない。


『次郎さんの話につき合うと延々終わらないから、お土産に気を取られているスキにおいとま(・・・・)するのよ』

 俺が家を出る前に母ちゃんは包みを渡しながら言った。

 なんでも、母ちゃんが次郎オジに初めて会ったとき、次郎オジはあいさつ代わりに125代の天皇の名前と在位期間を元号込みで暗唱し、母ちゃんが驚いて見せると今度は順々に中国の王朝・英国王・ローマ法王の名前を挙げていき、その後はずっと円周率を唱えていたらしい。

 そして同行した父ちゃんが「時間のムダだ! 残りはひとりで勝手にやってろ!」とブチ切れたため、ようやく放免され帰れたとのことだ。


 こんな叔父だが研究者としては優秀で、学生時代にはショウジョウバエ(繁殖しやすく、かつライフサイクルが短いため、多世代に渡る遺伝研究にはもってこいだとか)の交配実験で使われた個体の記録を全部記憶していて担当教官を驚愕させたという逸話を持つ。

 そして研究所も彼の功績を評価しているため、人間的にいろいろアレなところには目をつぶり、部屋を与え他の人々から隔離しつつ研究を続けさせているというワケだ。



 ところで。

 俺が三郎オジの親子鑑定用のDNAサンプルを提出しにわざわざここに来なきゃならないのはおかしいよな。

 棟が分かれているとはいえ、兄である次郎オジが研究所に勤務しているんだから。

「実の兄弟のDNAのほうが甥のより精度が高いはずだ」

 誰だってそう思うだろう。

 俺だってそう思うし、実際にもそうである。


 こんなめんどくさいことになっているのは、そもそも次郎オジが自分のDNAサンプル提供を拒否しているからである。


 研究者として公正な立場をとるために?

 いや、違う。

 次郎オジが三郎オジをめちゃくちゃ嫌っているからだ。


 なんでも、次郎オジが博士課程にいたころ学会発表用のスライドを作っていたときに絵心のある三郎オジにイラストを頼んだら、タイトル画に「トイレの落書きシンボル」をデカデカと描かれ、それが学会でバーンと映し出されてしまったという一件があり、それ以来不仲なのだそうだ。

(三郎オジはジョークのつもりだったが、次郎オジは素でトイレの落書きが何かを知らず、ただの幾何学模様と思ってそのまま上映したらしい)

 これは俺自身が三郎オジから自慢話のひとつとして聞いたから事実だと思う。



 次郎オジの研究室から一歩出ると後はスイスイと事が運び、俺は母ちゃんにことづかったとおりクリニックでDNAサンプルを取ってもらい夕方には研究所を離れた。

 DNAと聞くと、何となく血を採られるんじゃないかと思ったが、針は刺されず、代わりにスワブスティックと呼ばれる綿棒の大きいヤツで口の中をずりずりこすって粘膜を採取し、それで終わりだった。


 思ったよりあっけなかったは。


 結果は2週間ほどで分かるとのことだが、俺の役目はサンプル提出までで、受け取るのは三郎オジだそうだ。


 果たして俺にまた新しい従兄弟だか従姉妹だかが出来るのか?


 三郎オジが認知をしたとしても、きっと俺とそのイトコたちが会う機会はたぶん一生ないと思う。

 ほとんどが国外、しかもとんでもない辺境だからな。


 だが、俺が異性に対してなにも、ひなこちゃんに気の利いた言葉ひとつ言えずに悶々としている一方で、世界のどこかでは今も三郎オジによって俺と(ある程度)同一のDNAがバラまかれ、着実にその地に根を広げつつあるのだ。


 そう思うとなんか複雑な心境だは。 


ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー  

(携帯だとあとがきが見えないらしいから本文に書いとくは)

 ↑ これもずっと続けてるが、本当にそうなのか?


 今回の話を書き始めてから終わるまでの間に、ようやくPCを修理(というよりは解体)に出したった。

 うまくいけば週末にはデータのリカバリーが完成する予定〜。

 受け渡ししてから今まで何も連絡が来ないから、きっと不具合はなかったんだと思う〜。 

 なんか肩の荷が下りた気がするはwwwww


 しかし、問題がひとつ。


 ずいぶん長いことコレを書いてなかったもんで、すっかり小説の書き方を忘れていた。

 今回こんだけ書くのにいつもの数倍時間がかかったは。


 PCが完全復活したら俺も本気出さないとなwwwww

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ