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ウチの母ちゃんが25年前に書いた小説見つけたったwww  作者: 征彌
第3部 復讐はすでに始まっていた
209/210

209. UCK25外伝 フェルトの原料

 PCの続報。

(なんだか迫真のドキュメンタリーと化してるな、ここ(笑))


 やっと、割合近場でお手頃プライスで旧PCから情報を取り出しーの新PCに情報を入れーのしてくれる業者を見つけた。


 しかしその業者に頼む場合、俺が家に居て立ち会わなければならない。

 俺じゃなくても母ちゃんでいいだろ、と思ったが、母ちゃんは自分はコンピューターに疎いから俺も一緒に居ろと聞かない。

 以前エアコンだか洗濯機の修理だかを頼んだら全然直ってなかったことがあって、それがトラウマになっているらしい。


 でも、PCを前に俺と母ちゃんが並んでいると、どう見ても「親に付き添ってもらっている不肖の息子」なので、業者が来るときはやっぱり俺ひとりで対応しようと思う。


 あー、それにしても。

 PCがやられてからもう二ヶ月近くになる。

 あの瞬間には血の気が引いたが、けっこう人間は「記憶」なしでもやっていけるもんだな。

「事故で脳の半分がふっ飛んだが、機能に影響せずそのまま普通に生活している」などというニュースを読んだことがあるから、バックアップなしのPCの中身がふっ飛ぶぐらいどうということもない。


 そう考えておく。

 万が一、本当に情報が取り出し不可能の場合に備えてwwwww



 ところで。

 みなさん(← って誰だよ)は親にウソでだまされたことがあるだろうか。

 俺はほとんどなかったと思う。 


 ウソをついてはいけない。

 当然、親は子供にそう教えるだろう。

 しかし、俺のウチの場合それが極端で、普通の家庭なら許容されそうなウソすら存在しなかった。


 あれだ。

 俗にいう悪気のない「ホワイト・ライ」というヤツ。親が子供の年齢に合わせてそれらしい話をでっちあげて納得させ、答えを先送りにするときによく使う。

 ウチにはそれがなかった。

 たぶん教育方針というより、親の性格によると思う。

 だからその分、俺は「サンタクロースの存在」のように成長するにつれてじわじわ真実が分かっていく経験は他の子とくらべて少なかった。


 だが、さすがにウチの親も俺に「赤ちゃんはどこから来るの」と聞かれたときには手こずったらしく、言葉で答える代わりに視聴覚教材の力を借りた。

 そして俺は小二にして赤ちゃんの謎を理解したのだった。

「花の受粉」と「メダカの産卵」によって。

 まあ、高校の生物の授業用ビデオにそれ以上のエロは期待できないわなwwwww


 しかし、だ。

 知識としての習得はウルトラ早期だったかもしれないが「知った」ことに満足した俺はそこでさらなる追求をせず、普通の小学生生活を続けた。

 中学生生活を、高校生生活を。

 で、現在に至る。


【結論】早期の知識習得は実践に何ら影響を与えない。


 どうやら、ウチの親のせっかくの努力も無駄になったようだwwwww


 ウチの親はウソをつかない。

 そう思い込んでいるから、何かひとつでもウソを見つけたときのダメージは大きかったりする。



「三郎オジがまたヨソに子供作ったらしいから、従兄弟鑑定用にDNAのサンプルを提供して」


 母ちゃんの依頼を受け、俺は東京某所のとある建物に来た。

「あの、僕、その、○○三郎の件で、その……」

「あ、甥御さんですよね。予約、入ってます」

 受付にはすでに話が通っていたようだ。

 しかし。

 次に続く言葉に俺は硬直した。

「先に研究室に寄ってください。叔父さま、さっきからお待ちかねですよ」


 ……くそ……。


 ここは研究施設で、受付から右が外来向けのクリニック、左が研究棟になっている。そして研究棟にはラボと研究者用の個別のオフィスがあって関係者以外は一応立ち入り禁止になっている。

 だから俺は、右に直進してサンプルをドロップし、母ちゃんからことづかってきたブツを受付に渡したらさっさと退散するつもりだった。



『フェルトっていう布があるでしょ。あれ、何でできてるか知ってる?』


 研究室は、俺の記憶が確かなら棟内を何度か移動している。

 最初は上の方の階で、それからだんだん下の階に下りてきた。位置も、エレベーターに近い中央から移動ごとに徐々に奥に進み、現在は1階のつきあたりにある。何でも研究室の中では1番広い、とのことだ。

 どの階だろうと、どの位置だろうと、俺はあの部屋が「広い」と感じたことは一度もないが。


『普通の布は糸を織って作るものよね。だけど、フェルトは織ってないの』


 廊下を進む間にいくつものドアの前を通り過ぎた。

 研究室のそれぞれのドアには研究者の名前が手書きで書かれたアルミのプレートが差し込まれているほかは外から見ると全部同じに見える。

 少しでも目的地にたどり着く時間を遅くしようと俺はひとつひとつのネームプレートをじっくり見た。

 名前は苗字だけで、書くのに使われた黒マジックといい、無造作な筆跡といい、いかにも臨時の場所という印象がある。

 あるいは。

 できるだけ早くここから離れたいという研究者たちの願望が字に現れているのかもしれない。


『均等にならした繊維に圧力をかけて布の形にするんだって』


 苗字だけのネームプレートの羅列が尽きたところで廊下は終わり、もうひとつのドアが姿を現した。

 そこにも他と同じアルミのネームプレートが差し込んである。

 ネームプレートは何年も使い回して黒ずみ、書いてある字もかすれていて遠目では読み取れないが、俺はわざわざ近寄って見たいとも思わない。


 その部屋の主の書く字は独特なクセがあるからだ。

 クセというか……。


 普通に漢字で書いてあるはずなのに、その字を見ると思考が止まってしまう。

 1字2字ならまだいい。

 それが文章だったりすると、読んでいるうちに「こんな字、あったっけ?」と自分の認識が不安になっていき、そのうち目が滑って「あれ、これ、何だっけ?」と何度も見返すことになる、読み手にゲシュタルト崩壊を誘発するだまし絵めいた字なのだ。


 これを読まされる人たちは気の毒だと思う。

 伝え聞くところによると、彼が学生だったころの提出物は手書きだったため、この文字を読むことでかなりの数の教師が病んだという。

 現在では公式文書はワープロ必須だから以前と比べて被害は減ったが、それでも研究室で手書きのメモを受け取って寝込む助手は日常的にいるらしい。


 俺は大きく深呼吸してからドアノブを握った。

 ノックをする必要はない。

 ドアの鍵はかかっていないし、ノックをしたところで返事をしないであろうことは分かっている。

 深呼吸だけでは足りず、俺は一度、目をぎゅっとつぶってから、開けた。


『そして、手芸用の色つきのフェルトを作るには羊毛を使うけど、イスの内側に張ったり防音に使う灰色のフェルトは……』


「叔父さーん、こんちはー」


 俺は自分自身を奮い立たせるように、わざと快活な明るい声で言った。

「雄司ですー、おじゃましまーす」

 言い終えると、俺は小さく息をし、そーっと部屋の中に向かって足を踏み出した。



 部屋は、昼間だというのにブラインドが下ろされ薄暗く、デスクの上に置かれたPCのディスプレイが唯一の明かりとなっている。

 2歩、3歩、俺はその明かりを目指して慎重に進んだ。

 周りは見ない。

 もし見たら。


 足がすくんで動けなくなる。


 俺は部屋に入ったときから嗅覚も意識的に遮断している。

 建物は全体に空調が行き渡っているが、彼がいるこの部屋だけは空気の流れが感じられない。

 俺の進路の両側にある本と書類を積み上げてできた「壁」で、天井近くにある換気口からの空気循環が妨げられているのだ。

 他の部屋と同じで、この部屋には片側の壁際に備え付けの本棚があるのだが、その前に壁が築かれてしまっていて開閉はおろか本棚に収納した本も取り出せなくなっている。


 そしてこの本と書類の壁は入り口付近だけではない。

 ちょうど人ひとりがやっと通れるスペースを残してまっすぐ伸び、窓の近くでカクンカクン、と直角に曲がるとそこから再び伸びていく。

 もし天井を取っ払ってこの部屋を上空から見ることができたら、これらの壁が英国かどこかの庭園によくあるきれいな迷路を構成しているのが分かるはずだ。


 きれい。

 俺は「形が美しい」「整然としている」という意味でそう言っているつもりなので、間違っても「清潔」とは混同してほしくない。

 なぜなら。


 俺が知るかぎり、この部屋は彼の研究室となってから一度も掃除されていないからだ。


『……ほこりから作られてるの。ほら、綿ぼこりってあるでしょ? あれがいい原料になるんだって』


 本と書類で築かれた壁の上から長々と垂れ下がる綿ぼこりが、俺の侵入によってかき乱された空気でうねうねと揺れている。

 直視しなくても気配で分かる。

 どこへ移動しようと、彼の部屋はいつもそうなのだ。


『羊の毛を刈るみたいに、綿ぼこりも1年に1度専門の人が掃除機持って集めに来るから、それまで触らないように置いとかなきゃならないのよ』

 初めて研究室をたずねたとき、母ちゃんは廊下を歩きながらそう言った。


 いくらとっさだったとはいえ、母ちゃんもぶっとんだウソをついたものだ。

 だが、子供だった俺はころっとだまされ、信じ込んだ。


 灰色のフェルトはほこりでできている、と。


 それと、俺らの世代は普段から大人からエコだの地球にやさしいだのと言われながらドロドロになるまで水で溶いた牛乳パックを漉して再生紙にしたり、公園で拾ったドングリで謎アートを作らされたりして育ってきているから「ほこりからフェルトを作る」と聞いても疑うより先に「ふ〜ん、エコじゃん」と受け入れてしまう傾向があるのではなかろうか。


 ともあれ。

 ウソを信じた俺は怯えることなく尋常でないレベルのほこりが積もりつもった部屋に入ることができたのだった。


 ほこりだけでなく、ニオイも。

 部屋には独特のニオイが溜まっていて、俺はそれを先入観なく「桜の木の皮みたいだ」と思った。しかし、長じるにつけその正体が古本とほこりと彼の体臭の混ざったものと気づいてから、その臭いに耐えられなくなった。

 それは、俺が中学生になるかならないかだったと思う。

 フェルトの件がウソだと分かったのもそのころだ。



「ああ、来たのか」


 PCがしゃべった。

 いや、違う。声の主はデスクの下にもぐり込んで何か探していたらしい。

「志摩さんから話は聞いてるよ。また三郎がやらかしたんだって?」


 やらかした、というよりは、やらかした結果が今ごろになって出てきたのだが。


「なんか、そうみたいです」

 俺はPCの光と声を頼りに壁の間を通り、見事デスクにたどり着いた。

 途中、崩れた書類を踏んだが気にしないことにする。

 ここでそんなことに気にして足を止めていたら神経がいくつあっても足りない。

「まったく。親子鑑定ならヨソでやってくれればいいのに、ぼくのところに持って行けばタダでやってもらえると思ってるんだろうな、三郎は」


 まぎらわしいからはっきりさせとくが、この「叔父さん」とは、子だくさんの三郎オジのことではない。


「ごぶさたしてました」

「そうだね。前に来てから今日で276日になるからね」


 今、俺がいるのは父ちゃんの上の弟で、父ちゃんをして「アイツは頭がおかしい」と言わしめる俺のもうひとりの叔父、次郎(仮)が使っている研究室である。


ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

(携帯だとあとがきが見えないらしいから本文に書いとくは)

 ↑ これもずっと続けてるが、本当にそうなのか?


 ええと。


 前回投稿してから今までの間に10万アクセス超えました。

 これもひとえに皆様のご愛顧とご支援によるものと感謝しております。

 皆様のご期待にお応えできるよう、鋭意努力いたす所存でごさいますので、何とぞ一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

(注:↑ビジネス文書の書き方を参照しました)


 って。

 実は10万アクセスのキリ番は自分で踏むつもりだったが、逃したのだった。


 めげずに今度は20万アクセスを狙うはwwwww

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