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武蔵転生 ~最強剣豪は異世界でも無双する~  作者: 川合 佑樹


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第9話

 やがて、座学は終わり、授業は演習場へと移った。


 学院の裏手に広がる広大な訓練場。


 石畳の地面に、無数の的が並べられている。


 木製の標的、鉄板の盾、遠くに浮かぶ魔力結界の球体。


 生徒たちは順番に呼ばれ、魔法を放つ。


 講師が告げた。


「初級から中級までの範囲で、自由に披露せよ」


 最初に呼ばれたのは、クラスでも上位の生徒だった。


「ファイア・ボール!」


 シンプルな火の弾が放たれ、的を貫いて炎上させる。


 周囲から軽い拍手が起こる。


 次は風属性の少女。


「ウィンド・カッター!」


 鋭い風の刃が複数飛んで、的を綺麗に斬り裂く。


「いいぞ!」

 誰かが声を上げる。


 そして、中級レベルの披露が始まった。


 中級とは、そこまで大したものではないらしい。


 初級の魔法を『形態変化』させることで認定される。


 一人の生徒が得意げに杖を振るった。


「ファイア・バード!」


 炎が鳥の形を取り、翼を広げて的へと飛んでいく。


 派手に爆発し、標的を焼き尽くす。


「おおー!」

 クラスが沸いた。


「実戦では敵の目を欺ける」

 講師も頷いて、褒めた。


 別の生徒は水属性。


「アクア・サーペント!」


 水が蛇の形になり、くねくねと的を絡め取って粉砕する。


「ウィンド・ブレード」


 さらに風属性の生徒が、複数の標的を同時に斬り払う。


 どれも視覚的に華やかで、周囲の生徒たちは感嘆の声を上げ、拍手を送っていた。


 ユーリウスも順番が来た。


「アイス・ウルフ!」


 氷が狼の形に変化して的を突き刺す。


 威力はそこそこだったが、形態変化自体は成功。


「さすがユーリウス」

「まだ怪我してるのにやるな」

 周囲から囁きが漏れた。


 するとアレックスが演習場の中央へ歩み出た。


「せっかくだから俺も一発見せておこうかな」


 クラスがどよめいた。


 皇子が自ら披露する。


 それだけで空気が一気に熱を帯びる。


 ユーリウスが、顔を強張らせた。


 アレックスは軽く首を振り、右手を高く翳した。


 魔力が渦を巻き、空気がびりびりと張り詰める。


 訓練場の空に、薄い雷雲が瞬時に集まった。


「サンダー・ドラゴン」


 蒼白の雷光が龍の形を取り、天を駆けた。


 鱗の一枚一枚までが雷で構成され、咆哮とともに的へと突進する。


 雷龍は木製の標的を炭化させ、鉄板の盾を溶かし、魔力結界の球体を粉々に弾き飛ばした。


 最後に地面に叩きつけられると、雷が放射状に広がり、石畳に無数の亀裂を走らせる。


 焦げ臭い煙と雷の残光が訓練場を満たした。


 場内がどっと沸き立った。


「す、すげえ……!」

「中級であの威力!?」

「王家の魔法やばすぎ……」


 女生徒たちは目を輝かせ、男子生徒たちは興奮して拳を握りしめていた。


 講師の老魔術師も、表情に深い思慮を浮かべて深く頷いた。


「見事です、殿下。形態変化の完成度、威力、威圧感……すべてが一流。これぞ王家の血筋と申せましょう」


 アレックスは照れくさそうに頭を掻き、ユーリウスに軽く手を上げた。


「まあ、ユーリウスも負けてないよ! 怪我してるのに頑張ったな!」


 表面上は褒めているが、誰もがわかる。


 完全に格が違う。


「お褒めいただき光栄です」


 ユーリウスは唇を噛み、俯いた。


 ラインハルトは、ただそれらを見ていた。


 派手な形、華やかな軌跡。


「何の意味があるんだ」


 鳥の形にしても蛇にしても、飛ぶ速度は変わらず、貫通力も初級の延長線上。


「敵の目を欺く? しかし間合いを詰めれば看破されるのでは? 形態を固定するなど、かえって隙を生むだけではないか?」


 やがて、講師の声が響いた。


「次、ラインハルト・フォン・エーゼルヴァルト」


 クラスが静まり返った。


 視線が集中する。


 同情の目、嘲笑の目、好奇の目。


『初級魔法しか使えないクズ』が、どんな惨めな披露をするのか興味がある。


 そんな空気が漂っていた。


 アレックスは腕を組んで見守っている。


 ユーリウスは、唇を歪めて睨んでいる。


 ラインハルトは立ち上がり、演習場の中央へ歩み出た。


 ただ掌を翳すだけ。


「ロック・ショット」


 小さな岩の弾丸が、音もなく放たれた。


 的の中心を、正確に撃ち抜く。


 続けて二発、三発。


 すべてが、的の同じ箇所を貫く。


 派手さはない。


 爆発もない。


 ただ、標的が崩れ落ちるだけ。


 クラスがざわついた。


「……地味だな」

「まあ、あいつ初級しか使えないしな」


 講師が眉をひそめた。


「うむ……精度は悪くないが、形態変化も試してみるといい」


 講師の言葉が終わった直後、ユーリウスの取り巻きの一人──昨日は不在だった金髪の少年が、わざとらしく片肩を軽く上げて笑った。


「先生、そいつは中級すら使えないクズなんですよ! 形態変化なんて、かわいそうなこと言っちゃダメですよー」


 声に棘が込められている。


 周囲からくすくすと笑いが漏れる。


 ユーリウスが顔だけを振った。


「やめろ」と無言で伝えるが、取り巻きは気づかないふりをしてさらに声を大きくした。


「ほら、みんな知ってるでしょ? ラインハルトって初級魔法しか──」


「やめろ。それ以上は俺が許さない」


 低く、冷たい声が響いた。


 アレックスが一歩前に出て、鋭い視線を取り巻きに突き刺した。


 しかし、それをラインハルトが軽く手を挙げて静止した。


「殿下。お気遣い感謝します」


 ラインハルトは的に向かって正対した。


「では、一つだけ」


 誰もが見守る中、ラインハルトは右手を前に翳した。


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