↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武蔵転生 ~最強剣豪は異世界でも無双する~  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/50

第5話

 二人で廊下を歩く。

 向かう先は食堂だった。


 エリナが重厚な扉の前で立ち止まり、軽くノックしてから開ける。

「失礼いたします」


 ラインハルトが中に入ると、長いテーブルにはすでに家族が揃っていた。

 母、そして長男、長女、二女、三男。

 父の席だけが空いている。


 記憶が告げる──エーゼルヴァルト家の当主は、現在帝国北西部の前線で、隣国との小競り合いに従事している。

 戦時中、ということだ。


 母は優雅なドレスを纏い、銀色の髪を高く結い上げていた。

 年齢は三十代半ばに見えるが、貴族の血筋らしい気品が漂う。


 長男のアルフレートは十八歳そこそこ、軍服姿で厳つい顔立ち。

 長女のソフィアは十六歳、優しげな笑みを浮かべている。

 二女のマリアンヌは十四歳、好奇心に満ちた表情をしていた。

 三男のルドルフは十歳、椅子に座っても足が床に届かない。


 全員がラインハルトの入室に注目し、軽く会釈した。


 ラインハルトは自分の席──次男の位置──に着いた。


 すると母が、胸の前で両手を合わせた。

 家族全員がそれに倣う。

 ラインハルトも、自然と手を合わせた。


 母が穏やかで、しかし荘厳な声で祈りを捧げた。

「今日もこうして家族が無事にこの食卓を囲み、互いの顔を見られる喜びを賜ったことを、心より感謝いたします。戦場にいる父上を、どうかお守りください。そしてこの帝国に、永遠の平和と栄光を」


 静かな沈黙の後、家族全員が声を揃えた。

「ヴァルドリアに栄光あれ」


 祈りが終わり、手を下ろす。


 それから食事が始まった。


 テーブルには温かなスープ、焼き立てのパン、果物、卵料理が並んでいる。

 香ばしい匂いが食堂に満ちていた。


 ラインハルトは、スープを口に運びながら、家族の様子を観察していた。


 食事が始まって間もなく、長男のアルフレートがスープの匙を置き、ラインハルトをまっすぐに見据えた。

「バルデリック子爵の息子から連絡があった。学院でひと悶着あったようだな」


 声は低く、軍人らしい抑揚を帯びている。

 好奇心というより、事実を確認するような響きだった。


 母が眉を寄せ、アルフレートをたしなめようと口を開きかけたが、ラインハルトは匙を置き、穏やかに答えた。

「後ろから氷の槍魔法を頚椎に受けました。意識を飛ばされるほどの威力で、もしかしたら死んでいたかもしれません」


 食堂が静まり返った。


「まあ……!」


 母が声を上げ、両手を口元に当てる。


「ひどい……!」


 長女ソフィアが息を零して、視線を曇らせた。

 二女のマリアンヌは目を丸くし、三男ルドルフは不安げにラインハルトを見上げている。


 ラインハルトは続けた。

「ですので、魔法を行使し身を守りました。僕より重症な怪我はしていないと思います。ご心配をおかけして申し訳ありません」


 母が息を整え、言った。

「モントフォール家からは『ユーリウスが重傷を負った』という抗議が来ていますけれど……」


 アルフレートが鼻で笑った。

「初級魔法しか使えないことは知っているくせに、白々しい」


 ラインハルトは皿に目を落としたまま、答えた。

「ユーリウスには当身、投げ、圧した程度です。大した威力はなかったかと」


 アルフレートが怪訝そうに視線を鋭く絞り、ラインハルトをじっと見据える。

「喧嘩するほど……」


 母が慌てて割って入った。

「……分かりました。この話はもうやめましょう」


 誰も異を唱えなかった。


 ラインハルトはそれ以上言葉を加えず、残りの食事を手早く済ませると、誰よりも先に席を立った。


「ラインハルト?」


 母が驚いたように声をかける。


「宿題がまだ残っておりますので」


 短く答え、軽く会釈して食堂を出て行く。



 扉が閉まった後、アルフレートが声を潜めて言った。

「三人を同時に相手取ったって……そんな訳ないだろう?」


 ソフィアが首を振った。

「囲まれていじめられたんだわ……ショックも受けるわよ」


 母はスープを見つめたまま、静かに呼気を漏らした。

「無事だとよいのだけれど……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。