第38話
三階層に降りると、そこは開けた空間だった。
ダンジョンとは思えぬほど大きな空洞で、すぐそばに滝が流れ落ち、下の階層へと続いている。
滝の縁から下を覗くと、四階層の床が遥か下方に見えた。
セレナが軽く片肩を竦めて言った。
「ここは三階層と四階層が繋がっているの。周りを見てみて」
ラインハルトは辺りを見渡す。
滝の近くの岩壁には、錆びた金具が等間隔で打ち込まれていた。
「ここに縄を通して下に降りるのか?」
「風魔法が苦手ならね?」
ラインハルトは短く頷いた。
「理解しました」
そう言うと、一切躊躇なく滝の縁から下の階層へと飛び降りた。
落下中に風魔法を展開し、着地直前に体を包む気流で衝撃を完全に殺す。
音もなく四階層の石床に膝を軽く曲げて着地した。
上を見上げると、セレナが優雅に風を纏い、降下してくる。
彼女は地面に着くと、眉をひそめてこちらを見た。
「意外とおませさんなのね」
「ちっ、違う。そういうことではっ」
「ふふっ、知ってるわよ。揶揄っただけ」
四階層に着くと、そこにはすでに多くの生徒が大きな門を前に集まっていた。
石造りの重厚な門はまだ閉ざされたままで、周囲の生徒たちはざわめきながら待機している。
その中に、アレックスの金色の髪が目に入った。
アレックスはラインハルトの姿を認めると、目を輝かせて近寄ろうとした。
「ラインハルトー!」
だが、背の高い先輩に首根っこをがしっと掴まれ、無理やり引き戻される。
「うわっ、ちょっと先輩!」
「黙って待ってろ」
アレックスは首根っこを掴まれたまま、遠くから必死に声を張り上げた。
「ラインハルトー!」
セレナは、ラインハルトの横で肩を軽く持ち上げて。
「生徒同士の情報共有は基本禁止だから、しょうがないわね」
「そうなのか?」
「上級生とのコミュニケーションの向上が目的だから。仲いい同士で固まってダンジョンでピクニックなんて、笑えないもの」
ラインハルトは短く鼻息を押し出した。
「意外と真面目なんですね」
セレナは微笑みを深くした。
「ずっと真面目だけど?」
門の前で待機する生徒たちのざわめきが、少しずつ大きくなっていく。




