第24話
貴族決闘の中央演習場。
観客席の熱狂が遠く聞こえる中、戦いは一転してゲオルクの独壇場になっていた。
ゲオルクが杖を軽く振り、初級の炎魔法を放つ。
だがその出力は、すでに中級に近い規模だった。
ラインハルトは即座に同等の炎で迎撃し、空中で相殺する。
しかしゲオルクは徐々に魔力を増やし始め、炎の塊はみるみる肥大していく。
ラインハルトも出力に合わせて魔力を注ぎ込むが、少年の魔力回路が悲鳴を上げ始めた。
熱が体内を駆け巡り、回路の壁が薄く軋む感覚が走る。
「未熟! 未熟! 未熟! その肉体では、この出力は対応できまい!」
ゲオルクが嘲笑とともに放った最高出力の炎球は、もはや中級に近い規模だった。
ラインハルトは対になる炎を放つ。
だが、ゲオルクの炎はただの熱量ではなく、渦を巻く強大なエネルギーそのものだった。
ラインハルトの炎は飲み込まれるようにして消滅し、勢いのままに直撃した。
「がはっ!」
ラインハルトの体は場外まで吹き飛ばされ、石畳に叩きつけられる。
直前に展開した風の膜で衝撃を逸らしたが、それでも全身を鉄槌で打たれたような痛みが走った。
観客席がどよめいた。
「え……負けたのか!?」
「ゲオルク先輩の勝ちだろ……あんなの食らって立てるわけねえよ」
アレックスが立ち上がり、拳を握りしめて叫ぶ。
「ラインハルト……! くそっ!」
ヴィオレットは両手を口に当て、体を震わせていた。
ユーリウスは唇を噛み、俯いたまま拳を握りしめている。
ゲオルクが満足げに笑った。
「これが本当の魔法というものだ」
ラインハルトは仰向けに倒れたまま、天を見上げていた。
青い空が回っている。
「肋骨が軋み、内臓がねじれる。視界が白く染まり、耳鳴りが響く。息が詰まり、肺が焼ける。四肢は痺れ、指一本動かすのも億劫なほど重い。だが……」
(どこか懐かしく心地いいものだな)
ゲオルクが開始位置からようやく歩み出し、杖を構える。
「それではごきげんよう、ラインハルトくん」
言葉が落ちたその時。
ラインハルトの体が、風に浮かされるように起こった。
風魔法を足裏と背中に纏い、人形のように体を操っている。
ゲオルクの目が見開かれた。
「なにっ……あの直撃を受けてまだ動けるだと!?」
ラインハルトは答えた。
「直撃? ああ、確かに体は動かないな。だが魔法を使えば、この程度の動きなら再現できるだろう?」
体が風に乗り、回転する。
糸で吊られた人形のように、ゲオルクの方へ向き直る。
ゲオルクの顔が引き攣った。
「なんだ……その使い方は。下品な……」
ラインハルトはかすかな嘲りを浮かべて唇の端を上げた。
「下品か。それがお前の底だな。殺してもないのに勝ちを確信したのなら尚更だ。だが感謝する。上級生の魔法を見てみたかったのでな」




