第22話
授業が終わり、生徒たちは中央演習場へと集まり始め、たちまちのうちに観客席は埋め尽くされていた。
学院関係者全員に観戦が許可されたため、生徒だけでなく教員、職員、さらには一部の貴族や使者が特別席に着いている。
開始の鐘が遠くで鳴り響くと、学院の音楽隊が日頃の成果を見せつけるように、入場曲を高らかに奏で始めた。
荘厳な管弦楽が演習場全体に響き渡り、観客席のざわめきが徐々に静まっていく。
まず、白いローブを纏った聖職系の老講師が中央へと歩み出た。
学院の礼拝堂を預かる神官魔術師。
彼は杖を天に掲げ、厳かな声で祈りを捧げる。
「全能なる神よ、この決闘にあって両者の名誉と命をお守りください。観客を災厄より護り、公正なる勝負を見届けさせたまえ」
淡い青白い光が演習場全体を包み、観客席の周囲に透明な結界が張られた。
魔法の暴発が観客に及ばぬよう、学院が万全の対策を講じている証だった。
観客席から感嘆の吐息が漏れる。
その光が収まると、学院長である老魔術師が中央に進み出た。
白い髭を風に揺らし、張り詰めた声で宣言する。
「本日、ここに神聖ヴァルドリア帝国の名の下、王立ヴァルドリア魔法学院中央演習場において、貴族決闘を行う。ゲオルク・フォン・シュタウフェン。ラインハルト・フォン・エーゼルヴァルト。両者入場せよ!」
観客席が息を呑む。
音楽が止み、演習場に張り詰めた空気が満ちた。
荘厳な管弦楽が再び流れ始め、まずラインハルトが入場した。
ラインハルトが指定された位置に立つと、観客席から無数の視線が突き刺さる。
上級生たちは冷笑を浮かべ、一年生たちは複雑な表情でこちらを見ていた。
第一皇子派閥の者たちは拳を握り、モントフォール派や第二皇子派は堂々と嘲笑を隠さない。
勝てというより、負けろ。
そんな悪意が空気に混じっているように感じられた。
ラインハルトは観客席を見回し、口元に皮肉めいた余裕の気配を漂わせた。
「ずいぶんといい趣味の先輩方だ」
音楽が切り替わり、次にゲオルクが入場した。
ラインハルトの時よりも、明らかに盛り上がりの声と拍手が盛んだった。
気合が入っているのが見て取れる。
ゲオルクが指定された位置に立つと、すぐに杖をラインハルトに向けた。
「よくぞ逃げずにやって来たものだ! 聞いたぞ! 初級魔法しか使えないようだな! 私も初級魔法のみで戦ってやろう! 格の違いを見せてやる!」
ラインハルトは杖を右手に持ち替え、ゲオルクに向けた。
表情は変わらず、ただ穏やかに告げる。
「感謝する。格の違いというものは、まだ見たことがなかったもので」
ゲオルクが舌打ちを漏らす。
「ちっ……生意気な奴め」
ラインハルトとゲオルクは、互いに睨み合ったまま、頷いた。
学院長が杖を手に高く掲げる。
「両者、杖を構えよ。勝敗は相手の降参、戦闘不能、または死亡により決する。準備はよいか?」
学院長が杖を下ろす。
「──決闘、開始!」




