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武蔵転生 ~最強剣豪は異世界でも無双する~  作者: 川合 佑樹


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第2話

 ラインハルトの体が動いた。

 地を蹴りユーリウスに詰め寄った。


「やらせるか!」


 ユーリウスが右手に魔力を集中させ、拳ごと振りかざす。

「水の導きよ……」

「火よ集い……」


 取り巻きの一人は慌てて呪文を紡ぎ始め、もう一人は後退しながら手を翳した。


 ラインハルトはユーリウスの動きだけを視界に入れた。

 隙が大きい。

 腰が浮いている。

 魔力を拳に集中させるあまり、足元が疎かだ。


「……若造め」


 ラインハルトは深く腰を落とし、ユーリウスの拳の下をすり抜けるように体を滑らせた。


 そして自然と足の下から力が放たれようと熱くなる。


(体がこれを魔力操作だと教えてくれる。この少年……ずいぶん頑張ったのだな。ならば私も応えよう)


「……見せてやれ」


 足裏に意識を集中すると、雷の魔力が一気に湧き上がった。

 ラインハルトの鍛錬、宮本武蔵の経験と知識が重なり合い体が加速した。


 ドンッ!


 一瞬で間合いを詰め、肩をぶつけるように体当たりを食らわせる。


「ぐはっ」


 ユーリウスの体が軽々と浮き上がった。


「よいしょぉ!」


 ラインハルトはそのまま持ち上げて、近くにいた取り巻きの一人に投げ飛ばした。


「ぐっ!」

「うわぁ!」


 二人が絡まるように倒れ、地面に転がる。


「おい大丈夫か!?」


 残ったもう一人の取り巻きが、慌てて横を向いた隙を、ラインハルトは逃さない。


 短く詠唱する。

「ロック・ショット」


 指先が熱くなり、意図した形が自然に生まれる。

 剣を描くように、意志がそのまま術となる。


 取り巻きが顔を向けたときには、すでに小さな岩の弾丸が彼の脚に迫っていた。


「ぎゃあっ」


 痛みが走る前に悲鳴を上げる。

 ロック・ショットが脛に直撃し、取り巻きは体を屈めてうめく。


 ラインハルトは素早くその首の後ろを掴み、みぞおちに膝蹴りを叩き込んだ。


「ううっ!」


 鈍い音とともに、取り巻きがぐったりと崩れ落ちる。


 宮本武蔵、異世界転生後、初の三人斬りである。


 ラインハルトは肩の力を抜き、倒れた三人を見下ろした。


「ふむ。意外にも馴染む。よい依代だ」


 ラインハルトは呻いているユーリウスに近づき、足の甲を踏みつけた。


「いででででっ!」


 ユーリウスが悲鳴を上げ、顔を歪めて脂汗を浮かべ、涙目で体を硬直させる。


「ご、ごめんなさい! もうしません! 本当に、もうしませんから……!」


 ラインハルトは見下ろした。


「そのまま聞け、坊主……」


(今は私も小僧か。借りもの故、迷惑もかけられんか)


 ラインハルトが頬をポリポリと掻いた。


「ユーリウス。僕は君には従わない。唯一従うのは第一皇子殿下のみだ。これ以上付きまとうようなら、モントフォール公爵家に書状を送らせてもらう」


 そう言い終えると、ラインハルトは足を退けた。


 ユーリウスの叫びがぴたりと止まり、地面にへたり込んだまま荒く肺を震わせた。


「分かっ……た……。分かったから、もうやめてくれ……!」


 声が上ずり、涙と汗で顔がぐちゃぐちゃになっていた。


 ラインハルトは唇の端に嘲りの色を滲ませた。


「違えるなよ。その時は」


 そう言って、自身の頚椎をトンと手刀で叩いてみせる。


「ひっ」


 ユーリウスが一気に青ざめ、恐怖で体を硬直させた。


 ラインハルトはそれを見据えたまま、背を向けてその場を去った。



 残された三人の中で、取り巻きの一人が小さく声を漏らした。


「ユ、ユーリウス様……あいつ、ほんとにラインハルトですか……?」


 ユーリウスが足を擦りながら、取り巻きを睨む。


「なんでだ……初級魔法しか使えないクズの癖に……。話と違うじゃないか……」


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