第18話
次の朝の食堂、いつものように家族が揃う朝食の席。
ラインハルトが席に着いて間もなく、母が立ち上がり、一枚の封筒を差し出した。
蝋の封印には学院の紋章が押されている。
「……これが、届いたわ」
母の声は穏やかだったが、指先が固くなっているのが分かった。
ラインハルトは無言で封筒を受け取り、封を切って中身を取り出す。
決闘申請の正式受理通知。
相手:ゲオルク・フォン・シュタウフェン
場所:王立ヴァルドリア魔法学院中央演習場
日時:七日後、正午
勝負の方法:杖を用いての魔法決闘
代理人:なし
観戦:学院関係者全員に許可
いたって普通の貴族決闘だった。
ただし、代理人を立てられないという一点だけが、この決闘をより個人的で、より危険なものにしていた。
ラインハルトが通知を畳み直すと、母が静かに言った。
「……本当にやるのね」
その声には、怒りよりも深い諦めと、隠しきれない心配が滲んでいた。
長男アルフレートがスープの匙を置き、横を向いた。
長女ソフィアが、唇を噛む。
二女マリアンヌと三男ルドルフは、まだ事の重さを完全に理解できていない様子で、ただ兄を見つめている。
ラインハルトは頷き、通知をテーブルの上に置いた。
「やるしかありません」
母は言葉を失った。
やがて、席に戻りながら、柔らかな顔立ちになった。
「……勝ちなさい」
誰もそれ以上は何も言わなかった。
朝食は、いつもより少し早く終わった。




