第6話 勝利の祝杯と、消えぬ違和感
【読者の皆様へ】
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主人公たちが重機と魔導兵器を駆使し、隙のない『鉄の回廊』を数日で組み上げる爽快感が見どころです。
圧倒的な陣地設営と『完璧な防衛計画』を、お楽しみいただけますと幸いです!
「全兵員へ通達。本日、兵兵管理部より特配の缶詰およびビールが支給される。各小隊、速やかに受領されたし」
陣地内に設置されたスピーカーから、無機質な広報の声が響いた。
全滅させた「極光騎士団」の屍を片付け終えた夕暮れ時。中央兵舎には、早々と乾杯を交わす下士官たちの明るい声が満ちていた。
一千の敵を、我が方の損害ほぼゼロで撃破したのだ。兵士たちにとっては、これ以上ない「大勝利」であった。
「少佐、兵器処から届いた特配の黒ビールです。本国の一流醸造所の銘柄ですよ」
前線指揮所を訪れたカール曹長が、冷えた瓶ビールを二本、机の上に置いた。
「呑んでいいぞ、カール。今日くらいはな」
「ありがたくいただきます」
カールは栓を抜き、喉を鳴らしてビールを煽った。
「うめぇ……。やっぱり文明の味ってのは最高ですね。俺の田舎じゃ、酒と言えば麦を自家醸造した酸っぱい密造酒くらいでしたから」
口元を拭い、カールはふっと目を細めた。
「村じゃ、祭りや収穫の後に酒を呑むのは『明日も生きて働くため』でした。一杯呑んで、ぐっすり寝て、次の日も畑を耕す。……だけど少佐、兵舎の若い奴らの酒を見てると、なんだか変な気分になるんです」
「変、とは?」
レオンが尋ねると、カールは少し困ったように頭をかいた。
「あいつら、『楽勝だった』『あの騎士どもの突撃、ギャグみたいだったな』って笑ってやがるんです。……敵の死体を笑いものにして、自分たちがどれだけ強いかを酒の肴にしてる」
「……」
「俺の田舎じゃ、害獣を殺した夜は酒を呑みますが、誰も害獣を笑ったりしません。『来年もまた出たら嫌だな』『事故がなくてよかった』って静かに感謝して呑むんです。人を殺しておいて『ウケる』で片付けるのは……あいつら、どこか頭のネジが外れ始めてるんじゃないですかね」
カールの素朴な危機感に、レオンは深く頷いた。
命を粗末にするイグナシオのような「狂気」に晒され続けた結果、勝者である帝国軍の若い兵士たちもまた、他人の命の重みを麻痺させつつある。それもまた、戦争という毒の浸食だった。
レオンは机の引き出しから、折りたたまれた一通の便箋を取り出した。
冷えた瓶ビールには手をつけず、彼は本国の彼女へ宛てた手紙の続きを書き始める。
『――こちらの兵士たちは、圧倒的な勝利に酔いしれています。ですが私は、彼らが笑いながら死体を踏み越える姿を見るたび、背筋が凍る思いがします。
敵は命を「投げ捨てる」ことで狂い、我が軍は命を「消費財」として扱うことで狂っていく。
ここには、人間らしい心が残る場所はありません。
どうか、私を忘れないでください。あなたの手紙だけが、私がただの殺戮機械に成り果てるのを防いでくれています――』
インクが乾くのを待つレオンの横で、カール曹長は静かに二本目の瓶の栓を抜いた。
「少佐。俺、手紙にこう書いたんです。『今年獲れた麦で焼いたパンの匂いを送ってくれ』って。……ここにあるものは全部、硝煙と鉄の匂いしかしないから」
静かな夜の暗闇の中、離れた兵舎から聞こえる兵士たちの浮かれた歌声だけが、虚しく空に響いていた。
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【作者より】
第7話を、この後 7/24 14:20 投稿予定です。よろしくお願いいたします。
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