第5話 焦土に咲く花と、忘れえぬ者たち
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主人公たちが重機と魔導兵器を駆使し、隙のない『鉄の回廊』を数日で組み上げる爽快感が見どころです。
圧倒的な陣地設営と『完璧な防衛計画』を、お楽しみいただけますと幸いです!
翌朝、黒竜島に昇った太陽は、夜の闇が覆い隠していた「現実」を残酷なまでに照らし出していた。
レオン少佐は、特殊な鋼鉄の装具を脚に締め直し、右脚を引きずるようにして前線の焦土を踏みしめた。その隣には、大きな背中を丸めたカール曹長が静かに従っている。
視界を埋め尽くしていたのは、かつて「極光騎士団」と呼ばれた一千の男たちの残骸だった。
まともな原形を留めているものはごくわずか。ほとんどが帝国軍の徹甲弾によって砕かれ、あるいは自らの命を燃やし尽くした自爆の熱によって炭化していた。
「……少佐」
カール曹長が立ち止まり、靴底で焦げた泥を踏んだ。
「俺の田舎の村じゃあ、冬に死んだ人間は全員、村外れの丘に埋めて小さな野花を添えるんです。どんな貧乏人でも、悪人でもだ。……ですがね、こいつらには捧げる花の一本もありやしない」
カールは遠く、黒く焼け焦げたイグナシオ将軍の甲冑の破片を見つめた。
「村の畑を荒らす害獣でさえ、腹を空かせて生きたいから必死で命を懸ける。だが、この騎士様の将軍は違った。部下に『美しく死ね』と命じて、本当に誰も彼も綺麗に全滅させちまった。……生きて家族の元へ帰るっていう、一番大切な欲望を毒で塗りつぶして奪ったんだ。俺は、あの将軍の目をした奴が一番恐ろしい」
カールの素朴な怒りは、静かに戦場の風に溶けていった。
「……ああ。狂気とは、暴力そのものではなく『死を美化する言葉』のことなのだろうな」
レオンは胸ポケットに手を当てた。そこには、本国の恋人から届いた手紙と、彼女の写真が入っている。
出征の直前、帝都の静かな部屋で彼女は言った。
『あなたがどんなに汚れた手をしても、無様に這いずってでも、生きて私の元へ戻ってきて。それが私にとっての唯一の正義です』
彼女の言葉は、イグナシオが部下に放った「魂を燃やせ」という高潔な号令に比べれば、あまりに泥臭く、利己的で、美しいものだった。
「行くぞ、カール曹長。本国へ報告書を打電する。……それと、第一便の輸送艦で、本国への手紙を出したい」
「了解です、少佐。ついでに俺も、カミさんに『麦の収穫までには必ず帰る』って手紙を書きますよ。あんな狂人に殺されてたまるかってんだ」
二人は背を向け、無機質な防衛陣地へと歩き出した。
背後には、ただ冷たい海風が吹き抜け、命を無価値に投げ打った一千の騎士たちの沈黙だけが残されていた。
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【作者より】
第6話を、7/24 14:00 投稿予定です。よろしくお願いいたします。
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