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慰霊師  作者: 皇南輝
第3章 心霊配信すると事故るトンネル
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3- 23 初めて幽霊を見たときの反応

「わかったわ、結羽さん。私の霊感を高めてください!」


 可南の決意に、結羽は無言のまま力強く頷いた。


「じゃあ、可南さん。すぐに始めますね」


「はい。それで私は何をすればいいの?」


 結羽は周辺を見渡すと、廃屋の庭のような場所にコンクリートの土台を見つけた。それは、ちょうど椅子ほどの高さがあり天端が平らになっているため座りやすい。

 結羽はポケットから取り出した水色のハンカチを土台の天端に敷いた。


「可南さん、ここに座ってもらっていいですか?」


 結羽がハンカチを敷いた土台に可南を座らせると、その背後にまわった。


「目を閉じてリラックスしていてください」


 結羽が促すと、可南は目を閉じてゆっくりと息を細く吐き出した。


 結羽と可南の近くでは、良子と涼子という2人の霊が黙って見守っている。


 結羽は、右手のひらを可南の後頭部にかざした。そして、目を閉じて深く息を吸った。


 結羽の右手のひらから彼女のエネルギーが可南の後頭部に注がれていく。可南が霊を見て、霊からの言葉を聞いている場面を想像し、強く念じた。


 数分ほど廃集落に沈黙が流れた。

 結羽は目を開けると、全身の力を抜きながら息を吐いた。


「可南さん。目を開けて大丈夫ですよ」


 可南は、恐る恐る目を開くと何度か瞬きをして周辺を見渡した。


「結羽さん以外に人影は見えない······」


「うん。霊が見えるようになるまで少し時間がかかるの。もしかしたら、めまいが起こるかもしれないから気をつけてくださいね」


 結羽はそう告げると、可南の手を取ってゆっくりと彼女を土台から立たせた。

 立ち上がった可南は、再び周辺を見渡した。


 今回、結羽が『霊感を高めるスキル』を使うのは2回目だった。前回は、依頼者の背後霊から教わりながら実践し、成功させていた。

 結羽は、可南の様子を注意深く見守った。すると、可南に異変が起きた。

 突然、可南は、まるで雪山にでもいるような感じでガタガタと寒そうに震え始めた。


「なんか、急に寒けが······」


 結羽は、可南の様子を好奇な目で注視した。


(霊感が高まったときの反応は個人差があるみたいね······)


 実際、霊が近づいてくると寒けや鳥肌、頭痛、吐き気を起こすことがある。


 結羽は、可南が寒気に襲われている様子を見て、スキルの効果を予感した。


 可南は寒けが落ち着くと、今度は両目をパチパチと瞬きさせた。目の前の何かに焦点を合わせようとするかのように、しきりに前方を見つめている。

 次の瞬間、突然、可南は驚きの悲鳴をあげた。


「きゃあ!」


 可南は悲鳴をあげると、隣で立っていた結羽の胸に顔を埋めるように抱きついた。


「どうしたんですか? 可南さん」


「私の目の前に女の人が立っていたの。もしかして、その人は幽霊なの?」


 可南は結羽の胸に顔を埋めたまま尋ねた。

 結羽は、良子を一瞥すると笑みを浮かべた。


「そのとおりです。彼女は良子さんで、私たちをここまで案内してくれた方なんです」


 結羽が穏やかな口調で答えると、可南は結羽に抱きついたまま震えていた。


(可南さんは初めて霊を見るんだから、怖がっても仕方ないよね······)


 結羽は、恐怖で震えている可南を優しく抱きしめた。


「良子さん。涼子さん。可南さんが霊に慣れるまで待っていてもらえますか?」


「そうよね。私たち、幽霊なんだもんね」


 結羽の言葉に、良子が笑みを浮かべながら答えた。


「可南は昔から怖がりだったからね」


 黒い影の涼子がそう言いながらクスッと笑うと、結羽に顔を埋めて抱きついている可南の両肩がピクリと動いた。


「その声は、涼子!」


 突然、可南は結羽の胸から顔をあげると、涼子の声がした方向に視線を移した。しかし、またしても可南は悲鳴をあげて結羽の胸に顔を埋めてしまった。


「可南さん?」


 結羽が困ったような笑みを浮かべながら尋ねた。


「涼子の声がしたから見てみたら······」


「見てみたら?」


「真っ黒な人影が見えたの!」


 可南の返答を耳にした結羽は、やっぱりか、と頷いた。


(やっぱり、可南さんにも涼子さんの姿が黒い影にしか見えないんだ! どうしてなんだろ?)


「もう、可南って失礼なこと言うわね! 私は、黒い姿なんてしてないわ。死んでも、いちおう女の子の服装してるんだからね!」


 黒い影の涼子が、不満げに言った。

 結羽は、良子に顔を向けた。


「良子さん。やっぱり私たちには、涼子さんが黒い影にしか見えないようなんです。何か心当たりはありますか?」


 良子は、隣りで立っている涼子の顔を真顔でじっと見つめた。


 良子には涼子の姿がはっきりと見えている。

 涼子は、色白の肌に黒くて長い髪。ベージュのミニワンピースを着た可愛い女性だ。ただ、ミニワンピースは破れ、そこから伸びる美しい脚は土で汚れ、首にはロープで締められた跡があった。


 涼子は、男に暴行されて殺害されたときの姿のままだった。

 良子は、そのような涼子の姿を悲しげな目で見つめたあと、結羽に顔を向けた。


「どうして涼子が、あなたたちには黒い影に見えるのか、心当たりがあるわ」


 良子は、声を落としながら答えた。






(つづく)

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