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慰霊師  作者: 皇南輝
第3章 心霊配信すると事故るトンネル
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3- 15 女井戸トンネル殺人事件

 数年前に女井戸トンネルで発生した殺人事件の被害者は、可南の親友だった。

 突然、予想だにしない真実を可南から告げられた結羽は言葉を失った。


「えっと、可南さん。もしよろしければ、今回の依頼の目的を教えて頂いてよろしいですか?」


「はい。結羽さんには包み隠さず話しますね······」


 可南は、数年前に起きた女井戸トンネルでの殺人事件について話し始めた。



 2年前の夏。

 可南の親友である町村涼子は、出会い系アプリで知り合った男に連れられて女井戸トンネルを訪れた。その直前、町村涼子から「出会い系アプリで仲良くなった男と一緒に女井戸トンネルへ行く」と連絡を受けた可南は反対した。町村涼子が出会ったばかりの男と2人だけで山奥に行くことに不安を覚えたからだ。

 町村涼子が女井戸トンネルを訪れて以来、彼女は音信不通になった。可南はすぐに警察に連絡。捜索の結果、町村涼子は女井戸トンネル付近の森の中で死体で発見された。死因は首を絞められたことによる窒息死。男から性的暴行をされたうえでの殺人だった。

 犯人は、まだ見つかっていない。

 ずっと以前から心霊スポットとされていた女井戸トンネルで殺人事件が発生したことは、女井戸トンネルの心霊スポットとしての知名度をさらに高くさせた。


 事件後、可南は出会い系アプリを利用しながら犯人を探したが見つからず、結局諦めてしまった。しかし、女井戸トンネルで心霊配信を行った人たちが立て続けに奇怪な事故に巻き込まれたことがきっかけで、不慮の死を遂げた親友への思いが強まった。

 女井戸トンネルでの心霊配信を見ていた可南は、心霊配信者たちが奇怪な事故に巻き込まれたのは町村涼子の霊の仕業かもしれない、と考えた。可南は、その真相を知りたいと思い、霊が見える結羽に依頼したのだった。


 可南の依頼目的を知った結羽は、すぐにスマホを手にすると、数年前に発生した女井戸トンネルでの殺人事件を検索した。被害者の名前は確かに町村涼子になっている。犯人は見つかっていない。

 結羽は、タケハルやレイレイ、霊騎士らの心霊配信で目にした女性の霊の特徴を可南に伝えてみた。しかし、可南によると、町村涼子の特徴とは一致しなかった。可南によると、町村涼子の髪型はボブヘアであり、ミニスカートを好んで履いていた。

 女井戸トンネルでの心霊配信を見ていた結羽が何度も目にした女性の霊はカールがかかったロングヘアで、その服装はブラウスにロングスカートという昭和の時代を醸し出すものだった。


「私も女井戸トンネルでの心霊配信を何度か見てたんですけど、町村さんの特徴をした霊は一度も見てないですね」


 結羽は首を振りながら可南に伝えた。

 ただ、結羽には気になる点があった。心霊配信を通して目にした女性の霊以外に、黒い人影を見ていた。その正体は分からない。

 結羽は、それについて可南に伝えた。可南は、謎の人影に対して強い関心を抱いた。


「結羽さん。その黒い人影は悪霊なんですか?」


 可南からの質問に、結羽はどう答えたら良いのか分からず、「うーん」と唸った。


「一概に悪霊だとは言えないです。やっぱり現地に行ってみないと分からないですね······」


「そうですよね」


 可南は、そう答えると窓の外の大通りを眺めた。大通りの歩道を女子大生らしき2人が談笑しながら歩いているのが視界に入った。その2人を懐かしそうに見ていた可南は、彼女たちが視界から消えると結羽に視線を戻した。


「結羽さん。いつ女井戸トンネルに行けそうですか?」


「一番近い日で、次の月曜日なら大丈夫です」


 結羽が答えると、可南の表情がパッと明るくなった。


「ああ、良かった! その日は、ちょうど喫茶店がお休みなの」


「じゃあ、月曜日の······午前中はどうですか?」


「そうしましょう!」


 可南は快諾したが、結羽には気がかりなことがあった。

 女井戸トンネルへの移動手段だ。

 結羽は自動車免許を持っていない。その点に関して可南に伝えると、可南はクスッと笑った。


「私が自分の車を運転しますよ。その点は任せてください」


「わかりました。 では、お願いします。ただ······」


「ただ?」


「女井戸トンネルを訪れた心霊配信者たちは、みんな車で事故を起こしてるので······」


「それだからこそ、慰霊師の存在意義が高まるってことでしょ?」


 可南の明るい表情を目の当たりにした結羽は、改めて『自分は慰霊師なのだ』と自覚したのだった。






(つづく)

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