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慰霊師  作者: 皇南輝
第3章 心霊配信すると事故るトンネル
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3- 10 嵐の夜に現れた心霊配信者たち

 その夜、関東一帯は大気が不安定になり、結羽が暮らす都内の湾岸エリアも激しい雷雨に見舞われた。


 闇夜に稲光が炸裂する度に、ズズーン、という床から突き上げるような振動がベッドの結羽に伝わる。


「きゃあ!」


 結羽はベッドの上で薄手のブランケットに頭から潜り込みながら悲鳴をあげた。

 結羽は、雷が苦手だった。

 それは、結羽と暮らす白猫の霊・ホイップも同じで、雷鳴の振動がアパートに伝わる度に、全身の毛を逆立て硬直しながら窓に向かって怯えていた。

 強風と共に雨粒がバチバチと窓を叩きつけるなか、結羽は雷への恐怖を紛らわそうと、ブランケットの中でスマホ画面をタップした。

 結羽が開いたサイトはお馴染みの動画配信サイトだ。心霊配信を見るために開いたのだが、結羽がフォローしている関東在住の心霊配信者たちは悪天候のためか配信を休止していた。


「こんな嵐の夜に心霊配信するバカはいないよね······」


 結羽は素早くスマホ画面をフリックしながら、リアルタイムで心霊配信をしているアカウントを探した。すると、見覚えのあるトンネルがスマホ画面に現れた。すぐに、フリックを止めた。


「これは女井戸トンネル······」


 スマホ画面は、ちょうど女井戸トンネルの入口を映し出していた。トンネル入口付近の木々が風雨で揺れている。

 ただ、いつもと違うのは配信映像の中に2人の男が映っていたことだ。どうやら、女井戸トンネルにいる心霊配信者は3人らしく、1人は撮影担当のようだ。

 配信映像に映る2人は、それぞれが傘をさしている。映像担当の男も傘をさしているらしく、傘を叩き続ける雨の音が聞こえてくる。


 結羽は、配信映像に映る2人の男に見覚えがあった。1人は『霊騎士』、もう1人は『イカメン2号』という名前で心霊配信を行っている。ちなみに撮影担当が『イカメン1号』だった。

 キャップ帽、マスク、上下の服装を黒一色で統一させた服装をしている霊騎士は、傘をさしながら何かを話している。それに対して茶髪で右耳にピアスをしたイカメン2号は、口をパクパクさせながらトンネル内を指さしている。

 結羽はスマホのボリュームを上げた。


「······でぇ雨だな。さっさとトンネル入ろうぜ!」


 イカメン2号が霊騎士に向かって叫んでいるが、傘を叩きつける雨の音で、よく聞き取れない。


「入ろ、入ろ。ほら、1号もトンネルに入んな」


 霊騎士がカメラ目線のままカメラに向かって手招きすると、配信映像はトンネル内に移動した。


 結羽は、霊騎士やイカメンのアカウントはフォローしていない。

 彼らも心霊配信を行ってはいるが、霊が見える結羽からしたら、デタラメが多いのだ。霊がいないのに、物音がするだけで霊の仕業と決めつけたり、墓地や他人の土地を無断で入っては撮影を繰り返す。

 結羽は、そういった行為を平気で行う動画配信者を好ましく思っていなかった。配信場所が女井戸トンネルでなければ、彼らの心霊配信を見ることはなかった。


「よーし! いま話題の女井戸トンネルに入りましたー!」


 イカメン2号がトンネル内を歩きながら大声を出した。薄暗いトンネル内にイカメン2号の軽い声が響く。

 一方の霊騎士は黙々と歩いている。そこへ撮影担当のイカメン1号がスマホを取り付けたジンバルを手に、トンネル内を撮影しながら実況を始めた。


「途中からライブを見始めた人に説明するねー! 今夜は、最近、ヤバいと評判の女井戸トンネルに来てるんだよね! 何がヤバいって、ここを訪れた心霊配信者が帰りに事故ってるんだよ。しかも、2日連続で。これ、ヤバいでしょ! で、今夜は俺たちがその謎を解き明かしに来たってことさ!」


 軽快な話し方で実況するイカメン1号。


「霊が見れないのに謎を解き明かせるわけないじゃん」


 結羽は、スマホ画面を見つめながら冷たく呟いた。


「やっほー!」


 突然、トンネルを歩いていたイカメン2号がトンネルの奥に向かって叫んだ。一方の霊騎士は、黙々と歩いている。


「あ、そうそう。今回は霊騎士くんとのコラボ配信なんだよ! 霊騎士くんのファンは知っての通り、彼は霊が見えるらしいんだ。俺たち、イカメンは霊感鈍感だから、頼もしいよな!」


 イカメン1号は実況の中で霊騎士を紹介した。紹介された霊騎士は、黒いキャップ帽に黒いマスクをしているので素顔は分からないが、女性ファンからは“マスクイケメン”扱いされていた。


(ふーん、霊騎士は霊が見えるんだ······)


 霊騎士は霊が見える、ということを知った結羽は、その能力が本物かどうかを見極めてみることにした。なぜなら、霊能力もないのに霊能者を名乗る人が少なからずいるからだ。


 霊騎士は、周辺を窺いながら歩いている。

 そのときだった。結羽は、トンネルの奥の闇で人影が動いたことに気がついた。

 それは、タケハルやレイレイの心霊配信でも見かけた若い女性の霊だった。昭和を思わせるふわりとした髪型に白いブラウス、水色のロングスカート姿。

 若い女性の霊は、霊騎士とイカメン2号に近づくと歩みを止めた。その直後、霊騎士は若い女性の霊に近づいていく······。






(つづく)

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