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慰霊師  作者: 皇南輝
第3章 心霊配信すると事故るトンネル
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3-9 レイレイの心霊配信休止の理由

『しばらく心霊配信をお休みします。楽しみにしていた視聴者の皆さん、ごめんね!』


 心霊配信者レイレイのアカウントを開くなり、心霊配信休止の告知が目に飛び込んできた。

 結羽は驚きのあまりスマホ画面を呆然と見つめた。


(どういうこと?)


 女井戸トンネルを訪れたタケハルに続いて、レイレイにまで異変が起きて心霊配信が休止になってしまった。


 結羽はレイレイの心霊配信休止の告知を何度も読み直した。この告知を読んで分かることと言えば、これが投稿されたのは今朝ということだけだ。


(今朝、レイレイが休止告知の投稿をしたということは、おそらく無事に帰宅しているはず。そのうちに何かしら詳細を報告してくれるよね······)


 そう推測した結羽だったが、その夜、レイレイからの配信や投稿はなかった。



 翌日。

 ハンバーガーショップでのアルバイトを午前中に終えた結羽は、近所のカフェでひとりカプチーノを飲んでいた。

 2人掛けの丸テーブルでひとり座り、スプーンでカプチーノの泡を無造作につつきながら、女井戸トンネルでの心霊配信を思い返していた。


(タケハルとレイレイ、2人の心霊配信中に現れた女性の霊。配信映像が停止フリーズしたときに映りこんだ手。そして、黒い影。その後に起きたタケハルの自動車事故とレイレイの配信休止。いったい女井戸トンネルで何が起きているんだろ······)


 結羽は、カプチーノの泡がエスプレッソに飲み込まれてしまうまで、無意識にスプーンを回し続けながら思考に没頭した。


(いくら考えても分かるわけないよね······)


 結羽はため息をつくと、カプチーノカップを口元に運んだ。再び、カプチーノカップをソーサーに戻すと、おもむろにスマホ画面をタップしてレイレイのアカウントを開いた。


「あ! 投稿されてる」


 レイレイは短い動画を投稿していた。結羽は、ワイヤレスイヤホンを取り出して右耳に装着してから、レイレイの動画をスタートさせた。

 動画は白い雲が浮かぶ青空の静止画像が映っているだけだ。動画開始後、すぐにレイレイの声が流れてきた。


『こんにちは、レイレイです。視聴者の皆さんから配信休止に対する多数の問い合わせがあったので、えっと、その問いに答えるべく、いま動画を撮影しています』


 レイレイの声は普段通りだが、どこか神妙な話し方だった。


『まず、私が······私の心霊配信を休止させてもらうことにした理由なんですが、えっと、事故を起こしてしばらく車が使えなくなったからです。そうです、女井戸トンネルの近くでした。ちょっといろいろあって、心霊配信が突然終わってしまい、申し訳······視聴者の皆さんには申し訳なく思っています。また、車が修理から戻り、戻ったら心霊配信を再開しますので、待っててください。みんな、心配かけてごめんなさい。レイレイでした······』


 レイレイの投稿動画を見終えた結羽は、どこか納得いかなかったのもあり、小さく唸った。投稿動画のレイレイは緊張していたのか、心霊配信中に見せる歯切れの良さが失われていた。


(レイレイは、何か隠してる······)


 結羽はそう思いながら、レイレイが動画を投稿した時間を確認した。

 動画投稿時間は、朝8時すぎだった。

 結羽はカフェの窓から交通量が多い大通りの景色をぼんやりと見つめたあと、再びスマホ画面に視線を落とした。


『慰霊師·ゆうは です。投稿動画を見ました。無事で何よりです』


 結羽はレイレイのアカウントにメールを送信した。もしかしたら“霊が見える私”に事情を打ち明けてくれるかもしれない、と期待してのことだったが、レイレイからの返信はなかった。


 ただ、結羽にとって嬉しくなるような小さな変化があった。


 動画配信·視聴サイトに登録している結羽のアカウントのフォロワーが30人ほど増えていたのだ。

 今まで視聴用として登録していたアカウントだったこともあり、フォロワー数は一桁。しかも、出会い目的なのか見知らぬ男ばかりだった。

 今回増えたフォロワーは、男性も多いが女性も多く、そのほとんどがレイレイの心霊配信後に増加していた。


(レイレイの心霊配信が、宣伝効果になったみたい。よし、これからいろんな心霊配信に参加して『慰霊師·ゆうは』の宣伝をしていこっと!)


 結羽は宣伝の道筋に目星がついたことが嬉しくなると、微かな笑みを浮かべながらカプチーノカップを口元に運んだ。






(つづく)

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