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慰霊師  作者: 皇南輝
第3章 心霊配信すると事故るトンネル
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3-8 配信映像に映りこんだ、さらなる異変

「ぎゃあああ!」


 突然、配信映像が激しく揺れ動きながらレイレイの悲鳴があがった。スマホ画面を見つめていた結羽は驚いてスマホ画面を注視した。


「え、なに?」


 何が起きたのか理解できない結羽は、悲鳴の原因を見極めようと目を見開いて配信映像を見ていたが、レイレイは走っているらしく、映像が激しく揺れ動いて状況が分からない。


 突然のレイレイの異変に視聴者たちの驚きのコメントが次から次へと湧いては新しいコメントに押し流されていく。


(レイレイさんに何があったんだろう?)


 しばらくすると、配信映像が落ち着き、トンネル付近の森が映し出されていた。レイレイの激しい息遣いが聞こえてくる。すると、今度はレイレイの笑い声が聞こえてきた。


『あはは。みんな、ごめんねー!』


 先ほどまで揺れに揺れていた配信映像は落ち着きを取り戻し、トンネルの入口付近を静かに映し出している。寂しげなトンネルの映像から聞こえてくるのは、レイレイが発する笑い声だけだ。


『もう、ホント、自分でもおかしくなっちゃう。みんな、びっくりしたでしょ。でも一番びっくりしたのは、この私なのー!』


 レイレイは笑いを堪えながら実況を続けている。

 結羽は、レイレイが可笑しそうに話す声を聞きながら、レイレイが悲鳴をあげた理由を察した。


『さっき、トンネルを歩いていたら、私の額に虫が止まったのー! それでびっくりして走り出したんだけど、手で払いのけてみたら、カナブンだったのー! カナブンで悲鳴をあげちゃったのが自分でも笑えてきちゃって、ホント、みんな驚かせてごめんねー!』


 結羽は、レイレイがあげた悲鳴の原因を知って安堵した。

 視聴者たちもレイレイに何事もなかったことで安心したらしく、ライブチャットには多くの安堵コメントが流れた。


 レイレイが視聴者たちのコメントに対応している間、配信映像はトンネル内を映し出していた。結羽はスマホ画面を通して、ぼんやりとトンネル内を見つめた。すると、トンネルの奥から白いブラウスと水色のロングスカートを身につけた女性の霊が速足で近づいてくることに気づいた。よく見ると、女性の霊の表情が険しい。それは、必死の形相のようにも見えた。


「な、なんなの······?」


 結羽は、レイレイに急接近してくる女性の霊の意図が読めず、頭の中が真っ白になった。さらに、呆然と配信映像を見つめていると、トンネルの奥から、闇とは違う黒い影のようなものが浮かび上がった。

 次の瞬間、突然、配信映像が停止フリーズした。音信も不通になり、レイレイの声が聞こえてこなくなった。

 結羽が見ていた配信映像は、単なる“トンネル画像”と化してしまった。


「あっ!」


 そのとき、結羽は思わず声をあげた。その声があまりにも突然で大きかったため、すぐ隣で固まるように眠っていた白猫の霊·ホイップが驚いて目を覚ました。


「また、あの手だ······」


 固まってしまった配信映像はトンネル内を映し出していたが、その画像の右上に女性の手らしきものが映り込んでいた。


 結羽の全身に緊張が走った。なぜなら、女井戸トンネルで同じような現象を経験したタケハルが、その直後に女井戸トンネル近くで自動車事故を起こしていたからだ。


 画像に映り込んでいる女性の手は、結羽以外の視聴者たちにも見えているようで、レイレイのライブチャットは大騒ぎになっていた。


『手が見える!』

『怖い』

『レイレイさん、大丈夫かな?』

『まだ画面がフリーズしてる』

『電波悪くね?』

『なにあの手は?』


 映りこんだ手を恐れるコメントやレイレイを心配するコメントが次から次へとライブチャットに押し寄せていた。さすがに、結羽もレイレイのことが心配になってコメントを送った。


『レイレイさん、手が現れたから、気をつけて!』


 しかし、結羽が送ったコメントはレイレイが目にする前に闇に葬られた。突然、配信終了となって、画面が真っ暗になったからだった。


「あ、配信終了しちゃった······」


 結羽は嫌な予感がした。それは、タケハルの女井戸トンネルでの心霊配信のときに感じた予感よりも大きな不安だった。


 結羽は、配信映像が停止フリーズする直前に見えた黒い影を思い出した。


(あの黒い影は、なんだったの? それに、どうして女性の霊はレイレイに急接近してきたの?)


 結羽は、スマホを手にしたまま考え込んだ。しかし、結論を出せるわけがなかった。


 その夜、結羽はレイレイの心霊配信が再開されるのを待ったが、いつのまにか眠りについていた。



 翌日の夜、レイレイの最新投稿を目にした結羽は驚きとショックのあまり、スマホを手にしたまましばらく全身が硬直してしまったのだった。






(つづく)

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