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047 四天王と魔法少女。

これまでの経緯を誠が話すと、カイザーは深いため息をついた。


「はぁ……なるほど、そんなことが……たしかにそういった禁術が過去に存在したような伝記はあるが、ほとんど御伽噺のようなもんだ」


カイザーがテーブルをコンコンと指で叩くと、その場にお城を立体的に模した映像が現れる。

さらに指をパチンと鳴らすと、秘書らしき女性が飲み物を運んでくる。


「これは光魔法で再現したものだが、そこの嬢ちゃんが見てるケアレン城だ。何か違和感に気づいたか?」


「……結界かな?」


「よくわかったな。見た目じゃわからん特別製なんだが」


「まーなんとなく?」


他の6人も窓から見える城を見てみるが、首をかしげていた。


「……誠、わかるか?」


「いや、僕じゃわかんない」


わからないので、皆魔法で再現された城の方へと視線を戻す。

すると、カイザーは話を続けた。


「この城の城主は、まぁ……色々と逸話というか、呼び名も多くて統一されてないんだ。俺も伝記に残されていることしか知らないんだがな。創成の魔法使い、世界の創造主、魔法の産みの親、魔女、魔王、魔を統べる者、神の使い……まぁどれが本当かは今更知りようがない」


「なんか……異名の欲張りセットだな」


「ぶっ!」


隼人の何気ない言葉に、華蓮は飲み物を吹き出した。


「桜田さん大丈夫?」


「だ、大丈夫だよ若菜っち。ちょっと隼人っちの言葉がツボっただけだから」


その割に顔は笑ってないなと、誠は違和感を感じる。


「しかし伝記ということは、今あの城に持ち主は……?」


「あぁ、今はいない。とはいえ、城主の遺産は数多く残されていたらしくてな。それを巡って過去に戦争すら起きたことがあるほどだ」


「戦争……」


「あぁ、ここが魔法都市と呼ばれているのも、城主が遺した魔法の影響を受けているんだろうな」


映像で再現された城に、薄い霧がかかる。

これがきっと特別製の結界なのだろう。


「じゃあ俺たちがこの世界に召喚されたのって……」


「絶対とは言い切れないが、そんな馬鹿げたことができる魔法なんて城主の遺産ぐらいしかありえん。伝記によればここも戦場になったらしいからな、その時に流出していた可能性は十分にある」


「ということは、もしかして帰る手段も……?」


「調査はとっくの昔に終わっているはずだろうからなんとも言えんな。ただ、凍結された研究の中にあるかもしれん」


ようやく帰れる可能性が出てきたことで、6人の表情はパッと明るくなる。

しかし、カイザーは神妙な面持ちで新たな映像を映し出した。


「その上でこれを見てほしい」


映像には、よく知った者たちが映っていた。


「ゆ、勇人……!?」

「相川くんに、南さんもいるよ!」

「みんな魔物と戦ってる……?」


魔物と戦う姿を見て、健吾たちは少し安心したような表情を見せる。


「戦争に参加してるわけじゃないんだな」

「ちょっとホッとしたかも」

「みんな魔物相手に全然怯んでないし、心配して損したな」


しかし、華蓮の表情は少し強張っていた。


「局長さん、上げて落とすのはちょっと酷なんじゃないかな」


「……そうだな、信じ難い話かもしれんが、あの魔物は国境沿いの街イニスを守る警備兵……だった者たちだ」


健吾たちはカイザーの言っている意味が理解できなかった。


「警備兵って……」

「どう見ても魔物にしか見えないけど」

「イニスって俺らも通った街だよな」

「たしかに見たことある建物があるような気も……」


時折映り込む背景には、たしかに見覚えがあった。

そこで誠はハッと何かに気づいた。


「……もしかして、ケアレン城の遺産……?」


「あぁ……人を魔物に変える禁術……伝記にはそう記されている。王国はとんでもないものを甦らせてしまったようだ」


人を魔物に変える禁術と聞いても、どこか他人事のように思えた。

ただ、勇人の戦う映像を見て、事の重大さを理解する。


「じゃ、じゃあみんなが今戦っているのは……」


「……そういうことになるな。当人たちがそれを知っているかまではわからんが……」


健吾はいてもたってもいられなくなり立ち上がる。


「止めないと……!」


その腕を誠は掴んだ。


「それはどっちを?」


「どっちって、そんなの……」


勇人に決まってる。

そう言いかけたところで、ふと健吾は思い悩んだ。


(魔物と戦うなって言えばいいのか……? 元は人間だぞって、俺の言葉を信じてもらえるだろうか……)


みんなを裏切るように王国から逃げた自分の言葉を、信じてもらえる自信がなかった。


華蓮は空気を読まずに、映像をいろんな視点に切り替え始める。


「魔物相手ならみんな気兼ねなく戦ってくれるから、って考えだと思うけど、やることエグイよねー」


「そんな……そんなの戦争の道具じゃねぇか。何が英傑だよ!」


隼人は思い切りテーブルを殴りつけた。

静まり返る室内で、カイザーは俯いたまま口を開く。


「さて、ここまでキミたちに全てを包み隠さずに話したのには理由がある」


「理由……?」


「あぁ……悪いね」


カイザーがパチンと指を鳴らすと、壁がスッと消えさり、代わりに武装した兵士たちが壁のように立ち並んでいた。


「んなッ、これはどういうことですか!?」


「もちろん、身柄を拘束させてもらうよ。英傑召喚された者たちは、厄介な力を持った者が多くてね。前線に立つ彼らと交渉するなら、キミたちを使うのが適任だろう?」


「人質ってことですか……」


「あくまで手段の一つだよ。まずは魔物可への対処を考えないといけないがね」


健吾は何もない空間から、スキルによって収納していた剣を取り出し構える。

それを見た兵士たちも剣を抜いた。


健吾は陽子に目線で合図を送る。

こういう時、頼りになるのは陽子の花火だ。


「……」


無言で頷いた陽子は、その手に小さな花火を作り出した。


「手荒なマネはしたくなかったんだが、これも戦争なんでね、恨まないでくれよ」


カイザーから殺気が放たれる。

おそらく誰かが動けば、一斉に戦いが始まるだろう。


緊張感の増す室内だったが、華蓮はなおもケアレン城を眺めていた。


(そろそろ潮時……かな)



◇   ◇   ◇   ◇



女帝のオリビアの鋭い視線がバウアーを射抜く。


「覚悟はいいだろうね」


「へっ、そっちこそ覚悟しやがれ」


バウアーはゴクリと喉を鳴らす。

その緊張は、同じ四天王であるコウカクとアスモデウスにも伝わり、場は緊張に支配された。


「私はクイーンの3カードよ!」


「悪いな、俺様はジャックの4カードだ」


オリビアはガクリと膝から崩れ落ちた。


「バカな……私がこんなちっこい筋肉ダルマに負けた……?」


「ふん、ちっこいは余計だ」


バウアーはテーブルの上にある金貨を回収する。

すると、コウカクがテーブルの上で本を広げた。


「次はこれなんてどうだ。大富豪というらしいが、地域によっては大貧民とも呼ぶようだ」


「ふむ、おもしろそうだな。ではこれでいこう」


アスモデウスは、小さな体でカードを振り分け始める。

そこでふと疑問に思った。


「……俺たちこんなことやってていいのかな?」


「これからの方針を先に10回勝った奴が決める約束だろ。とりあえずは俺様の1勝だ」


「それはわかるんだよ、公平を期すためにこんなカードを使っているのもな。ただ……」


アスモデウスは周囲を見渡した。


「……何でエントランスホールなんだ?」


広いエントランスには、小さなテーブルが1つと椅子が4つあるだけだった。


「仕方ないでしょ。ここが一番手入れが行き届いてるんだから」


オリビアが廊下に続く扉を開くと、見るも無残なほど散らかっていた。

すると、コウカクが何かを思いつく。


「よし、戦績が一番悪い奴を掃除係にしよう」



――――その時、突如としてエントランスの扉が吹っ飛んだ。



「……修理係も必要だな」


「いや、その前に私たち……死んだかもしれない」


オリビアは元々正面扉があった場所を、震えながら指差している。

そこには、先ほど扉に向かって蹴りを放った紅葉の姿があった。


「ほら、押したら開いたじゃん」


「これは壊したって言うんだよ」


グリ公に呆れられながらも、紅葉はエントランスに足を踏み入れる。


「へー、中はけっこうキレイに……」


紅葉はピタリとその場で足を止めた。

4人の視線と、紅葉の視線が交差する。


((((なんか知らんけど急にヤバイのが来た))))


恐怖する4人に対し、紅葉もまた恐怖していた。


(ヤバイ……空き家じゃなかった)

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