↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/59

041 戦う魔法少女たち。

魔法少女ゴールドは、華麗に空を舞っている。

一見すると巧みに敵の攻撃を躱しているように見えるが、その表情に余裕はなかった。


「はぁ…はぁ……そんな、私たちの魔法がまったく効かないなんて……」


たった1体の怪人相手に、今はただひたすらに逃げることしかできなかった。

向こうは空を飛べるわけではない。

地上から追ってきているというのに、未だ突き放すことができないでいる。


『ふはははっ、どこへ行こうというのかね』


早歩きのように追って来る姿は、とても不気味だった。


「アクアもやられちゃったし、どうすれば……」


「お困りのようね!」


ゴールドの前に、5人組の少女が現れる。


「あ、あなたたちは……そう、必死に逃げるあまり県境まで来ちゃってたのね」


魔法少女は基本的にチームに分かれ、都道府県ごとに担当エリアが分かれている。

つまりこの5人組はお隣さんというわけだ。


「あの怪人、ちょっと厄介みたいね」


「えぇ、私の魔法がまったく通じなかったわ。それどころか、アクアを吸収してますます力を増してるみたい」


「魔法少女を吸収……?」


「まるで体に取り込んでいくみたいで気味が悪かったわ……」


しかしこれは好機だ。

この5人組は自分より経験の長いベテランである。

力を借りられれば、この窮地を脱することができるかもしれない。


「……ルージュの姿も見えないわね。まさか……」


「その心配はないわ。ルージュは数ヶ月前から行方不明だから」


そういえばこの5人、以前ルージュに突っかかって返り討ちにされてたっけ。

遺恨があると面倒だし、やる気を出してもらって何とかあの怪人を倒してもらわないと。


「以前ルージュがやったことは謝るわ。だから今は手を貸して頂戴」


「いや、その前に行方不明が心配ないってどうなの?」


それは心配ないでしょ、ルージュだし。


「ま、まぁ手を貸すのはいいわ。どの道、あなたたちがやられたら今度はこちらの番なのでしょうから」


「……ありがとう」


これでもう少し時間が稼げそうだと、ゴールドは5人と共に再び怪人の元へと向かって行く。


「あの怪人、弱点とかはないの?」


「あったらこんなことになってないわ。そもそも攻撃手段が無茶苦茶なのよあの怪人」


触手を伸ばす、ビームを放つ、周囲にある物をとにかく投げつける、変形、分身、数えだすとキリがない。

今のところあまり知性を感じないのがせめてもの救いか。


「そう……ま、あれだけ大きければ、とりあえず包囲殲滅が無難ね。行くわよみんな!」


各々魔法のステッキを手に、怪人に向かって跳びかかる。


――その時、ゴールドは背後にゾクリと何かを感じた。

しかし、振り返ってもそこに何かあるわけではなかった。


(水たまり……か)


そんなに大きな水たまりではないが、アクアであれば移動手段として使える。

怪人に吸収されていなければ今頃……いや、これは今考えたところで仕方がない。


ゴールドも5人の後を追い、攻撃に参加する。

これだけ的が大きいと外しようがない。

ただあの怪人は攻撃手段が多いので、離れていても決して油断が許されない存在である。


その意識の違いが、ゴールドの身を救うことになった。


(多彩な攻撃手段……吸収…………まさかッ!?)


嫌な予感が脳裏を過り、振り返ったゴールドは青ざめた。

水たまりに――――人型の何かが立っている。


「みんな逃げ――


『一人勘のいい奴がいたか』


ゴールドの警告を遮るように、黒い人型の影が戦闘中の5人を包み込んだ。

――――いや、飲み込んだと言ったほうが正しいのかもしれない。


「まさか5人も吸収して……?」


『デコイに必死な姿は滑稽だったぞ』


知性がないと思っていた自分が浅はかだった。

本体は大人の男性程度の大きさで、黒いモヤがかかっていて顔は見えない。

それでいて、少なくともこちらを罠に掛けるだけの知性はある。


「……くッ!」


ゴールドは可能な限り速度を上げてその場を離れた。


『ふむ……まだ空は飛べないのが惜しいな』


それでも確実に、ゴールドが飛び去った方向へと歩みを進めて行く。


(こんな時に一体どこで何をしているのよ……ルージュ!)



◇   ◇   ◇   ◇



「ん……?」


今誰かに呼ばれた気がした。

……うん、日差しが眩しくて今日も良い天気だ。


空を見上げた頭上に、黒い影が迫って砕け散った。


「あいたっ」


「あ……当たった?」


それが木剣だと気づいた時には、ヴァネッサが信じられないものを見たような表情で肉薄していた。

その後方で、ガロードと健吾が膝に手をついて苦しそうにしている。


砕けたのは木剣か……油断したわ。


「あー……ふっ、もう教えることは何もないわね」


まぁ何か教えた記憶もないけど。


「ハァ…ハァ……3人がかりでやっとか……助かったぜ坊主」


「ゼェ…ゼェ……坊主じゃない、健吾だ」


2人ともその場に座りこんだ。

しかしヴァネッサだけはこちらに手を差し出した。


「ありがとうございます師匠。ただ、私は今の一撃に納得はいっていません。師匠はどこか上の空のようでしたし、木剣とはいえ痛い程度で済まされたのも不本意なので」


「すごい高身長だね」


「向上心です。背は普通です」


「そっか……」


言い間違えただけじゃん……実際私よりかなり背高いし。


「マジで健吾が手も足も出てねぇ……」

「何ていうか……すごかったね」

「何してるのかまったく見えなかった……」


今日は健吾たち一行が見学しているので少し賑やかだ。

見世物じゃないんだけどね……。



「強くなれたと思ってたんだけどな」


健吾は空を仰ぎ見て、自身の存在の小ささを実感していた。


「お疲れ様健吾くん」


「あ、あぁ、サンキュ」


手拭いを手渡した誠に、健吾は一瞬ドキリとした。

髪型を変えたのは危険すぎる変化だ。


「ひひっ、作戦通り意識してるみたいね」


恵はその光景を食い入るように見ている。


「作戦通り?」


「そうそう、あの2人じれったいからさぁ」


「まこっちちゃん男なんでしょ?」


「だからいいんじゃない。男の子は男の子と恋愛すべき――――」


恵は慌てて背後を振り返った。


「……赤峰さん、今のは聞かなかったことにしてもらえると……」


「何で?」


純粋に首を傾げる紅葉に、恵はどう答えるべきか悩んだ。


(くっ、さすが魔法少女、なんてピュアなの)


しかしここで全てを台無しにされるわけにはいかない。

恵は考えた……最善の一手を――――


「……尊いってどういうことか知ってる?」


「概念は知ってる」


「無粋なことは止めようよ、ってことでどうか納得していただけると」


「なるほどね」


わかんないけど、よくわかった。

同じ眼鏡女子だからこそ通じ合えることってあるもんだ。

……私は伊達だけど。



なんとなく和やかな雰囲気になっていた修練場だが、まだふらついているはずの警備兵たちが機敏に整列を始めた。

その先頭には、ヴァネッサとガロードが立っている。


「師匠、短い間でしたがお世話になりました」


おっと、これは別れの挨拶に違いない。

師匠として毅然とした態度でいなければ。


「本気を引き出せなかったのは心残りですが、次会った時には必ずや――――」


言葉を遮るように、ヴァネッサの元に一人の兵士が駆け寄った。

他の警備兵たちとは違う装備なので、別の部隊なのかもしれない。


「なにッ!? それは本当か!?」


何かを聞かされたヴァネッサの表情が険しくなる。


「どうしたヴァネッサ」


「ガロード、実は……」


ヴァネッサの視線はこちらへと向く。

どうやらあまり人に聞かれたくないらしい。


「あーしらはお暇した方がいいのかな」


「そだね、華蓮たちは帰ったほうがいいよ」


「たぶんくれたんもだよー」


そんな馬鹿な……。


「いえ、大丈夫です。本来なら外部の人間に聞かせるような話ではないのですが、おそらくすぐにわかることなので……」


ヴァネッサは神妙な面持ちで、その先の言葉を口にした。


「……我が国は王国からの宣戦布告を受けました。すでに国境沿いでは攻撃を受けているようです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。