↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/59

018 足踏みする6人。

「上手い事釣れたよ!」


「ゴブリン3、ホブゴブリン1、そっちに誘導するぞ!」


「でかいのは俺が足止めする、その間に処理してくれ!」


陽子の花火で誘き寄せた魔物を隼人が誘導し、一番厄介な存在を健吾が引き付ける。

それを確認した誠は、背後に立つ若菜の様子を確認した。


「3体か……若菜さんいける?」


「大丈夫、問題ない……ロックオン」


3体のゴブリンが、ほんの一瞬だけ弓の射線上で一直線に重なる。

――その瞬間、1本の矢が漏らすことなく射貫いた。


「ふぅ……高校はバスケ部じゃなくて弓道部にしようかな」


【探偵】の誠による行動の予測と、【測量士】の若菜による正確な狙撃は非常に相性が良かった。


(一番冒険者に向いてるって言われた時は、一体何の冗談かと思ったけど……)


言われるがままなけなしのお金で買った弓矢は、非常にしっくりきていた。


「よし……っと、健吾くんのほうは……問題ないみたいだね」


誠の視線の先で、健吾がホブゴブリンの喉元を剣で突き刺していた。

初めは魔物相手でも殺すのを戸惑っていた6人だったが、今では躊躇なく殺せるようになってしまった。

数日前は生々しい感触に震えが止まらなかったり、吐き気を催していたというのに……。


「隼人くん腕怪我してるよ」


「ホントだ、走り回ってたから枝にでも引っかけたかな」


恵が隼人に駆け寄り、腕の切り傷を治療する。

【修繕師】は、無機物だけでなく人の肉体ですらある程度の修繕を可能にしていた。


「変な職業ばっかりだと思ったけど、案外なんとかなるもんだな」


「お疲れ様健吾くん、今日はこの辺で引き上げようか」


6人は、ここ数日国境沿いの街リリンガルで、冒険者ランクを上げるために活動していた。

本当はさっさと国境を越えたかったのだが、とある問題が3日前に発生していたのだ……。


………………


…………


……


「えっ!? 俺らの冒険者カードじゃ国境越えられないの?」


隼人は驚きの声を上げる。

この国は危険だと思った6人だったが、国境を越えようとしたところ自分たちにはその資格がないと知ることになった。


「そりゃね、そんな作っただけの冒険者カードで国境を越えられたら、犯罪者は亡命し放題だろ?」


そう国境警備隊に説明され、6人はリリンガルの街へと引き返す。

どうやら登録しただけの冒険者カードは低ランクなため、国境を越えられるほどの身分証明にはならないらしい。


「そもそも審査自体数日待ちって、どんだけ混んでるんだよ」


仮に通る資格があったとしても、隣国への入国審査がかなり混雑していた。

6人がこの街に辿り着いた時には、すでに多くの冒険者が足止めを食らっていたほどだ。


「どの道入国審査が混雑してるのなら、今のうちに冒険者ランクを上げておくのも悪くないかもね」


………………


…………


……


という誠の意見で今に至る。


登録したての冒険者ランクがFで、今はEに上がっている。

国境を越えたいなら、最低でもDに上げる必要があるらしい。

そこまで冒険者としての信頼と実績を積み重ねて、ようやく国を渡れるだけの身分証になるとのこと。


「そういやあそこにある山、数日前はもっと高かったらしいぜ」


リリンガルに戻る最中、隼人が指差した方向に少し高めの丘が見えた。


「……山?」


「俺もくわしくは知らないけど、ある日突然山の上半分が消えたんだとか」


……異世界だし、そういうこともあるか。

もう今更その程度では驚かなくなってしまった。



リリンガルの街へ着くと、門番に向かって冒険者カードを提示する。


「あぁお前らか、通っていいぞ」


顔なじみというほどではないが、この街に来てからというもの、毎日のように狩りをしていたら覚えられてしまった。


「あとどれぐらいでDランクになれるんだろうな」


「さすがにまだまだかかるだろ、俺たちは6人だから貢献度も6等分なわけだし」


とはいってもあまりモタモタはしてられない。

その辺り、誠はどう考えているんだろうか。


「そういえばダンジョンっていうのがあるんでしょ? そこに行けばもっと稼げるんじゃない?」


ここ最近一番活躍している若菜がそう提案した。

以前は戦うことに尻込みしていたのにこうも変わるとは……。


「ダンジョンか……魔物の巣の殲滅なら貢献度も高いし、たまに財宝なんかもあるらしいな」


「それそれ、隼人くんの足なら探すのもそんなに難しくないよね」


隼人と若菜は乗り気だったが、健吾はやめておいたほうが無難だと思っていた。


「どう思う誠?」


「やめておいたほうがいいだろうね」


誠が同じ意見で、少しホッとする。


「わかり合っている二人……ふふっ」


それを観察する恵の表情に、少しゾッとした。


「いけると思うけどなー。俺らパーティとしての相性抜群に良いし」


「だよね、ここまで大きなケガもなくて順調だし、そろそろ上の段階に進んでもいいんじゃないかな」


隼人と若菜は誠を説得しようと試みるも、それはあっさりと否定される。


「ここまで順調なのは、そういう環境を選んで戦っているからだよ。ダンジョンって要は洞窟でしょ? 人工的な建物ならまだしも、天然の洞窟で同じように戦えるとは思わない方がいいよ」


「いや、でもよ……」


食い下がる隼人に誠は鋭い視線を向けた。


「一から説明しようか? まず陽子さんの花火は洞窟内じゃ扱いが今以上に難しい。下手すると味方に被害が出る」


「あー……そもそも湿った洞窟内だと、不発の可能性があるかもね」


陽子は気まずそうに手を挙げてそう答えた。


「そして隼人くん、足場の悪い洞窟内で、さらに一切の灯りがない状態で外と同じように走れる?」


「それは……ほら、健吾となんとか上手い事連携してさ」


こっちを巻き込むなよ隼人……。


「健吾くんは、その剣を洞窟内で外と同じように振るえる?」


「その条件だけだと、できないとは言わない。でも確実に外より戦いにくくはなるだろうな」


狭い空間でも剣を扱うこと自体は可能だ。

ただどうしてもその剣筋は制限されてしまう。


「若菜さんは、狭い空間で正面にいる味方がずっと射線上にいても矢を放てるかな?」


「……無理だと思う」


若菜はシュンと落ち込んでいた。

多分、少し舞い上がっていた……調子に乗っていたと自己反省しているのだろう。


「そして僕や恵さんには攻撃手段がない。待っているのは全滅だね」


「全…滅……」


露骨に落ち込む隼人の肩を、健吾は軽く叩いた。


「俺らは別に冒険者として成功したいわけじゃないんだ。できることをやって行こうぜ」


「そ、そうか……そうだよな。今はとにかく、この国出るのを優先するべきだったな」


隼人は気持ちの切り替えが早い。

そして常に先頭を進んでくれるムードメーカーだ。

こいつが落ち込んでるとパーティの雰囲気に影響してしまう。


「ありがとう健吾くん」


「ん……」


ボソリと呟いた誠の感謝の言葉に、これぐらいは任せろといった具合で返事をする。

最近はこういうやり取りが多い。


「…………ふひっ」


その度に恵が怖い顔でこっち見てるんだよな……。





依頼の報告と討伐報酬を受け取り、6人は屋台巡りをする。

この街は人通りも多いので、安くて美味い店が多いのだ。


「今日は串焼きに煮込み料理だ」


宿に持ち帰ると、早速隼人はテーブルに屋台飯を広げた。


「昨日も同じじゃなかったか?」


「違うな、間違っているぞ健吾。昨日のとは味付けが違うんだよ」


……見た目じゃわからん。


「誠はそれだけでいいのか?」


「あーうん、僕は小食だから……」


誠の夕食は、まるで女子のお弁当のように慎ましかった。


(ま、異世界まで来て他人の食事に口出してもしょうがねぇよな)


気にせず健吾もテーブルに夕食を並べる。

2階の部屋にして良かった……窓から外を眺めながらとる食事はなんだか風情があっていい。

隣の部屋に泊まっている女子も、今頃夕食をとっていることだろう。


食事をしていると、ふと3階の窓から漏れる声が耳に入った。


「はー、やっと明日は私たちの順番かー。10日は待たせすぎだよ」


「大分足止め食らっちったねー」


この声……どこかで聞き覚えがあるような……?


「ま、この街のご飯美味しかったから全然良かったんだけどね」


くれたん気を付けないと太るよー」


「私いくら食べても太る気配ないから大丈夫」


「それはマジうらやま」


うーん、どこで聞いたんだろうな。

ま、あんまり気にしても盗み聞きしているみたいでよくないな。





翌日、狩りは休みにして装備の点検日にあてていた。

こういうのは大事だ、とくに剣は切れ味が落ちたら命に関わる。

それに鍛冶工房は見ているだけでもなんかワクワクする。


「兄ちゃん、歳の割りにベテランみたいな扱いしてんだな」


「わかるんですか?」


「そりゃな、これなら国境警備隊のザイードにも引けを取らねぇだろう」


「ザイード……?」


もちろんこの世界に知り合いはいないし、聞いたことのない名前だ。


「あぁ、若くして剣の腕一本で国境警備隊の副官にまでなった男だ。あいつが持ってる剣は俺の最高傑作なんだぜ。まぁ見た目はこれといって特徴があるわけじゃ――――


――――その時、突如屋根を突き破って何かが落ちてきた。


「な、なんだ!?」


「何か落ちて……!」


いや、何かじゃない――――人だ。


「これは……国境警備隊の人かな?」


顎がとんでもなく腫れ上がっており意識もないが、命に別状はなさそうだ。

しかし工房の店主は、何か気まずそうな様子で……


「あー……こいつがザイードだ」


「え?」


最高傑作の剣は、粉々に砕け散っていた……。


ブックマーク、評価、誠にありがとうございます。

大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。