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011 服を買う魔法少女。

武器の次は防具だ。

そう思い紅葉と華蓮は街中を散策していたのだが、満足のいく店は発見できなかった。


「防具はやめとこうかくれたん」


「そだね、異世界にはガッカリだよ」


本物の防具というものは着心地がよくなかった。

現代の衣服は偉大だ。


「でもいつまでも同じ制服ってのはちょっとねぇ……」


「そだよねー」


かといって外套は許さない。

せっかくの短剣が隠れてしまう。


「服は古着がメインっぽいねー。あーしは抵抗ないけど、くれたんはどう?」


「私もそんな気にはならないけど……」


そう思い二人は古着屋を覗くも、その表情はどこか不満気だった。


「なんか……どれも微妙」


女性物はワンピースかドレスが多かった。

当然これでは短剣は似合わないし動きにくい。


「他の店に行こうか」


「あーしもこの店は趣味じゃないかなー」


しかし他の店といっても当てがあるわけではなかった。

こんなぶらぶら歩いただけでそう都合の良い店が見つかるわけが……


「古着屋ジョーテイ……」


明らかに異質な店が一件建っていた。

周囲の建物と素材からして違う……不思議なお店だ。


「名前がダサいからやめとこ」


きっと服のデザインもダサいに違いない。


「でもくれたん、あの飾ってあるのって……」


「……どこかの制服っぽいね」


窓から見えた店内には、まるで現代のような女学生の制服が飾ってあった。


こういうの知ってるよ。

需要と供給のアレがナニして高額で取引されているんだ。


「いかがわしいお店はちょっと……」


私は華蓮とは違うのだ。


「そういうお店じゃないっしょ。ていうかあーしも行ったりしてないからね?」


「心を読まれた……?」



華蓮に手を引かれ、恐る恐る店内へと足を踏み入れる。

こうして見ると、制服だけでなくかなり現代的なデザインのものが多かった。


「ジャンルがバラバラなのは古着だからかな」


触れてみると、作りはしっかりとしている。

安っぽいコスプレ用ではないようだ。


「あーし的には、これが古着ってところが引っかかるけどね」


「……?」


古着屋なんだから古着なのは当たり前だろう……いや、ちょっと待てよ。

そうか、そういうことだったんだ。

だからあの人はあの時あんなことを……。


「事件の香りがするね」


「え? いや、そこまでは言ってないけど……」


人を名探偵モードにしておいて華蓮はノリが悪かった。

眼鏡を光らせたりしてみたいのに。


「悪いけど、服の出所は私も知らないよ」


紅葉と華蓮に気づいたのか、店の奥から一人の女性が姿を現した。

ボンッキュッボンッの羨ましい体系をしている。


「出所不明かぁ……」


「古着なんてそんなもんだろ?」


それもそうか。

『私が着てました』なんて写真付きで販売されてたらホントにいかがわしいお店になってしまう。


「あっ、これあーしの志望校の制服じゃん」


華蓮が手に取った制服は、私もよく知っているものだった。


「私の志望校もそこだよ」


「ここの制服可愛いもんねぇ。じゃあ来年からはくれたんと同じ学校だ」


「元に世界に戻れたらの話だけどね」


「戻れなかったら仲良く中卒ってことで」


華蓮は気楽に笑っているが、私の心中は穏やかではない。

魔法少女としての活動は日常生活にどうしても支障がある。

よって内申点はすでにボロボロなのだ。


「在庫はそこにあるだけだから、買うなら今のうちだよ」


見たところ在庫はちょうど2着あるようだ。


「じゃあこれ2着お買い上げで。うぇーいくれたんとペアルック」


「今も校章違うだけでしょ」


中学って割と似たデザイン多いからね。

でも一足先に高校の制服を着れるのはちょっと嬉しい。


「サイズは……問題なさそうだね」


店主は、ちょっと小さめだった方の制服と私を一瞬見比べていた。

……解せぬ。


「リボンも1年生の赤だよ。来年そのまま着れるっしょ」


「いや、さすがにその時は新品を着たいよ」


ついでにその時はサイズも合わなくなっているはず。

だって成長期だから……だって成長期だから!


「良い買い物したねー」


「謎なお店だったけどね」


目的を果たした二人は、雑談しながら店を後にしていく。

そんな二人の背中を見送る女性店主は、静かに笑みを浮かべていた……。


………………


…………


……


「うーん、あんまり古着感ないっぽいような……」


宿に戻って購入した制服を着てみると、どことなく新品のような着心地に感じた。


くれたん着るの早くね?」


華蓮は未だに袖を通していない……これでは私がすごいはしゃいでるようではないか。


「ふ、古着感を早く感じたかっただけだし!」


「それはちょっと変態っぽいよ?」


サイズも本当に丁度良くて、ついつい鏡の前で眺めて居たくなったりしてないし。

高校デビュー用にアレンジを今から考えたりとかしてないんだから!


「ま、とりまあーしも着れば晴れてお揃いに…………ちょっち胸キツイかも」


「ごぱぁッ!」


言葉の凶器は私の無い胸を抉った。

あるけどね!

それに成長期だし……それに成長期だし!



「まったく、ちょっと目を離したら何を遊んでるのさ」


精神的ダメージで項垂れていると、窓を開けて入って来たグリ公が呆れていた。


「ちょっとじゃない、半日でしょ!」


「遊んでたことを否定してほしかったよ……」


なんやかんや高校の制服に浮かれていたので否定はしない。


「まぁいつものことか。それより昼間現れた魔物の件だけど、魔法少女ルージュとしての感想を聞きたい。あの一際でかい魔物はどうだった?」


「でかいなと思った」


「……もうちょっと色々あるでしょ。例えば怪人とは違う特徴とか」


「んー……3階建てのビルぐらいかなと思った」


「例えてほしかったわけじゃないよ」


感想って難しい。


グリ公はため息をついて華蓮に視線を移す。


「華蓮はどうだった?」


「あーしにも聞くんだ? でも怪人との違いなんてあーしがわかるわけもないし……グリっち何か気になることでもある系な感じ?」


華蓮の言葉にグリ公は頷いた。


「ボクの気のせいだったらいいんだけどね。実は二人が戦っている時、離れた所で観察している人物がいたんだ」


グリ公曰く、その人物は人間とは違う特徴があり、どちらかといえば怪人に近い気配を感じたという。

さらには擬態して街へと向かう姿も目撃したそうな。


「ボクの憶測だけど、ひょっとしたらあの魔物の群れも人為的なものかもしれない。二人ともどう思う?」


グリ公は真剣な表情で尋ね、室内は一瞬だけシンと静まり返った……かのように思えた。


「どうって言われても……」


「あーしもそういうのはよくわかんないかな」


憶測に関する感想を求められても困る。

そろそろ夕食なのでお腹が空いたと答えたら良かったのだろうか。


「緊張感がないなぁ、何かを企んでいる人物がいるかもしれないんだよ? 未然に防ごうとか思わないの?」


「事が起こってからじゃないと、魔法少女は動けません」


怪人騒ぎが起こる前に変身してたら、それこそただのコスプレ少女になっちゃうよ。


「魔法少女ってけっこう世知辛いんだね」


「そだよー、だから来るのが遅いとか、華蓮はSNSに書かないでね」


こっちだって授業抜け出したりとかで大変なんだから。


「やっぱ大変なんだ?」


「そうだよー。この前も――――」


アクアやゴールドとは折り合いが悪かったので、こうして気軽に苦労話をできるのが少し楽しかった。

気づけば夕食の時間を過ぎてしまうほどだ。


二人は魔法少女の苦労話に花を咲かせながら、レストランへと向かって行った。


(……真剣な相談をしようとしたボクが間違ってたよ)

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