11 機転と罠
バタバタン
私の部屋から奴が出て来た。
奴の足音が近づいてくる。
どくん…
「もういいかい♪」
久了が楽しそうな明るい声をあげる。
絶対に隠れきれないと思っているんだわ。
バンッ
扉が開く音がした。
奴が同じ部屋にいる。
どくんっ
「……っ」
暑い。
何だか息苦しい。
汗が頬を伝う。
ガラガラッ
奴がクローゼットを開ける。
どくんっ
カシャカシャッ
ハンガーの音がする。
裾の長い洋服を動かしているのだろう。
どくん…
どくん…
ガタカタン
近くの収納ケースを開けている様な音がしてくる。
どくん
ジジジジジイー
ボストンバックが開けられる音がする。
どくんっ
「なぁんだ。 いないか…。 あーあ! 探すの飽きちゃった。 ふわぁ…。 眠いし…また後にしようっと…」
キィ…
タンタンタン…
遠くで響く足音を聞き、僅かな溜息を漏らす。
「ほぉ…」
奴が昨日から寝てなくて良かったわ。
奴が開けたボストンバックの隣にもボストンバッグがあった。
中にミニバックが入り、チャックは半分だけ閉まっている。
そのボストンバックのチャックが開き始める。
ジジジジィ―…
長い黒い付属の金具が付いていたので開け閉めしやすかった。
まさか小さい私が入っているなんて思わないものね。
チャック開けといて良かったわ。
本当に良かった…。
バックを持たれたら絶対にアウトだったもの。
突然の事で未だによく分からない…。
ボストンバックの中には先程まで着ていたワンピースも入っている。
ぶかぶかな下着一枚でバックから顔を出す。
奴がいない事をよく確認してからバックから出る。
それにしても歩きにくい!
脱げない様に胸元までパンツを引っ張る。
ホッとしたら喉が渇いた。
お腹は空かない。
食欲なんてない…。
確か…。
こっちのクローゼットではなく。
あっちのウォークインクローゼットの中に災害時用の飲み物が…。
…。
…遅い!
コレ!
どう戻るのよ!?
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
「……―っ!?」
突然聞こえた悲鳴に驚いた。
驚いて叫びそうになったが止まる。
聞き覚えのある声!?
理沙!!




