8 静寂と狂喜
残酷な表現ありますので苦手な方は、ご遠慮下さい。
とても静かな夜だった。
風が吹き抜ける音と共にカーテンが揺れる。
近くの山水の流れる音が小さく聞こえる。
いつもの様に鈴虫とカエルが鳴いている。
リビングで眠っていた老爺が怠そうに起き上がる。
酔って眠ったせいか短時間で目が覚め、水を口にしていた。
少し夜風に当たろうと窓を開ける。
静かさを保ちながら、足を踏み入れようとしている者がいた。
窓を割るつもりで近寄ったが静かに侵入出来る絶好のチャンスを逃すわけがなかった。
縁側に座り、虫の音に耳を澄ましている老爺を一瞬で刺殺する。
頸動脈から鮮血が出てきた事に笑みを浮かべる。
雲に隠れていた月光が侵入者を怪しくも美しく照らし始める。
風と共に何事もなく、静かにリビングの中へ月明かりと共に入っていく。
二つ敷かれた布団の一つに老婆が眠る。
しゃがみ込み膝に肘をつき寝入る老婆を覗き込みながら、楽しそうに考え込む。
薄いタオルケットの上から、心臓のある位置を定める。
先程使った血の付いた短刀を這わせる。
短刀に力を込めて上から一気に押える。
口元も手で覆ったが一回で狙いが定まった事に歓喜する。
「ふははははは…」
リビングに不適な笑みが零れ落ちる。
「あと二人」
月明かりを背負い呟きながら、短刀を引き抜く。
引き抜いた短刀の後を血液が弧を描くように追う。
ああ。
あと二人、静かになったら…。
やっと。
やっと。
遊べる。
澪ちゃん待っててね。
ポケットには持ってきたハンマーを忍ばせ。
キッチンの刃物を物色しながら楽しそうに並べる。
静かにドアを開け、階段をゆっくり上る。
二階の寝室を静かに目指す。
こんなにもワクワクと興奮するのは、ウサギ達と遊んだ夜以来だよ。
ドアを開けると夫婦が抱き合って眠る姿があった。
ゆっくり眺め、どちらからにするか考える。
動物では出来なかったことをしたい。
言葉が通じるから出来る事。
女の口を押える。
目を覚まし、視線が合う。
有り難いことに驚きで声が出ないようだ。
「声を出せば皆殺しだ」
耳元で囁く。
手を離しても声を出さない。
刃物を上に向けて立ち上がるように無言で指示する。
隣で眠っている男は泥酔しているようで全く起きる気配が無い事に笑えた。
目を離した隙に女が廊下を駆けていくのが見えた。
ダダダッ
グイッ
追いかけてロングのワンピースを引っ張り階段下へ突き落す。
ドンッ
ダンッ
ゴロンッ
ゴロッ
ドターンッ
転がり落ち、階段下で蹲り止まる。
それでも意識があるようで声を上げようとしていた。
痛みのせいだろうか。
それとも。
恐怖のせいだろうか。
声は出ていない。
それなのに。
必死で口を動かしている。
ああ。
なんて可愛いのだろうか。
ゾクゾクする。
今の音で誰かが起きてしまうかもしれないなぁ。
澪ちゃんまで鳴き声、我慢したかったんだけど…。
「仕方ないな。 急ぐよ」
痛みで身体を上手く動かせない女の髪を持ち上げ、リビングまで引きずる。
先程、用意した刃物を選ぶ。
「この前、母さん開いた時に試したい事、出来たんだ」
そう言って、柳刃包丁を手にする。
言葉が耳に入らない程、目の前の光景に唖然とする女。
そこら中に血液が飛び散ったリビング。
女の目から涙が溢れていた。
「近くで見ようか?」
耳元で囁かれたその言葉に震える。
老婆の隣の布団まで運んで放り投げる。
「…っ…っ」
言葉にならない嗚咽を漏らし続ける。
「…ぉねがぃ…澪には酷い事しないでぇっ!!」
胸元を殴られるが力が入りきっていない。
「大丈夫。 僕がいっっぱい可愛がってあげるよ」
「いやぁぁ!! れぃ! …っに…逃げ…てぇ!!!!!」
やっと試したかったことが出来る。
嬉しいな。
股からお腹へと長い長い刃物を進める。
「ぃやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!!」
刃を進める手を止め、身震いする。
「ああ! 良い声だよ。 もっと!」
ぐちゃっ
「ぁあああああぁぁ…!!!」
「もっと! もっと!!」
ぐちゃっぐちゃっ
「後で開いて何処を通ったか、ちゃんと確認してあげるからね」
ダンッ
リビングの入り口で音がした。
「!!?」
男が目の前の惨状に驚き、慄いて壁にぶつかっていた。
「見て見て! やっと包丁の柄まで全部入ったんだ。 でも、もう壊れちゃった」
「そ…そんな!!? こんな…っ…ひどっ…。 澪!!」
勢いよく男が走り始める。
後ろから追いかける。
階段で男の足を捕まえ、ポケットの中にあるハンマーで足を殴りつける。
「っぐ…ぁ!!! れ」
ゴンッ
動けなくなった所で頭を強打される。
ガンッ
ッグジャ
「もう!! 皆して澪ちゃんのとこに行こうとするなよ!」
ガンッゴンッドンッ
足を引き摺りリビングまで運ぶ。
「さぁ! 澪ちゃんが来るまで遊ぼう」




