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たびゆめ ~何度でも追い求め続けよう~  作者: 幸明沙夜
ABSOLUTELY RESCUE
38/60

19 おかえり

「ただいま」


 やっと帰宅した我が家。

 ドアを開けるとひんやりした冷気が漂ってくるだけで安堵する。

 玄関の靴も(なご)みんの物、それから遥絆(はな)の小さな靴が揃えられておらず、散乱したままである。

 いつもなら、怒るところであるが今日は、こんな光景でも微笑ましく思ってしまう。

 見慣れない整頓された男物の靴は、一斑の誰かの物だろう。


「お疲れさまでした」

 奥から、色黒でがたいが良くて彫りの深い男性が現れる。


「お疲れさま。 休日なのに申し訳なかったわね」

「いいえ。 援護も協力も間に合わなかったので護衛くらい任せて下さい!」

「あ、結城暁澄(ゆうき あきと)です。 俺のせいですみません! 昨夜から、ありがとうございました」


 昨日、和みんと遥絆を先に連れ帰ってくれた一斑の人だ。

 桜雅(おうが)さんは念の為、病院に行ったそうだ。

 寿さんの他人への治癒は、自分への治癒と違って手助け要素しかないそうだ。

 細胞活性は自分自身に特化した能力で治癒能力とは別物らしい。

 まぁ確かに変幻自在に身体機能を使用している。


 寿さんが特室で能力を磨いていることを最近知った。

 俺も今度、使わせて貰おう。

 いや、手合わせして頂こう!

 俺も猿なんかに負けないくらい臨機応変に能力を自在に使いたいっ!!


「零係一斑の鈴木ジョヴァンニです。 朝早くに起きてお二人の帰りを待たれていたのですが早めの昼食後から、お昼寝されていますよ」

 そういって右手の人差し指を口元に当てている。


 静かにお辞儀をしている仕草や言葉遣いは日本人そのものだ。

「では、私はこれで失礼します。 私で良ければ、またいつでも護衛します」

「本当にありがとうございました」

「本当!? 鈴木さんの護衛が一番安心だわ! 機会があればお願いするわね」

 静かにと仕草で言われたのも忘れて、喜ぶ寿さん。


 どうやら、ジャンの能力は護衛向きのようだ。

 インパクト強めの名前から、勝手にあだ名をつけてしまう。

 休日出勤だし、引き留めるのも悪いので帰る姿を見送った。

 何の能力か今度、聞いておこう。


 二人が昼寝をしていると聞いてから、俺も昼寝がしたくなっていた。


暁澄(あきと)君、遥絆ちゃん休んでるし、ゆっくり布団で眠ってきなさい」

「ずっと運転してたのに寿さんこそ休んで下さい!」

 寿さんの優しさに甘えたいが流石に申し訳ない。

 二人で休むと護衛がいなくなってしまう事を懸念しているのだろう。


 今回の誘拐事件で遥絆の送り迎えは能力者限定にしようという事になったのだ。

 池田は、これ以上遥絆に接触することは無いだろうが…。

 池田に賛同する者が増え、俺の邪魔をする輩も増えないとも限らない。

 遥絆を二度と危険な目には合わせない!


 それには、寝静まった後とかのセキュリティも強化する必要があるのか。



 

 寝ている時に侵入者が分かる。

 危険人物が誰かなんて分からないな。

 殺意や悪意なんて見えないし…。


 変な行動は分かるか。


 挙動不審者や初めて家に来る人がいたら、すぐに知らせてくれるセンサー的な物。

 あ! 寝てる時でも起きる程の大音量アラームで遥絆以外に聞こえる物が良いな。

 そうなると起きている時の大音量は迷惑だな…。

 起きている時は、短いお知らせ音くらいでいいな。

 あとは、どこにその人物がいるのかをアナウンスして貰えればいいか。


 !?


 そうだった!

 見えない奴がいてもわかるように出来るかな。

 熱センサー、重力センサー…。

 あ! 能力センサーって作れるかな。



 いつも現実感が邪魔をしてしまうが、そもそも能力なんて現実離れしているんだ。

 俺が能力センサーを作ると創造すれば、出来るのが能力って事だ!


 なんか、やっと慣れてきたかも?

 そう思いながら、両手をかざす。


 両手の先から光り輝き、光が円を形作る。

 手を上にかざすと、光が家の天井から敷地内全てに広がってから消えていく。




「何をしたの!?」

「俺と寿さんも休めるようにセキュリティ強化しました」

 目を見開き驚く寿さん。


 (とき)バアの占いの館から出てきて、寿さんは少し考え事をしていた様子だった。

「休まないと気付けることに気付けないですよ」

 寿さんは笑顔で答える。

「ありがとう」



「あ、起きたら試したい事があるの。 覚えておいて!」

「はい」

 何だろう…?

 今じゃダメですか?と尋ねたら、事と次第では休めなくなるからと言われてしまった。






 二人で二階の自室に入る前に和みんと遥絆の寝顔を確認する。

 気持ちよさそうにしているのを見て、欠伸がでた。

 晩御飯の準備には起きてこよう。


 携帯を触りながら廊下を歩いていた寿さんが急に声を掛けてくる。

「暁澄君! 晩御飯は私が作るから、18時までゆっくりしていて良いわよ」

「良いんですか!? ありがとうございます」

 能力の使い過ぎで、流石に疲労困憊中だ。

 素直に甘えてしまおう。




ぼふっ


 自室の布団に身体を預けて埋もれる。

 あ~っ! 布団の上は最高だ。

 そう思ってから、何も考える暇なく、一瞬で寝入ってしまう。






 目が覚めると、真っ暗だった。

 寝すぎた。


 7月の夏だ。

 外が真っ暗って、20時前後にはなっている筈だ。

 あれから、遥絆とゆっくり話せていないから、早く遥絆に会って、話を聞いてあげたい。


 慌てて自室を出るが廊下も真っ暗だ。


 ?


 セキュリティを強化したのに何も反応しなかったとか、あり得るのだろうか。

 範囲を間違えたりする事はあっても作用を間違える事はしていない。


 大丈夫だ。


 あまりにも静かすぎて暗すぎて、不安になってくる。

 皆、無事でいるのだろうか…。


 リビングも真っ暗だ。


キィ…



ぱちっ



パァンッ


パンパンッ


音に驚いた俺は、自己防衛反応でテディベアの中にいた。

もちろん、俺の創造ぬいぐるみなので要塞以上に最強に頑丈だ。


すると、予想外の声が聞こえてきた。



「あーにぃ」

「「あっきー」」

「暁澄」

「暁澄君」



「せーのですっ!」




「「「「「お誕生日おめでとう!!」」」」」




 ぬいぐるみを解除すると真っ白な物が次は降ってきた。

 能力解除後でなければ、簡単に避けられたはずだ。


バンッ


 クリームが大量に顔面を直撃した。。


 これは、あれだ。

 よくテレビのバラエティで見る顔面パイだ。

 流石に紙皿にクリームだけを載せただけのようだが、こんな事をされる日が来ようとは思ってもいなかった。

 零係の皆が笑っていた。


 遥絆に襷を掛けられる。

 襷には、本日の主役と書かれていた。


「あっきー。 こちらの携帯に向かって一言お願いします♪」

 動画を取っていたのか!?


 くっそー!!


 絶対に想像したくない事を想像しながら、このリビングへ俺は入ってきたんだ。

 昨日の今日で警戒心が少しくらい強くなっても良いじゃないか!?


 今日が7月28日である事も忘れてしまうくらいに自分の事なんて考えていなかった。

 皆が準備していたとか想像すらしていなかったんだ。

 予想外の出来事で悔しい。


 寿さん。

 和みん。

 桜雅さん。

 サンタ。


 いつものメンバーが目の前で笑って、祝ってくれている。

 遥絆が俺の顔面のクリームを笑いながら小さな手で取ってくれる。



「もぅ…最悪だぁ…」

 ぐしゃぐしゃに泣きながら、やっと一言を伝える。

 動画にこんな泣きじゃくる姿を晒すなんて…。

 冗談じゃない。


 事故から涙腺が崩壊してしまっているようだ。

「もう、一言おわりましたよ! 撮らないで下さい」


「せっかくの記念じゃないですか♪ 16歳は一年間だけですよ」

「そうそう! ご馳走も顔面用じゃないケーキもちゃんとあるぞ!」

「零係二班を辞めない限り、毎年あるから覚悟しときなさいね」

「毎年録画保存やで!」


「えぇ… 嫌だぁ~…」

 どんなに嫌だと言ってもこの涙が祝って貰えて嬉しい事を伝えてしまっているのだろう。



「こんどはね。 はながクリームばんするぅ~♪」

「うん。 お兄ちゃんとしようね」


「うん!」

 遥絆の満面の笑みを見て、遥絆が目の前にいる事に安堵する。


 俺は更に涙が止まらなくなる。

 遥絆を改めて抱きしめる。

 遥絆の存在を何度も確認した。




「おかえり…遥絆」




第2章 END


ここまで読んで下さって、ありがとうございます。

次話より第3章突入します。

ブックマークと評価して下さった方ありがとうございます。

大変励みになります。

今後も続きますので宜しくお願いします。

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