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たびゆめ ~何度でも追い求め続けよう~  作者: 幸明沙夜
ABSOLUTELY RESCUE
31/60

12  ないしょ

「お前の殺したい男は、まだいるのか?」

「あはは。 やっぱ良いですね。 池田さんの過去が益々気になります」


「教えるつもりはない」

「ちぇ。 ざぁんねん」

 遥絆(はな)の髪を器用に結い始める方隆(ほうりゅう)


「遥絆ちゃんみたいに僕も人見知りしない子だったんですよ。 危ないですよねぇ。 池田さんがこんな小さい子に何をするのかと思っっちゃいました」

「ふっ。 私の目的は別にある」


「それも気になりますよねぇ。 ま、子供に危害がなくて安心しました」

「で、零係が来るまで聞いてやろう。 お前の殺したい男の話」


「嬉しいなぁ。 こんな話出来るのは池田さんが初めてです。 僕ね。 子供の頃に公園で遊んでいたんです」






 ボールを元気に追いかける子供の方隆。

 男の人の足元でボールが止まる。

 その男の人がボールを持ち上げた。

「あ、おじさん。 久しぶり! ありがとう」

 無邪気に笑いかける子供の方隆。

 たまに公園で会う犬の散歩をしている人だ。


「どういたしまして。 方隆くん久しぶりだね。 今日は、おじさん困っていてね。 優しい君にお手伝いして貰いたい事があるんだ」

「困ってるなら良いよ。 僕に出来るかな?」

 顔見知りの男の人に頼まれ、素直に引き受ける子供の方隆。


「トイレ? 僕おしっこでないよ?」

「じゃぁ、したくなったら一緒にしよう」

 公園のトイレの個室に二人で入る。

 子供と大人、同性同士、傍から見ても親子だと思われて不自然に思われることはない。


「写真撮るの? あははは。 変な写真」

「今日の遊びは、二人だけの秘密だよ」

 無邪気に何をされているか判断出来ていない子供の方隆。


「秘密の遊び!? わかった」

「おじさんとじゃないと出来ない遊びだからね」

 口止めをされたことに気付かず、無邪気に信じる。

 そんな警戒心のない子供への行為も要求も日に日に少しずつエスカレートしていく。




 そんな子供だった方隆も少しずつ成長とともに可笑しいことを感じ始める。

 気付いた時には、逆に恥ずかしくて誰にも言えず、公園へも行かなくなっていった。


「えー! 方隆来ないのかよ? お前いないとサッカーつまんないじゃん!」

「今日は行かない! あの公園には行きたくないんだって!」

「頼むよ! 方隆」

 今日のサッカーの試合が秘密の遊びをしていた公園だった。

 あの男とも二度と会いたくなかったし、思い出したくもなかった。

 でも友達から頼りにされてるのが嬉しくて断りきれなかった。


「じゃぁ、絶対に一人にしないでくれよ! 僕あの公園本当に嫌いなんだからな!」

「何だよ!? 方隆、公園が怖いのかよ」

「任せとけよ! 一人にしないぜ! 方隆ちゃん」


「馬鹿にするなよ!」

「何だって、俺達が退治してやるよ」

「早く行こうぜ!」


 その日、あの公園に行ったことは、今でも間違いだったのかもしれないと思っている。



 公園に来てみれば、どうってことなかった。

 嫌なことは、思い出すけど普通のトイレだ。

 トイレにも皆と一緒について来て貰った。

 これなら、大丈夫そうだ。

「方隆! 早くこいよ」

「うん!!」

 一人、最後にトイレで手を洗っていた。


 後ろの個室のドアが開いた音がした。

 後ろから、肩を掴まれる。

「方隆くん。 おじさん寂しかったなぁ。 もう会えないのかと思ったよ」

 怖くて、気持ち悪くて、嫌悪の眼差しで振り返る。


 方隆の眼は、金色に光っていた。

「い…やだ。 おじさんなんか、いなくなっちゃえっ!!」


「はい」

 そう言われた男は、返事をして無言で行動し始める。


 犬のリードの紐に輪っかを作り始めた。

 トイレの入り口の小屋梁にその紐を括り始める。

 僕は、何が起こっているのか分からず、呆然と立ち尽くす。

 おじさんは、括り付けた紐の輪っかに首を通し、足を曲げて体重を掛け始めた。

 僕は、苦しんでいるおじさんの姿を只々、見ていた。

 苦しんでいる人を見ても何とも思わなかった。

 生きているこの人を気持ち悪いと思ったのに死んで色んな物を垂れ流している人を見ても気持ち悪いとは思わなかった。



 それがおじさんだったせいなのか、他の人だったら助けたのか、他の人だったら気持ち悪いと思えたのか、他の人だったら悲しくなったのか、未だに自分でも分からない。






「これが僕の初めて使った能力ですよ。 なので、もういません」

「躊躇なく殺せるわけだな」


「やっぱ、そう思います? あの時に少しでも感情があれば、今の僕にはなってないですよね。 はい。 遥絆ちゃんの髪完成♪ 池田さんは、さっきから何見てるんですか?」

「監視カメラ映像」

 池田が机から腰をあげ、立ち上がる。




「零係が来る」



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