10 あそこ
遥絆とのテレパスが終わった。
無事に声が聞けて安堵してしまった。
掌で涙を拭う。
「遥絆ちゃん手掛かりになるような事は、言ってなかったかしら?」
「古くて、汚い所だそうです」
「そう…。 二人がいなくなってから、約三時間。 制限時間も約三時間。 辿り着ける距離ではあるだろうから遠くはないはずだけれど…」
「到着後の時間も考えると向かわないと厳しいですよね…」
全然、情報が足りない。
二人の所へ急いで行きたい!
変えて、作って、消して…。
ある物ではない。
消す物でもない。
現在地を示す物を作る。
GPSみたいな物。
携帯は、あいつに覗かれるから使えない。
機械もさっきみたいに操作される可能性がある。
地図か…。
あとは、人の現在地。
名前…。
地図帳に名前が出てればいいんだけど…。
地図帳に人の名前があった所で探しきれない!
限られた人数でいいんだ。
人の名前が載っていないけど、位置を指し示す地図帳。
名前は、書けばいい。
人生ゲームみたいなピンがあれば十分だ。
名前を記載して地図帳に乗せれば、勝手に位置を教えてくれる魔法のような地図帳!!
ポンツ
「出来た!!」
「なんや。 地図帳やないか」
サンタが地図帳を馬鹿にする。
「寿さん。 ペンと紙ありますか?」
「もちろ…。 ジャケット置いてきたわ」
おとり捜査もしていたから、寿さんは、スカートのままだ。
「お前は、気が立っていたからな。 忘れ物くらいするだろう。 私の物で良ければ使ってくれ」
東条警部が聞き込みから、戻ってきた。
「ありがとうございます」
「分かっているなら、声掛けて欲しいわ。 それで? 目撃者いたの?」
「ああ。 二人組の男が若い女の人と少女を連れていたのを犬の散歩中に見ていた。 どうしたのかと尋ねたら、熱中症の様だから病院に運びますと、言われ納得したそうだ」
「納得してまうんかい!」
「それで二人の男の特徴を聞いた。 太っている男は、眼鏡を掛けていて格好が若く年齢不詳。 若い男の方は、爽やかな好青年。 彼に言われたら不信感が全て消えたそうだ」
「言霊ね」
「何やそれ?」
「言われたことが本当の事になるのよ。 それが能力かは、まだ分からないけれど、若い男に声を掛けられたら…。 気を付けようがないわね」
「念のために後で対策を立てておこう」
「準備できました」
手書きで天祥和心と結城遥絆と書いた紙を別々に二つのピンへ貼り付ける。
関東周辺の地図を開く。
上からそのピンを落とす。
ぽとっ
磁石の様に同じ位置にそのピンが立つ。
地図帳をパラパラ捲る。
パラパラ~
久しぶりだ。
この地道に大きくしていく感じ。
電子機器が使えないなんて…。
「はぁ…」
ぽとっ
また同じ位置に止まる二つのピン。
どうやら、正確に位置を示してくれているようだ。
良かった。
自分の能力にまだ慣れていないせいか、緊張しながら使用してしまう。
パラパラ~
「この時間が惜しいな」
「この先に桜雅が待機しているから、こっちに呼んでくるわ」
「ほんまアナログは、不便やな!」
「ちょっと! アナログ感が妙に凄さを無くしているけど、魔法の地図帳よ!」
寿さんがフォローしてくれる。
ぽとっ
パラパラ~
「魔法感弱いわ~」
ぽとっ
パラパラ~
この白いお犬は、何を求めているんだ…。
「俺の創造の限界ですね」
「限界なもんか。 我々では、すぐに助けに迎えなかった。 暁澄のお手柄だ。 よく頑張ったな」
東条警部がいてくれて良かったです。
無い創造、絞った甲斐がありました。
ぽとっ
パラパラ~
ぽとっ
やっと見つけた!!
プップー
車から桜雅さんが手を振っている。
皆で車に乗り込む。
「桜雅さん、ここに向かってください」
二つのピンが磁石の様にくっついて離れない地図帳を渡す。
「げっ!? これ、あそこじゃん!」
「?」
〟あーにぃ!〝
遥絆の声が頭に響く。
〟遥絆!! 大丈夫か?〝
〟うん! はな、おなかすいた〝
〟後でいっぱい食べよう〝
〟はな、ちゅるちゅるね!〝
〟いいよ。 さっきと変わった事ある?〝
〟なーねぇがどっかいったの。 ここあそこって、どこ?〝
〟和みんも言ってたの? 今そこに向かってるから、大丈夫だよ〝
〟それとね。 はなね。 しらないおんなの人とあたまのなかでね。 おはなししちゃったの。 ごめんなさい〝
〟知らない人とは、遥絆お話できないだろう?〝
〟はなからは、みえなくてもおんなの人からは、みえるんだってぇ。 どこにいるんだろう?〝
一瞬、悪寒がした…。
〟そっか。 あまり長話しないようにな…〝
〟わかった。 それとトミーがすうじ、おしえてあげなさいって〝
〟んっとね。 ぜろ、に、てんてん。 いち、はち、てんてん。 よん。、ご、よん、さん、に、あーはやいよぅ〝
〟02:18:45…最後はカウントダウン…。 遥絆、その数字の先に機械とかコードが繋がってる?〝
〟うん。 ながーい、ひもあるよ〝
〟じゃぁ、さっきの機械の数字を見ててくれる?〝
今ある物を変える。
遥絆の目の前の機械作動せずに止まれ!
〟すうじ、うごかなくなっちゃった〝
〟本当!?〝
〟あ! トミーがさわったら、またもどったよ〝
ダンッ
思わず、車のドアに八つ当たりしてしまった。
トミー。
池田冨美雄で間違いないだろう。
〟その機械には、絶対に触っちゃ駄目だよ〝
〟うん。 トミーがざんねんだったねって。 まだいーっぱいあるんだってぇ〝
〟…分かったよ。 急いで行くからね〝
「遥絆ちゃんと話していたの?」
「すみません。 わざわざ、遥絆に爆弾のカウントダウンを教えるように言ってきて…」
「大丈夫よ。 十分に間に合うわ。 着いたら、暁澄君は、真っ直ぐ遥絆ちゃんを探しに行きなさい」
「池田と能力者二人は、私達に任せておけ」
「あ! 和みんと遥絆は別々の部屋にされているみたいです」
「じゃぁ、桜雅は、天祥ちゃんの救助に回って頂戴。 最悪、脱出間に合わなくても大丈夫でしょ?」
「へい。 もちですよ」
桜雅さんは、運転しながら普通の事の様に返事を返している。
能力を知らない人が聞いたら、驚く会話内容だ。
「サンタは、池田の匂いだけを確実に捉えて!」
「任しときっ! 絶対に逃がさへんで!!」
寿さんが的確に指示していく。
「念のため、危険能力犯合同逮捕で現地に一斑の招集も掛けておこう」
「ありがとう。 助かるわ」
一斑の人とあまり関わりがないので名前や能力も把握出来ていない。
後で教えて頂こう。
「あ、桜雅さん。 和みんもココあそこって言ってたみたいなんですけど、どこなんですか?」
「暁澄もこの前、心霊特番、見てただろ?」
「はぁ…。 え!? もしかして、和みんが寒いとか言ってたのって…」
「あ、やっぱし? 今向かってんの、その廃墟ビル」
「遥絆…。 見えない女の人とテレパスしてるみたいなんですよねぇ…」
「あぁ…。 天祥も言ってたなぁ。 女の人いるって…」
「嘘!? それって…」
寿さんが言いかけて、口を閉ざす。
車内全員、犬までも背筋に悪寒が走った。




