9 おおかみ
起きたら、知らないお部屋。
なーねぇが抱っこしてくれてた。
「なーねぇ。 おはよう」
なーねぇがギュウッて抱きしめてくれる。
ギュウッて、温かくて、嬉しくって、好き。
遥絆もギュウッてするの。
なーねぇも嬉しいかなぁ。
なーねぇの肩越しにお兄ちゃんが二人。
「あ! ハンカチおとした人、見つかった?」
さっき落とし物を拾ってたお兄ちゃんがいた。
優しい笑顔でお話してくれる。
「こっちの大きいお兄ちゃんの物だったよ」
「そっか。 よかったね」
なーねぇが膝の間に座らせてくれた。
後ろから遥絆をギュウッてするの。
動けない。
なーねぇを見るとネコさんみたいなの。
怒ってるのかな。
笑顔のお兄ちゃんを見ている。
「なーねぇは、お兄ちゃんとケンカ中なの?」
「遥絆ちゃん。 知らないお兄ちゃんと仲良くなってはいけませんよ!」
「遥絆ちゃん。 僕は方隆だよ。 お腹空いただろうから、ご飯食べようって言ってるだけなんだよ」
「なーねぇ。 ほうにぃだって。 はな、ちゅるちゅる食べたーい」
「遥絆ちゃん…」
なーねぇが後ろで元気をなくしている。
「なーねぇ。 大丈夫? はなとごはん食べよう?」
「あ! あっきーに聞きましょう! 和心は、ご飯より、ここから早く出たいです。 鳥肌が止まりません…」
なーねぇは、お腹空かないのかな?
あーにぃがいない。
「あーにぃは、どこ?」
無邪気に方隆と名乗る優しい笑顔の男に聞く遥絆。
「ここに向かってるから大丈夫だよ」
「あーにぃ来るって! オウチにかえっていい?」
「あーにぃが来たら帰ろうね」
「うん!」
「遥絆ちゃん…」
後ろでまたなーねぇが元気をなくす。
いつもとっても元気なのに…。
どうしたのかな?
「なーねぇ?」
「あ。 あっきーは、今どこにいますか?」
ここに来るのに待てないのかな?
聞いてみよう。
〟あーにぃ!〝
〟遥絆!! 良かった…〝
すぐにあーにぃの声が頭の中に返ってくる。
あーにぃ泣いてるのかな?
〟遥絆。 よく聞いて! 知らない人と仲良くなっちゃ駄目だよ!〝
〟どうして? ほうにぃって、あたらしいおともだちできたよ〝
〟そこにいる人達は、お友達ではなくて、オオカミさんだから言う事を聞いちゃ駄目だよ!!〝
オオカミさんは、悪い人。
騙されちゃうと食べられちゃう。
赤ずきんちゃんみたいにね。
最後まで騙されないようにね。
気を付けないといけないの。
〟ほうにぃ、だます人なの?〝
〟そうだよ。 そこに和みんもいるの?〝
〟うん! なーねぇげんきないの。 なんかさむいみたい? かえりたいっていってるよ〝
〟遥絆が今いるところは、どこか分かるかな?〝
〟わかんない。 きたなくて、ふるいところ〝
〟そっか…。 絶対に迎えに行くから良い子に待ってるんだよ〝
〟うん! 待ってるね〝
遥絆が頭の中でお話するの。
普通じゃないみたい。
テレパスだって教えてくれた。
よく分からない。
いつでも誰かとお話出来るの。
とっても嬉しい。
決まった人としか、お話しちゃいけないけどね。
「あーにぃ。 おむかえくるって…。 あ、どこにいるかきいてない」
「良かったですぅ。 お話出来ただけで十分です。 他に何か言ってましたか?」
なーねぇが少し笑ってくれる。
「ほうにぃたちは、オオカミさんだって、いってたよ! ほんとう?」
ほうにぃと大きいお兄ちゃんを見る。
「あはははははは。 オオカミさんか! さすがお兄ちゃん! 上手いね」
ガチャ
ドアが開いて、知らないおじさんが入って来る。
「なんだ。 まだ一緒にいさせていたのか? テレパスなんだから、部屋は別にしろ」
なーねぇの抱きしめる手に力が入ってる。
遥絆、苦しいよ。
「和心は、移動しませんよ!」
「大丈夫だよ。 和心さんの手足が動かなくなるからね」
だらんっ。
後ろから、抱きしめていたなーねぇの手が離れる。
「やっぱり、私達を眠らせたのもお前ですね!?」
「心外だな。 君達が自然に眠くなっただけだよ」
やっぱり、まだケンカ中。
ネコさんみたいに睨んでる。
ピリピリする。
「優連れて行け。 2階の角部屋でいい。 ついでに下が賑やかになってくる時間だ。追い払っておけ」
「うん」
おじさんと大きいお兄ちゃんがお話してる。
夜なのにどうして静かにならないのかな?
「離して下さい! 和心に触らないで下さい!! 何ですかコレ!? 口しか動きません!!」
「お話くらい良いでしょう? 池田さん?」
「ああ。 構わない」
大きいお兄ちゃんがなーねぇを抱っこしてる。
「なーねぇと一緒にいちゃダメ?」
「うん」
大きいお兄ちゃんが頭を縦に振る。
遥絆、寂しい。
〟はる? まだねてるの?〝
〟はな、さみしいよ…。〝
「あ、忘れてた。 ぷぅさん待って」
ほうにぃが大きいお兄ちゃんを呼び止める。
「和心さん。 顔を見て安心出来る人に会えば、手足動くようになるよ」
「何なんですか!? それ~っ!!」
なーねぇは、声だけなのに元気だ。
ガチャ
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドアが開いて廊下を見たなーねぇ。
お口がもっと元気になった。
「通りで寒いと思ったんです! ココあそこじゃないですか!? 絶対、女の人に会うじゃないですか! 一人にしないで下さい!! 嫌ですぅぅぅぅぅぅぅー…」
なーねぇの姿は、見えないのに声だけがずっと聞こえる。
ここあそこって、どこだろう?
あーにぃなら、分かるかな?
「やっと静かになったね。 遥絆ちゃん」
遥絆の隣にほうにぃが座る。
「やぁ。 遥絆ちゃんはじめまして」
「…はじめまして」
おじさんがお話してくれる。
「おじさんのお名前は?」
「偉いね。 泣かないんだ」
おじさんが機械を触りながらお話をする。
皆、お話したらね。
お話で返してくれるの。
泣いててもお話返ってこないの。
遥絆は、お話の方が好き。
「怖い人に会った事がないのかな?」
おじさんは、まだ機械を触ってる。
「遥絆ちゃん。 怖い人って言うのは、距離感が可笑しいんだ。 お互いが手を伸ばして届く距離に近寄って来る顔見知りや知らない人には気を付けるんだよ」
ほうにぃが教えてくれる。
ニコニコのほうにぃではない。
とっても真剣に話してくれた。
「じゃぁ、ほうにぃがとなりにいるのは、おかしいの?」
「それは、遥絆ちゃんが感じる事だよ。 怖い、嫌だって思ったら、絶対に近寄らないようにするんだよ」
笑顔に戻るほうにぃ。
「わかった。 ありがとう」
オオカミさんだけど、ほうにぃは怖くない。
「私は、冨美雄だよ。 暁澄お兄ちゃんにこの数字を教えてあげなさい」
「うん! とみー!」
あーにぃ。
オオカミさん増えちゃったよ。
遥絆、気をつけられるかな?




