8 ゆうかい
「…誰ですか?」
「これは失礼。 はじめまして、結城暁澄。 私は、池田冨美雄だ」
普通に挨拶を返されてしまう…。
なんか…。
調子を狂わされる。
「どうも。 …二人は無事ですか?」
「!?」
GPSは、瞬時に位置情報を出している筈であるが、和みんの携帯は、俺の家を示している。
ヴウーッ ガルルルルルルル…
サンタが唸り始める。
東条警部と寿さんが顔を見合わせ、寿さんが瞬時に窓から外へと飛び出す。
家の中は、隈なく探している。
寿さんの身体能力でベランダや屋根の上まで上がっているのだろう。
「君次第さ。 私は君の力を知りたい。 そのために余興を用意した」
「…悪趣味ですね」
「何とでも言ってくれて構わない」
「そんな事しなくても…」
「私はね。 君の全力が知りたい。 あわよくば、死んでくれてもいい」
「そんな…。 俺、何かしましたか?」
そこまで恨まれるようなことをした覚えはない。
何でそこまで言われなくてはならないんだ!?
「いいや」
「じゃぁ、どうしてっ!?」
「では、こうしよう。 無事に生きて私の所まで辿り着けたら、答えを教えてあげよう」
「何をすれば良いんですか?」
寿さんが窓から戻って来る。
首を横に振り、誰もいなかったことを伝えている。
「二人は、爆弾に囲まれた場所にいる」
「「!?」」
ワンワンワンワンワンッ!!
サンタも怒りを露わに吠え猛る。
酷いっ!!
俺のせいで…。
二人を巻き込んでしまった…。
「タイムリミットは、午前0時」
池田は、低い声で淡々と告げる。
時計は、もうすぐ21時になろうとしていた。
くそっ!!
バンッ
両手で自分の頬を叩く。
今は、しっかりしないとっ!
二人を助けないとっ!!
「それまで二人に危害はないですよね?」
「どうかな。 私だけではないからね」
いちいち腹が立つ。
この人にとって、誰がどうなろうと、どうでもいい事なんだと伝わる。
「貴方も能力者ですよね?」
「まだ分からないか? 機械が得意だ。 そこにいる二人なら、私を画面越しに見ている」
東条警部と寿さんが軽く目配せをする。
「貴方、拘置所に差し入れをした弁護士ね」
「ご名答」
「名前を吐くなんて、どういうつもりだ?」
「君たちは、私を捕まえられない。 それだけだ」
「どうして? 何か辛いことがあって能力が発現したんですよね? どうして…。 こんなことをするんですか? 二人は、どこにいるんですか?」
「君は若いな…。 頑張りたまえ」
PU…PU…PU…PU…
「なんっっなの!? あの男の言い方! 腸が煮えくり返りそうなんだけれどっ!!」
「寿…もう煮えているだろう。 落ち着きなさい」
寿さんがヒステリックな怒りを鎮めようとケーキの箱を開け出す。
豪快に手掴みで糖分補給される。
「このGPS失敗だったみたいで、すみません」
「暁澄君の失敗作なんかでは、ないわよ」
「?」
でも位置情報が合っていなかった。
「そうやで! あっきー! 能力臭しよったんやでっ!」
「奴がまだ分からないか、と言っていた。 機械を自由にコントロール出来るのだろう。 防犯カメラの映像も口元だけを器用に残していたからな」
「もしかしたら、携帯のカメラ越しにこちらを覗ける程かもしれないわ」
「暁澄の側に二人いることが分かっていたからな。 とりあえず、携帯の電源を切っておこう」
「桜雅がパンダでこっちに向かっているようだから、幼稚園へ、ここにある車回して、待つように伝えておくわね」
「やっと、わいの出番やな!」
パトカーで桜雅さんも助けに来てくれている。
寿さんも東条警部もサンタまで、プロであることを実感させられ、頼もしく感じる。
「俺も何か出来ないか、考えます」
俺の能力で出来ること。
空想・創造実現能力で出来ること。
変えて、作って、消して…。
何の情報もない以上、二人の居場所が分かるような何かを作る。
考えながら、家を出る。
保育園までの道のりは、いつも決まった道だ。
サンタの能力であれば、何かがあった場所を特定しやすいだろう。
公園の傍の並木道を通り始めた時。
「能力臭するで…」
サンタが必死に匂いを嗅ぎ始める。
「四種類や。 能力未覚醒の匂い。 和みんやな。 それと遥絆の匂い。 あと二種類…何や、この匂い。 わい…どっかで嗅いだことあるわ…」
そう言いながら、思い出そうと、匂いを嗅ぎ回る。
東条警部と寿さんは、何か手掛かりになる物がないか探したり、目撃者がいないか、周辺の人に聞き込みをし始めた。
色んな人が通っているのに嗅ぎ分けられる能力と言うのは、どういう事かと想像が出来なくて、サンタに聞いたことがある。
人間も料理の匂い嗅ぎ分けて、何の料理か当てれるやないか、と言われた。
一週間程度であれば、時間が経っても能力臭は、強い匂いで消えないそうだ。
能力を長時間使いながら、歩く人が沢山いても嗅ぎ分けられるのは、能力特有だと言われ、納得した。
使っている本人にしか、分からない感覚があるからだ。
「思い出したでっ!!」
サンタが尻尾を振りまくってジャンプする。
〟あーにぃ!!〝
!?
「遥絆!!」
思わず、大声で叫んでしまった。
遥絆は、複数人と同時会話が出来ない。
一人とだけテレパスが出来る。
〟良かった! 遥絆!!〝
生きている!!
泣き崩れた俺の隣に寿さんが駆け寄って来る。
サンタは、ジャンプしながら、寿さんへ報告する。
「この匂いな。 この前、東条と行った拘置所で嗅いだ能力臭と一緒やでっ!」
「そんな!?」
寿さんが慌てだす。
「暁澄君。 遥絆ちゃんと天祥ちゃんに伝えて欲しいの。 そこにいる人間を信用しないでっ! どんなに優しく感じても絶対に信用しては駄目だと伝えて!!」
「はい」
「二人には、伝えないで欲しいのだけれど…。 どんな能力か分からないけれど、瞬時に人を殺せる能力者がそこにいるわ」
「!!?」
〟遥絆―…!!〝




